イングランド民謡

グリーンスリーヴス


Scotch Folk Song “Green Sleeves”

1580年の英国書籍出版商組合の機関紙に<新しい北方の小歌>として記録されている、イングランド地方で最も古い民謡です。
シェイクスピアの喜劇 『ウィンザーの陽気な女房達』 や、『三文オペラ』 にも使用され、広く親しまれているだけに、いろいろな詩がつき、
為政者が自分に都合のいい歌詞をつけて流行らせたこともあったようですが、なかでも愛する緑衣の女性への熱い想いを歌ったものが有名です。
愛を表現するために騎士と袖を交換するエピソードは騎士物語によく登場し、とくにグリーンは愛の色とされていました。
“グリーンスリーヴス” とは緑色の衣服をまとった女性のことで、ここでは宮廷恋愛の対象である高貴な既婚女性の匿名といわれています。
不倫なので、本名を口に出すことができなかったのです。
のちにイギリスの現代作曲家ラルフ・ヴォーン・ウィリアムズが、この気品に満ちた上品な旋律にフルートとハープを伴った 弦楽合奏用の 「グリーンスリーヴスによる幻想曲」 を作り、さらに有名になりました。
また賛美歌の第2編216番の 「このみどり子は誰なるぞ」 というクリスマス・キャロルにもなっていて、 クリスマスシーズンになると、イギリスやアメリカではこの曲が流れるそうです。

※ 英語の歌詞は10番以上ありますが、こちらでは最初と最後だけのせています。

 Green Sleeves  《直訳》 緑の小袖
Alas! my love, you do me wrong,
To cast me off discourteously,
For I have loved you so long,
Delighting in your company.
ああ 愛しい人よ  不当な仕打ちだ
無情にも私を見捨てるとは
あなたをずっと愛してきた私にとって
あなたと共にいるのが喜びなのに
Green sleeves was all my joy,
Green sleeves was my delight,
Green sleeves was my heart of gold,
And who but my Lady Green sleeves.
※ 緑衣の麗人は わが喜びのすべてだった
   緑衣の麗人は わが歓喜
   緑衣の麗人は わが美しい心の人
   そして緑衣の麗人以外 私の貴婦人はいない
So Green sleeves, now farewell, adieu
May good fortune prosper thee
For I am still thy lover true
Oh, come once again and love me.
緑衣の麗人よ さようなら さようなら
願わくば 貴女に幸運と繁栄があらんことを
私はまだ貴女の真実の恋人ですから
いつか戻ってきて 私を愛してください
Green sleeves......... ※ くりかえし


日本語歌詞
何人かの訳があるようです。

【門馬直衛 訳】

恋人つれなく わたしを見捨てた
深くも愛した 恋しきその人

※ グリーン スリーヴス 恋しく
  グリーン スリーヴス いとしく
  グリーン スリーヴス わが心
  なつかしの君よ

心をつくして 恋したその人
忘れもできない 慕わしその人

※ くりかえし

【三木おさむ 訳】

想い出なつかし 緑の小そでよ
つれなき別れの さびしき想い出

※ 緑の小そでよ
  愛のかたみと
  はるけき想い出
  わが胸に グリーンスリーヴス

香りもゆかしき 緑の小そでよ
花咲く乙女の やさしき想い出

※ くりかえし

【岩田 宏 訳】

ああ あなたはなぜ私を捨ててしまったの
私はただ そばにいるだけでよかったのに

※ あなたのきれいな
  みどりの小袖
  それは私の
  よろこびのこころよ
  
よろこばせようと うたをうたったのに
あなたはとうとう わらってくれなかった

※ くりかえし

【八木良子 訳】

流れくる笛の音(ね) 響き悲しく
わが心の痛みは まだぬぐえずに

 いく月待ちたる
 そのやさし言葉
 されどもわが望み
 はかなく ついえぬ

かくも深く思いたる かの人なれば
いかにつれなかろうとも 今も慕いぬ

 いとしきそのひとみ
 懐かしその声
 グリーン・スリーヴス はるかに
 忘れ得ぬ人よ

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