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Ave verum corpus | <訳> |
Ave verum corpus natum de Maria Virgine. | |
vere passum immolatum in cruce pro homine: | 真の苦しみをうけ 世の人のため 十字架にかけられた |
cujus latus perforatum |
貫かれたその脇腹からは 血と水が流れた |
Esto nobis praegustatum mortis in examine.(in mortis examine) |
我らのために 死の試練をあらかじめ知らせたまえ |
モーツァルトの死の年の初夏にかいた小さなモテット。
モテットとは、中世・ルネサンス時代にかけて成立、発達した多重音楽(ポリフォニー)の楽曲形式のひとつで、ミサ曲以外の宗教曲を指します。
中世では各声部が異なる歌を同時に歌っていました。
1791年6月17日作曲。妻のコンステンツェが足の療養のために訪れていたウィーン近郊の温泉保養地バーデンで、
コンスタンツェを親切に世話してくれたこの地の地区教会の合唱指揮者、アントン・シュトルに感謝の意をこめて贈られました。
歌詞は14世紀の法王インノケンティウス4世の作といわれるラテン語の典礼文。
最後の一文の意味がよく分からなかったのですが、どうやら死を迎えるという人生最後にして最大の試練のときに、
イエスが受難ののち復活し永遠の命を得たように、その聖体の秘跡にあずかることができることを祈り求める、ということらしいです。
ラテン語のテクストは14世紀以降の諸聖歌本にみられ、聖変化のための歌として、ヨーロッパ各国で歌われています。
中音域のみに限られた穏やかな音調。転調と半音階が繊細な陰影をあたえ、質朴さがかえって、神への敬愛の念を感じさせます。
「私たちはこの地上にいる間に天をひとめ見ることができる」といわれるほどの、落ち着いた響きの澄み切った歌です。