フランツ・ペーター・シューベルト 作曲 D.839 op52 第6曲

≪聖母讃歌≫ (Hymne an die Jungfrau)

アヴェ・マリア  (エレンの歌/第3)


  Franz Peter Schubert   Ellens Gesang III

Hymne an die Jungfrau
聖母讃歌 
アヴェ マリア  ユングフラウ ミルト
Ave Maria! Jungfrau mild,
アヴェ マリア わが君
エルヘーレ アイネル ユングフラウ フレーエン
erhöre einer Jungfrau Flehen,
野の果てに嘆こう
アウス ディーゼム フェルゼン シュタール ウント ヴィルト
aus diesem Felsen starr und wild
乙女が祈りを
ゾル マイン ゲベート ツー ディール ヒンヴェーエン
soll mein Gebet zu dir hinwehen.
憐れと聞かせたまえ
ヴィル シェラーフェン ズィッヒェル ビス ツム モルゲン
Wir schlafen sicher bis zum Morgen,
御許(みもと)に安らけく
オブ  メンシェン  ノッホ ゾー グラウザム ズィント
ob Menschen noch so grausam sind.
憩わしめたまえ
オー ユングフラウ ズィー デル ユングフラウ ゾルゲン
O Jungfrau, sieh der Jungfrau Sorgen,
悩めるこの心
オー ムッテル ヘール アイン ビッテント キント
o Mutter, hör ein bittend Kind!
君にねぎまつる
アヴェ マリア
Ave Maria!
アヴェ マリア
   
Ave Maria! unbefleckt!
Wenn wir auf diesen Fels hinsinken
zum Schlaf, und uns dein Schutz bedeckt,
wird weich der harte Fels uns dünken.
Du lächelst, Rosendüfte wehen
in dieser dumpfen Felsenkluft,
O Mutter, höre Kindes Flehen,
o Jungfrau, eine Jungfrau ruft!
Ave Maria!
アヴェ マリア わが君
巌(いわお)の臥所(ふしど)にも
君が恵みのもと
やすけき夢はあらん
君笑ませたまえば
花の香は絶えじ
たよるべなき乙女
君にねぎまつる
アヴェ マリア
   
Ave Maria! Reine Magd!
Der Erde und der Luft Dämonen,
von deines Auges Huld verjagt,
sie können hier nicht bei uns wohnen.
Wir wolln uns still dem Schicksal beugen,
da uns dein heil'ger Trost anweht;
der Jungfrau wolle hold dich neigen,
dem Kind, das für den Vater fleht!
Ave Maria!
アヴェ マリア わが君
まがつ日のおそれも
君が御光(みひかり)に
雲と散りて消えん
ひしがれし心を
君がいやしたまえ
限りなきしんもて
君にねぎまつる
アヴェ マリア

独訳 : アダム・シュトルク(Adam Storck

訳詞 : 堀内 敬三


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 Ellen's Song (原詩)

Ave Maria! Maiden mild!
Oh listen to a maiden's prayer;
For thou canst hear tho' from the wild,
And Thou canst save amid despair.
Safe may we sleep beneath thy care
Tho' banish'd outcast and reviled,
Oh, Maiden hear a maidens prayer.
Oh Mother, hear a suppliant child!
Ave Maria!

 聖母讃歌 (直訳)

やさしき乙女マリアよ 祝されんことを
聞いてください 乙女の祈(の)りを
この堅くて険しい岩から
わたしの祈りをあなたの御許へと漂わせましょう
たとえ人々がどんなに残酷でも
わたしたちは朝まで安全にねむります
ああ 聖女よ 乙女の憂いに目を向けてください
ああ 聖母よ 聞いてください ひとりの子の願事(ねぎ)を
アヴェ・マリア

Ave Maria! Undefiled!
The flinty couch we now must share,
Shall seem with down of eider piled
If Thy, if Thy protection hover there.
The murky cavern's heavy air
Shall breath of Balm if thou hast smiled;
Then, Maiden hear a maiden's prayer.
Oh Mother, hear a suppliant child!
Ave Maria!
汚れなきマリアよ 祝されんことを
わたしたちが眠るために この岩に身を横たえ
そしてあなたの加護がわたしたちを包むと
堅い岩もわたしたちにはやわらかく思われるでしょう
あなたが微笑むと 暗く湿った洞穴に
薔薇の香りが漂います
ああ 聖母よ 聞いてください こどもの願事(ねぎ)を
ああ 聖女よ ひとりの乙女が呼びかけています
アヴェ・マリア
Ave Maria! Stainless-styled!
Foul demons of the earth and air,
From this their wonted haunt exiled,
Shall flee, shall flee before thy presence fair.
We bow us to our lot of care
Beneath Thy guidance reconciled,
Hear for a maid a maiden's prayer;
And for a father bear a child!
Ave Maria!
清き乙女マリアよ 祝されんことを
地と空に棲む悪魔たちは
あなたの眼に宿る恩寵によって退けられ
わたしたちのもとに住めなくなっています
あなたの聖なる慰めが私たちに漂ってきますから
わたしたちは静かに運命に屈しましょう
父のため その子の祈る
乙女の願事(ねぎ)にやさしく心を傾けてください
アヴェ・マリア


“アヴェ” とは、ラテン語で、おめでとう、栄えあれ、といった意味です。
19世紀初頭を代表するスコットランドの詩人、ウォルター・スコットの詩物語《湖上の美人》によって シューベルトが書いた7曲の歌のひとつで、1825年に作曲され、この歌曲を一括した 『OP.52』 の第6曲として、1826年に出版されました。
正式の題名は、《エレンの歌/第3》 で、《湖上の美人》の3日目、「一族の召集」 で、エレンが父の無事を願い、マリアに祈る歌です。
さざなみの伴奏形で飾られた一種天国的な清らかさと美しさをもつメロディは、キリスト教徒でなくとも、優しく慈愛に満ちた聖母のイメージを思い浮かばせます。
天上の旋律とたたえられるこの名曲は、数ある聖母賛歌のなかでも、グノーの作品とともに、広く人々に愛されている歌曲です。

湖上の美人<Lady of the lake>は、スコットランドの高地(ハイランド)を舞台とした長編物語詩です。
アーサー王伝説の「湖上の貴婦人」になぞらえた美しい娘エレンを中心とした6日間の出来事を描いています。


湖上の美人 あらすじ

物語の背景として・・・ 1513年、スコットランド王がイングランドとの戦いで戦死したとき、残された王子はまだ一歳の幼児でした。
夫を亡くした王妃マーガレットと結婚したアンガス伯と、彼を中心とするダグラス一派は幼王の身柄をスターリング城で確保し、 フォークランド宮殿に軟禁して、スコットランドの政権を独り占めすることに成功します。それがもとで不仲になった王妃は離婚しました。
やがて王子は16歳になると、宮殿から脱出して、無事たどり着いたスターリング城で親政をはじめ、 手始めに自分を拘束していたダグラス一門に連なる者をみな追放しました。

第一曲 『狩』
スコットランドの高地(ハイランド)。
鹿狩りをして奥深く入り込んだ男が乗っていた馬を失い、仲間ともはぐれ、美しい光景のなかをさまよい歩く。
やがて小島の浮かぶ湖のほとりにたどりついた男は、供が聞きつけるかもしれないと角笛を吹き鳴らす。
すると水の精のように美しい一人の少女、エレンが小舟をあやつり、小さい入り江にむかって滑り込んできた。
男が藪のなかに姿を隠すと、エレンは 「お父様」 とよび、さらに返事がないと、「マルカム様、貴方なの」 という。
狩人が姿をあらわすと、見知らぬ男に驚いて小舟を岸から離すが、男が道に行き暮れたことを説明すると安心し、 昨夜アラン=ベイン老人があなたのことを予言していたと告げ、今晩の宿を提供する。
館には立派な剣がかかっていたが、男が入るなり、その剣が鞘から抜けて落ちた。
男は 「スノードンの騎士、ジェイムズ・フィッツ=ジェイムズ」 と身分を明かし、エレンの身の上を知りたがるがはぐらかされてしまう。
夜、男は悪夢にうなされ、清らかな月の光を眺めようと外に出る。
平静さが戻った心のうちで、男は、エレンを見ても、剣を見ても、夢をみても追放されたあの一族を思い出すのはなぜだろうといぶかしむ。
やがて男は安らかな眠りにおちる。

第二曲 『小島』
朝、エレンに後ろ髪ひかれながら男は去っていく。それをからかうように見ていたエレンだが、男の姿が見えなくなると、
「おまえにはマルカムがいるのに。 マルカムなら、お前以外の誰かの足元をじっと見つめるはずがない」 と良心の呵責に苛まされる。
かたわらにいた吟遊詩人アラン=ベインにグレイアム一族の栄光の物語を歌って欲しいと言ったエレンは、 相思相愛の仲であるマルカム・グレイアムが一族の華と讃えられていたのに気づき、頬を紅く染める。
吟遊詩人は三度勇壮な調べを奏でようとしたが、三度とも音調は暗い呟きとなって消えてしまう。
過去何度か不幸が起こる前に竪琴がこんなふうになったと、アランはこれから災いが起こるのではとおそれる。
不安がるアランの気をそらすため、エレンが昨晩の見知らぬ客について聞くと、アランは彼を不吉だという。
彼が館に入るなり鞘から落ちた剣は、あやしい敵が忍び寄ると鞘から抜けて予告したというダグラス家に伝わる名剣。
そんなことを話していると、遠くから勇ましい音が聞こえ、松の紋章をつけたアルパイン一族の長、ロデリックの舟があらわれた。
エレンの叔母であり、ロデリックの母である館の女主人マーガレットは、ロデリックを迎えるようエレンに言うが、 遠くで父親の吹く角笛の音を聞きつけると、エレンは父を迎えに舟にのっていってしまった。
父ダグラスとともに、ダグラスの身を護り、ここまで案内した恋人マルカムもいて、一緒に館へ向かう。
館でロデリックは過去にあったように狩りにかこつけて、スコットランド国王がハイランドの領主たちを罠にかけるだろうといい、 これ以上迷惑をかけないためにエレンとともにここを出て行こうと言うダグラスに、エレンを妻にしたいと申し出る。
しかし娘の本心を知るダグラスはロデリックの申し出を断る。
エレンが原因でロデリックとマルカムは喧嘩になるが、ダグラスが仲裁し、マルカムはその夜のうちに館を出る。
湖の岸辺までついていったアランは明朝になれば、一族を集める 「火焔の十字架」 が回るから、安全な岸辺まで舟で送ろうと申し出るが、 ロデリックに小舟一艘さえ借りる気はないと、マルカムは泳いで渡り、無事に岸についたことを知ったアランは戻っていった。

第三曲 『一族の召集』
「火焔の十字架」 の事前に行う儀式を隠者ブライアンが執り行う。
アルパイン一族の墓の上に茂るイチイの若枝で作った十字架を炎にかざし、燃えている先端をいけにえのヤギの血に浸し消す。
そうして祈祷と呪いと血に染まった十字架を受け取ったマリーズは、集合場所と時間を告げながら、村々を駆け抜けていく。
葬式があっても、結婚式の途中でも、召集があれば参じなければならない。
一方、集合場所へ向かうロデリックはあるところで足取りが重くなった。
妖精の洞窟と恐れられるその場所に、ダグラスは自らの言葉通り、館を去り、エレンとともに身を寄せた。
エレンの声が聞こえないか、切なく聞き耳を立てるロデリックの耳に、アランの竪琴にあわせ歌声が聞こえてくる。
(アヴェ・マリアの歌)
歌がおわっても身じろぎしないロデリックに小姓は恐る恐る二度までも暮れかかる夕日をさした。
夕日が最後の光を投げかける頃、集合場所のランリックにはアルパイン一族の戦士たちが集い、ロデリックを認めると鬨の声をあげた。

第四曲 『予言』
殺したばかりの牛の皮をかぶり、滝の水がすぐ近くを流れ落ちる<勇士の盾>とよばれる絶壁で、ブライアンが予言の訪れを待っている。
やがてあらわれたロデリックにブライアンは先に敵の血を流した軍勢がこの戦いの勝者になると告げる。
ひとりの間者が今朝領内に入り込んだのを知っているロデリックは、それならそいつが夕方になっても帰れないようにしてやるという。
敵の様子をうかがってきたマリーズが敵の軍勢は明日の昼時には陣を整えてここに来るだろうと報告する。
一方、妖精の洞窟では洞窟のすぐそばの灰色の石に座って、エレンが悲嘆にくれていた。
エレンは父が帰ってこないのを、自分が争いの原因になっていると考えたダグラスがスコットランド王にもとに出頭し、 自らの命とひきかえにマルカムやロデリックたちの安全を得ようとしているからだといい、アランのなぐさめも耳に入らない。
そこへ三日前、一夜の宿を貸したスノードンの騎士、ジェイムズ・フィッツ=ジェイムズがふたたび現れる。
迎えに来たというジェラルドにエレンは、私の父は追放者だし、私には私と父のために危険にさらされている一人の青年がいるとこたえる。
愛の希望は消えたが、同情したジェイムズは帰ろうとする足を止め、また戻ってきて、 これは以前スコットランド国王の命を救ったときに感謝のしるしにもらったもの、これがあれば、王は何なりと願いをかなえてくれるだろうと、 金の印形指輪をエレンの指にはめ、彼女の手に接吻し、去っていった。
トロサックスの谷で、ジェイムズの愛馬が屍となっていた。そこを過ぎると道端の崖の上にやつれはてた女がたたずんでいた。
ローランド(低地)に住んでいたブランシュという女だが、花嫁となる日の朝、ロデリックに花婿を殺され、 誘拐されたせいで頭がおかしくなったと案内人マードックは説明し、追い払おうとするが、ジェイムズがかばうとブランシュは感謝して低く途切れ途切れに歌を続けた。
その歌で、身の危険を確信したジェイムズは剣を振りかざしマードックに詰問するが、彼は逃げつつ弓を引き絞った。
矢はジェイムズの羽飾りをかすめ、ブランシュの胸に突き刺さる。
マードックを倒したジェイムズはブランシュのもとへもどり、彼女と彼女がもっていた花婿の髪をあわせ血にひたし、帽子にかざりつけ、 ロデリックに仇をうつことを誓う。
ハイランダー(高地人)を避け、勝手も知らぬ道を歩き続けるが、大きな岩角を曲がった途端、彼のすぐ前で露営の篝火が燃えていた。
火のそばにいたハイランド人に旅の者と答え、ロデリックの敵と言うが、そのハイランド人はスパイでないのなら、食べ物を与え、安全なところまで案内しようと約束した。
火のそばで二人の勇敢な仇敵同士は、兄弟のように隣り合って眠りにつき、朝までぐっすりと眠りについた。

第五曲 『一騎打ち』
案内をしている途中ふたりは、サクソン人(ジェイムズ)がなぜロデリックに敵意をいだくのか、など、いろいろ言い合う。
ロデリックが姿をあらわすのをまちこがれているというジェイムズに、願いをかなえてやると、ハイランド人が口笛を鋭く吹くと、 たちまち物陰から伏兵が現れた。
誇らしげに軍勢で埋まった様子を見たハイランド人は、自分がロデリックだと名乗る。
ジェイムズの勇敢な態度に、感心したロデリックが手を振ると、軍勢はふたたび茂みに消えた。
安全なところに到着すると、ロデリックはここで正々堂々と決着をつけようと、盾を捨て、剣を構えた。
ロデリックの、最初に敵兵の生き血を流したものが勝利を得るという言葉に、ジェイムズはそれなら案内人だったマードックの血が すでに流れている、と、剣を抜くのをためらうが、帽子に飾ってある髪に話題が及ぶと、覚悟を決めて剣を取った。
戦いはジェイムズの勝利に終わり、ロデリックの血にブランシュの髪をひたし、仇をはたす。
ジェイムズが角笛を吹き鳴らすと4人の騎士見習いがやってきて、エレンをのせるはずだった芦毛の華奢な馬に瀕死のロデリックをのせていく。
途中、捕らわれたマルカムを救い、戦争を止めようと町に向かってくるダグラスに目をとめると、ジェイムズは帰り道を急ぐ。
町では祭りがひらかれていた。
弓やレスリングなどの競技に参加したダグラスはすべてに優勝し、王から賞品をもらうが、王の目は冷たく温情は微塵もなかった。
群集はダグラスの活躍に大歓声をあげるが、貴族たちは国王が彼を無視しているので、声をかけるものもいない。
最後に牡鹿を一頭放し、猟犬に仕留めさせようとしたところ、ダグラスの犬ラフラが駆け出し先に倒してしまった。
怒った狩猟係がラフラに皮ひもで打ちかかったので、ダグラスは殴って狩猟係を気絶させてしまう。
その狼藉によって捕らえられるが、群衆が反発して大混乱になる。
ダグラスの言葉で混乱は静まり、ダグラスの立派な態度に近衛兵たちもうなだれ、ため息とともに囚人を引き渡すのだった。
王のもとに早馬がきて、戦争がはじまることを報告すると、王は戦いをやめるようにとすぐ伝令を走らせた。

第六曲 『警備兵控え室』
スターリング城にエレンとアランがやってくる。
御璽の指輪を見せると、案内の男の態度が変わり、エレンを立派な部屋に連れて行く。
エレンが去ったあと、アランは兵士にご主人さまにあわせてくれと頼む。
兵士は勘違いして、ダグラスのところではなく、瀕死のロデリックのもとへアランを連れて行く。
ロデリックはアランに戦いの様子を吟じさせる。
激しい戦いの様子を語り、休戦の白旗がひるがえったところまでくると、アランは歌を止めた。
ロデリックが死んだのを知ると、今度は死者に捧げる嘆きの歌を歌い始める。
豪華な部屋で待たされているエレンにスノードンの騎士、ジェイムズ・フィッツ=ジェイムズが迎えに来る。
大広間に通されたエレンは美しく着飾った人々が帽子を脱ぎ、ジェイムズだけが帽子をかぶっているのを見る。
スノードンの騎士、ジェイムズ・フィッツ=ジェイムズがスコットランド王その人だった。
スターリング城は昔スノードンと呼ばれており、ノーマン人は彼をジェイムズ・フィッツ=ジェイムズと呼んでいると説明する。
王はダグラスとはもう許しあったことをつげ、ふたりを引き合わせる。
父親と再会したエレンは、ロデリックの恩赦を求めるが、去りゆく命をとどめることはできないという。
マルカムに対する恋心に王が気づいていると知ったエレンは、捕らわれているマルカムの解放を 自分に代わって頼んでほしいとでもいうように父に指輪を渡したが、王は、それでは指輪は効力を失ったと告げた。
ひざまずくマルカムに向かい、誰もおまえの助命を願っていないから、相応の罰を受けなければならない。獄吏に引き渡せ、と言うと、 自らの金の首飾りをはずして、マルカムの首にかけ、優しく引き寄せると、その留め金をエレンの手の上に置いた。


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