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Giacomo Puccini |
第1幕 「お父様にお願い」
ラウレッタが恋人との結婚をかなえるため、父親に助けてくれるように頼むアリア。
O mio babbino caro |
(Lauretta) |
オ ミーオ バッビーノ カーロ ミ ピアーチェ エェッ ベッロ ベッロ O! mio babbino caro, mi piace è bello, bello; |
ヴォ アンダーレ イン ポールタ ロッサ アッ コンペラール ラネッロ vo' andare in Porta Rossaa a comperar l'anello! |
アンドレーイ スル ポンテ ヴェッキオ マッ ペル ブッタルミ イナールノ andrei sul Ponte Vecchio, ma per buttarmi in Arno! |
ミ ストゥルッゴ エム ミ トルメント オッ ディオ ヴォルレーイ モリル Mi struggo e mi tormento! O Dio , vorrei morir!... |
バッボ ピエタァ バッボ ピエタァ ピエタァ Babbo, pietà, Babbo, pietà, pietà! |
《直訳》
ねえ 私の大切なお父さま
わたし あの方が好き とてもステキな人なのよ
だからポルタ・ロッサ(フィレンツェの中心街の通りの名)へ
指輪を買いに行きたいの!
ええ そう あそこへ行きたいの
そしてもしもこの愛が儚いものなら
ヴェッキオ橋(フィレンツェの街中を流れるアルノ河にかかる橋で街のもっとも繁華な場所)に行って
代わりにアルノ河へ身を捨てますわ!
わたし 切なくて 苦しくて
ああ 神さま いっそ死にたいくらいです!
お父さま お願いです お願いですから!
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一幕の三部作のひとつとして、第一部 『外套』、第二部 『修道女アンジェーリカ』 と
同時上演を意図して三種三様の対象面白く作ったものですが、現在では必ずしも一緒に上演されていません。
第一部 『外套』は、ヴェリズモ・オペラに多い、嫉妬からの殺人を扱った救いのない愛の悲劇、
第二部はイタリアのある修道院を舞台にした神秘的な奇跡劇で、不義の子を生んだ名門の娘が修道院に入れられ、
罪の償いをしているが、子供の死を知って自殺するという話で、登場人物が女性のみなのが特徴です。
そして第三部にあたる 『ジャンニ・スキッキ』 は活力と機知に富んだプッチーニ唯一の喜歌劇で、1918年4月20日完成しました。
原作はダンテの 『神曲』 の地獄編、第30歌ですが、1866年にピエートロ・ファンニーニが編集した、「14世紀の
フィレンツェ人による 『神曲』 への注釈」 を参考にしていると思われます。
ダンテはにせの遺言状を作りあげ、莫大な遺産を横領したスキッキを酷く扱っていますが、オペラのほうは
恋人同士の若いふたりを創造し、スキッキを恋に悩む娘の父親にして、その悪巧みも決して私利私欲のためでなく、
若い二人の幸福を願う親心から思わず一役買ったかたちに仕組み、遺産の分け前にあずかろうとする親族たちの欲などを辛らつにあらわして、
スキッキのいかさま行動にむしろ痛快さが感じられるようにまとめられています。
プッチーニはこの三部作をローマで初演したいと考えていましたが、戦争中のため不可能となり、1918年12月14日、
ニューヨークのメトロポリタン歌劇場で初演されました。
初演にはいつも立ち会う彼も、このときは交通事情が不便で渡米できず、自宅で首を長くして吉報を待っていたところ、
結果は 『ジャンニ・スキッキ』 だけが好評で、幕がおりないうちから拍手がなっていました。
今日ではヴェルディのファルスタッフ以後、イタリア最高の喜劇的オペラといわれています。
「ジャンニ・スキッキ」 のあらすじ
1299年9月1日の朝。フィレンツェの金持ち、ブオーゾ・ドナーティが自宅で息を引き取った。
親族一同はおおげさに嘆いているものの、彼らの本当の興味はブオーゾの遺産。
しかしブオーゾが遺産をある修道院に寄付する遺言書を書いたという噂を知り、びっくりした一同は必死に部屋を探しだす。
部屋中ひっかきまわすが、なかにはこの騒ぎの間に見つけた金目のものをポケットに隠す不心得者もいる。
ブオーゾの従妹ツィータの甥のリヌッチォが遺言状をみつけ、皆が駆け寄るが、リヌッチォはその証書を高く掲げて逃げまわり、
ツィータに、もしブオーゾが遺産を残してくれて金持ちになれたら、恋人のラウレッタととの結婚を許してと懇願する。
だが皆は彼の言葉に気をとめることなく、よってたかって遺言状を取り上げ、ツィータはすべてがうまく運べば、そのときは誰とでも一緒になるがいいという。
一同が遺言書に見入ってる隙にリヌッチォはブオーゾの甥の息子ゲラルディーノをそっと呼び、
ラウレッタと彼女の父のジャンニ・スキッキを呼んでくるようにいう。
ツィータが遺言書を読み上げようとすると、誰もがそれぞれ勝手な空想を描き、なんとなく落ち着かない。
遺言証書が開かれると、皆はむさぼり読み、まもなく絶望の声をあげ、力なく座り込む。
噂は本当だった。一同はブオーゾの死によって、本当に自分達が泣かねばならぬはめになったと恨み言をならべる。
しばらくして冷静さを取り戻した一同は、何かいい知恵はないものかと誰ともなくつぶやく。
リヌッチォがひとりだけうまくやれる人物がいるといい、恋人の父ジャンニ・スキッキの名をあげる。
そこへゲラルディーノが駆け込んできて、ジャンニ・スキッキがすぐ来ると告げる。
一同はリヌッチォの勝手な行動を責め、あんな田舎者の成り上がりと親戚関係を結ぶのはまっぴらだと反対する。
リヌッチォは懸命に、スキッキがいかに頭の回転の早い知恵者で、法律にも明るい善人かを説き、ジャンニ・スキッキを快く迎えようという。
そこへ扉をノックする音が響き、ジャンニ・スキッキが娘ラウレッタと一緒に現れる。
スキッキは皆のしょんぼりした様子を見て、わざとお悔やみをいいつつも、遺産が転がり込むだろうと皮肉を言う。
ツィータが食ってかかり、持参金のない娘と甥を結婚させるわけにはいかないと嫌味を並び立てると、スキッキも負けずに言い返す。
リヌッチォはブオーゾの遺書をよんで、うまく助けてくれと頼むが、スキッキはこんなわからずやたちの利益なんか考えるのは御免だと断る。
そのときラウレッタが父の前にひざまずき、「わたしのお父さん」を歌って哀願する。
娘の願いにスキッキは遺言書を読み、考え込む。
スキッキは一同にブオーゾの死が外に漏れていないことを確かめると、寝台を整えさせ、自分がブオーゾになりすまし、
公証人に改めて遺言書を作らせることにする。
感激した一同は、スキッキを誉め、抱き合って喜び、リヌッチォは公証人を呼びに行く。
一同は遺産の分配について考え始め、それぞれ希望をのべ、勝手な欲を主張しあって大騒ぎし、ジャンニ・スキッキはそれを眺めて大笑いする。
皆はスキッキにブオーゾの衣装を着せるのを手伝いながら、その耳元に小声でそれぞれに自分の望みを告げる。
スキッキは彼らの欲張った要求に調子よく返事する。
浮かれる一同を制し、スキッキは真面目な顔をして、もしも遺言状を書き換えたことがバレれば、
みんな右手を手首から切られ、この町から追放されるという布告を告げ、皆を震え上がらせたうえ、
そのときには二度とフレンツェには戻れないぞと脅かし、さらばフィレンツェと歌い、一同をすっかりおびえさせる。
まもなく公証人がふたりの証人を連れてやってくる。
ブゾーニになりすましたスキッキは改めて遺言を述べたいと訴え、まず先の遺言の無効を宣言する。
そして親類の者に、それぞれ望みのものをひととおり与えてから、真剣な面持ちで耳をすます一同に、
ブオーゾの遺産で一番価値のある、トスカナで一番のロバを、わしの忠実な友人、ジャンニ・スキッキに与えるという。
一同が唖然とするうち、続いてこの邸宅を・・・と言い、彼らが騒ぎ出すと、さらばフィレンツェと口ずさみ、
手首を切り取られることを思い出した一同は口をつぐんでしまう。
スキッキはさらに遺言を続け、粉ひき場もジャンニ・スキッキに与えるといい、一同が騒ぎ出すとまた、
さらばフィレンツェ、手のない腕で別れの挨拶を・・・と脅しながら遺言を終える。
さらにツィータに彼女の財布から遺言状作成代を払うように命じ、たっぷりの謝礼に公証人とふたりの証人は感謝して帰っていく。
公証人たちが外に出ると、親戚一同は、泥棒!と叫びながら、スキッキに飛びかかるが、彼は杖を振り、ここは自分の家だと追い払う。
一同は手当たりしだい金目のものや手近な品を持てるだけ持って、怒鳴り散らしながら追われて出てゆく。
やっと静かになると、テラスではようやく結ばれることになったリヌッチォとラウレッタが幸せに酔い、
ブオーゾの親戚たちが今持ち出していった品物を両手一杯に取り戻してきたスキッキは、彼らをうれしげに眺める。
帽子を脱いで舞台の前に進み出たスキッキは聴衆に向かって、「皆様方、私の無法なたくらみも、ダンテの御認可を得て、
もしこの芝居がお気に召しましたなら、どうか私をお許しくださいますよう」 と挨拶し、幕がおりる。