ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル 作曲

オラトリオ ≪マカベウスのユダ≫ より

見よ、勇者は帰りぬ (得賞歌)

Georg Friedrich Handel
英語名:George Frideric Handel (ジョージ・フリデリック・ヘンデル)
“See the conquering hero comes” from ORATORIO “Judas Macabeus”

  勝利を讃える歌

 今ぞ見よ 輝かに
 誇り満てるこの朝(あした)
 とどろく凱歌は われとあり
 若き血潮 眉上がる

 ※ 肩を組み 高らかに
    歌えよ今 わが勝利

 空の青 色冴えて
 風は光るこの朝(あした)
 勝鬨(かちどき)いく度(たび)
 こだま呼ぶ
 若き力 意気上がる

 ※ くりかえし
いまかえる聖なる勇士

 みよ いまかえる
 聖なる勇士
 吹けや 角笛
 ならせや 太鼓

 みよ いまかえる
 聖なる勇士

 みよ いまかえる
 聖なる勇士
 棕櫚の葉かざし
 どよめき 歌い
 迎えん いざ いざ
 栄(はえ)ある人を

 * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

表彰状授与のときによく流れる曲なので、ほとんどの方が聞いたことがあるのではと思います。
オラトリオ 『ヨシュア』 と 『ユダス=マカベウス(マカベウスのユダ)』 の第三幕で歌われる有名な合唱曲です。
オラトリオの内容は、イスラエルの英雄マカベウスのユダがシリアとの戦いに勝利をおさめ、 ユダヤ民族を救ったという旧約聖書の一説に基づいた物語で、
この曲はその第3部、人々がその勝利の英雄を迎える場面で歌われます。
ベートーベンがチェロのために書いた 『ヘンデルのユダス・マカベウスの主題による変奏曲』 でも有名です。
現在では賛美歌、『シオンの娘よ、よろこべ “Tochter Zion”』 として取り入れられており、日本の讃美歌にも第130番として収録されています。
「シオンの娘・・・」の歌詞は、19世紀にエッシェンブルクという人がつけたものですが、旧約聖書のゼカリア書第9章9節からとられていて、 「メサイア」のソプラノ・アリア “Rejoice” と同じです。
旋律は「マカベウスのユダ」から、歌詞は「メサイア」からと、ヘンデルの2大オラトリオを融合させた歌曲となっています。

<ドイツ語歌詞>
 Tochter Zion
 
<日本語歌詞>
 よろこべや (讃美歌第130番)
トホター ツィーオン フロイエ ディヒ
Tochter Zion, freue dich!
よろこべや たたえよや
ヤォホツェ   ラォト イェルーザレム
Jauchze, laut, Jerusalem!
シオンの娘 主の民よ
ズィー ダイン コーニヒ コムト ツゥー ディア
Sieh, dein König kommt zu dir,
今しきます あまつきみ
ヤー エィア コムト  デァ フリーデフルスト
Ja er kommt, der Friedenfürst.
今しきます 平和の主
トホター ツィーオン フロイエ ディヒ
Tochter Zion, freue dich!
よろこべや たたえよや
ヤォホツェ   ラォト イェルーザレム
Jauchze, laut, Jerusalem!
シオンの娘 主の民よ
   
ホズィアンナ  ダビィッツ ゾーン
Hosianna, Davids Sohn,
さちあれや 主の民に
ザイ ゲゼィーグネット ダイネム フォルク
Sei gesegnet deinem Volk!
ホサナ ホサナ ダビデの子
グリュンデ ヌゥン ダイン エィーヴィヒ ライヒ
Gründe nun dein ewig Reich!
今ぞきたる神の国
ホズィアンナ イン デァ ホー
Hosianna in der Höh'!
今ぞ成れる主のちかい
ホズィアンナ  ダビィッツ ゾーン
Hosianna, Davids Sohn,
さちあれや 主の民に
ザイ ゲゼィーグネット ダイネム フォルク
Sei gesegnet deinem Volk!
ホサナ ホサナ ダビデの子
   
ホズィアンナ  ダビィッツ ゾーン
Hosianna, Davids Sohn,
うたえよや さかえの主
ザイ ゲグリューセット コーニヒ ミルト
Sei gegrüßet, König mild!
ホサナ ホサナ ダビデの子
エィーヴィヒ シュティート ダイン フリーデンストローン
Ewig steht dein Friedensthron,
平和の御座 ゆるぎなく
ドゥー デス エィーヴゲン ファータース キント
Du, des ew'gen Vaters Kind!
めぐみの御世 かぎりなし
ホズィアンナ  ダビィッツ ゾーン
Hosianna, Davids Sohn,
うたえよや さかえの主
ザイ ゲグリューセット コーニヒ ミルト
Sei gegrüßet, König mild!
ホサナ ホサナ ダビデの子


《直訳》
  シオンの娘よ よろこべ

 シオンの娘よ 喜べ
 エルサレムよ 喜びの声をあげよ
 見よ お前の王が来てくださる
 そうだ 平和の君主(キリスト)がおいでになる
 シオンの娘よ 喜べ
 エルサレムよ 喜びの声をあげよ

 ダヴィデの息子にホサナ
 その民にも祝福を!
 今 あなたの永遠の王国の礎を置いてください
 いと高きところにホサナ!
 ダヴィデの息子にホサナ
 その民にも祝福を!

 ダヴィデの息子にホサナ
 やさしき王に万歳!
 あなたの平和の王座よ 永遠なれ
 永遠の父の子よ!
 ダヴィデの息子にホサナ
 やさしき王に万歳!


雑知識

「シオン」 とは、エルサレムにある丘の名前で、旧市街の南西にあるシオン門を出たところにあるユダヤ教の聖地。
キリスト教、イスラム教の聖地でもあり、ダビデ王の墓や、イエス・キリストが処刑される前夜、十二使徒と共にとった最後の晩餐の部屋などがある。
また神に約束された楽園としてのエルサレム、イスラエルやユダヤ民族を象徴し、娘は 「住民」 の意なので、
「シオンの娘」 とは、イスラエルの民(ユダヤ人)を指している。
バビロン捕囚以来、2千年にわたって、流浪と迫害をうけてきたユダヤ民族にとって、「シオン」という言葉は憧憬を帯びるようになり、 民族の故郷であるシオンに帰ること、それが彼らにとって古来からの大きな望みとなった。
19世紀末に本格化したイスラエルの地(パレスチナ)に故郷を再建しようとするユダヤ人の近代的運動「シオニズム」の語源はここに由来する。

「ホサナ」 とは、ヘブライ語「ホシア・ナ」からきており、「神さま、救いたまえ」の意味。
主イエス・キリストがエルサレムに入ったとき、ローマに支配されていた群衆は「ホサナ!」「ホサナ!」と叫んで喜んだ。
ここでは 「祝福あれ」 「栄光あれ」 との意味で使われており、日本語的には 「万歳」が近いかもしれない。
ダビデの息子はソロモン王。

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