フランツ・ペーター・シューベルト 作曲

歌曲集 「白鳥の歌」 より 第4曲

セレナード  作品72-4  D.957-4

Franz Peter Schubert
Ständchen Schwanengesang Nº1 Op.72-4  D.957-4

Ludwig Rellstab, 1799-1860
ルートヴィヒ・レルシュタープ 作詞

1828年作。セレナード(セレナーデ)という曲名は多数あり、一般に、シューベルトのセレナードと呼ばれています。
歌曲集 《白鳥の歌》 は、シューベルト最後の年に作曲された14曲の歌をまとめた遺作集であり、レルシュタープ、ハイネ、ザイデルの詩が使われています。
シューベルトの死後、1829年5月に出版され、そのさい出版者のハスリンガーによって表記の題名をつけられました。
白鳥は死の直前にだけ美しい声で鳴くという言い伝えは、ずいぶん古くからあったらしく、それにちなんで絶筆や辞世を意味する
<白鳥の歌> という言葉が生まれたのは16世紀になってからのようです。
曲集の第1部をなす7曲のルートヴィヒ・レルシュタープの詩による歌曲は、1828年8月に作曲され、
テキストとなった詩はベートヴェンの手元にあったものを彼の死後、弟子のシントラーによってシューベルトにもたらされました。

セレナーデはもともと恋人の窓の下に立って愛を訴える歌で、シューベルトのものも、セレナーデの特性に従って
ギター風の伴奏をもち、情熱を内に秘め、やさしく訴えかける旋律は甘美にして清らかです。
胸のときめきにも似た響きをもち、歌声のこだまをかえすような伴奏は闇のなかにきえていく自分の声に耳をすます歌い手の、
不安と期待に満ちた余韻を感じさせ、古今の数多い同趣の曲の中でも特に美しく、代表的な名曲とされています。

(ドイツ語歌詞) (日本語歌詞)
ライゼ フレーエン マイネ  リーデル
Leise flehen meine Lieder
ひめやかに闇をぬう
ドゥルヒ ディー ナハト ツー ディール
durch die Nacht zu dir;
わがしらべ
イン デン シュティレン ハイン ヘルニーデル
in den stillen Hain hernieder,
静けさは果てもなし
リープヒェン   コム  ツー ミール
Liebchen, komm zu mir!
来(こ)よや君
   
フリュステルント シュランケ ヴィプフェル ラウシェン
Flüsternd schlanke Wipfel rauschen
ささやく木(こ)の間(ま)を
イン デス モンデス  リヒト イン デス モンデス  リヒト
in des Mondes Licht, in des Mondes Licht;
もる月かげ もる月かげ
デス フェルレーテルス ファイントリッヒ ラウシェン
des Verräters feindlich Lauschen
人目も届かじ
フュルヒテ ホルデ   ニヒト  フュルヒテ ホルデ  ニヒト
ürchte, Holde, nicht, fürchte, Holde, nicht.
たゆたいそ たゆたいそ
   
ヘールスト ディー ナハティガレン シュラーゲン
Hörst die Nachtigallen schlagen?
君きくや 音(ね)にむせぶ
アハ ズィー フレーエン ディッヒ
ach! sie flehen Dich,
夜の鳥
ミット デル テーネ ズュッセム クラーゲン
mit der Töne süssen Klagen
わが胸の ひめごとを
フレーエン ズィー フュール ミッヒ
flehen sie für mich!
そは歌いつ
   
ズィー フェルシュテーン デス ブーゼンス ゼーネン
Sie versteh'n des Busens Sehnen,
鳴く音(ね)にこめつや
ケンネン   リーベスシュメルツ  ケンネン   リーベスシュメルツ
kennen Liebesschmerz, kennen Liebesschmerz,
愛の悩み 愛の悩み
リューレン ミット デン ズィルベルテーネン
rühren mit den Silbertönen
わりなき思いの
イェーデス ヴァイヒェ ヘルツ イェーデス ヴァイヒェ ヘルツ
jedes weiche Herz, jedes weiche Herz.
かのひとふし かのひとふし
   
ラス アウホ ディール ディー ブルスト ベヴェーゲン
Lass auch dir die Brust bewegen,
深き思いをば
リープヒェン  ヘーレ ミッヒ
Liebchen, höre mich !
君や知る
ベーベント ハル イッヒ ディール エントゲーゲン
bebend harr' ich dir entgegen !
わが心 さわげり
コム    ベグリュッケ ミッヒ
komm, beglücke mich !
待てるわれに
コム    ベグリュッケ ミッヒ   ベグリュッケ ミッヒ
komm, beglücke mich, beglücke mich !
出(い)で来よ君 出で来よ


《直訳》
ぼくの願いをそっと歌に託して
夜のしじまのなかをあなたに届かせる
静かなこの林のなかへ下りて来てほしい
愛するひとよ ぼくと一緒になって!

梢の細い先がささやくように
月明かりのなかで揺れている
だれか聞き耳をたてていはしないかと
可愛いひとよ 恐れることはない

ナイチンゲールの歌声が聞こえるね
ああ! ナイチンゲールも求めている
甘く切ない歌声をひびかせながら
ぼくにかわってきみを求めているのだ

ナイチンゲールにもわかるのだ
胸にうずく憧れを 愛の苦しみを
そして銀鈴をふるわすような声で
心やさしいひとたちの琴線にふれてくる

あなたも心をもっと開いてほしい
愛するひとよ ぼくに耳を傾けて!
身のふるえる思いで待っているのだから!
さあおいで そしてぼくを幸せにして!

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