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西遊記あらすじ 第91回〜第100回
ものすごく省略しています。興味があったら、ぜひ本を読んでみてください。 |
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第91回 〜金平府に到着。
玉華州を出て5日ほど。また城があらわれました。
通りはおおにぎわい。人々は八戒の口がとんがり、悟空の目が真っ赤、悟浄の顔が真っ黒けなのを押し合いへしあい見物します。
やがて一行は、慈雲寺という寺を見つけ、入ってみることにしました。
一行は歓迎を受け、ここは天竺国のはずれの金平府(きんぺいふ)で、みやこまで二千里ほどだと聞きます。
お斎(とき)をいただいて早々に去ろうとする三蔵ですが、僧たちは今日は正月の13日だから、15日の元宵節の祭りを見物していかれてはと引き止めます。
三蔵たちは寺の庭をめでたり、まちで灯火見物をしたり、さかり場であそんだり、塔を掃いたりして、元宵節の夜となりました。
城内へいって金灯を見物します。金灯の灯油は蘇合香油というとても高価なもので、仏さまが油を持って行くとのこと。
そんなことを話していると風が出てきました。三蔵は仏の姿をぜひとも拝みたいと、寺の者がいくらすすめても帰ろうとしません。
やがて風のなかに仏の姿が三つ現われ、近づいてくるので、三蔵は橋にかけのぼり、ひれ伏して仏を拝みます。
悟空が大急ぎで、「あれは仏なんかじゃない、妖邪に決まってます!」 と三蔵をひっぱりますが、時すでに遅し、三蔵はさらわれてしまいました。
雲に乗り、なまぐさいにおいを頼りに東南へと追いかけていった悟空、夜が明けた頃、ばかでかい山にたどりつきます。
年・月・日・時の四値功曹は、三蔵は慈雲寺で歓楽にふけり、禅の心にたるみが生じたため、妖邪にとらわれの身になった。
ここは青龍山で、玄英洞という洞窟に辟寒(ひかん)大王、辟暑(ひしょ)大王、辟塵(ひじん)大王という3匹の化けものが住んでいる。
この大王たちが俗世に住むようになって千年にもなるが、蘇合香油が大好物で、仏に化けて油をとりに行くようになった。
はやく三蔵を助けないと、肉を細切れにして蘇合香油でいためて食べられてしまいますよと、悟空をせかします。
それを聞くなり、悟空は洞窟を探し、谷川のほとりの崖下にある石づくりの建物を見つけると、扉の前で、師匠を返せ! と叫びました。
三蔵から弟子たちのことを聞いた妖邪王は、三蔵をすぐに食うのをやめて、3人の弟子もつかまえてから、まとめて食うことにします。
そして悟空に戦いを挑みますが、日が暮れようとしても決着がつきません。
そこで妖邪王が旗を大きく振り、手下の牛頭の化けものどもをいっせいにかからせると、さすがに不利だと悟空は敗走。
慈雲寺に帰り、待っていた八戒と悟浄になりゆきを話すと、晩御飯のあと、三人で青龍山の玄英洞へむかったのでした。
第92回 〜四木禽星、妖邪王たちを退治する。
青龍山玄英洞に到着した悟空たち。まず悟空が蛍に化けて、中の様子を見に行きます。
縛られている三蔵の鎖を解き、洞窟を抜け出そうとしましたが、見つかってしまい、悟空だけが外に出ました。
今度は皆で師匠を救い出そうと、八戒が閉められた石の扉を壊すと、妖邪王たちは手下たちを連れて迎え撃ちます。
3匹の妖邪王と3人の弟子、一対一で長いこと戦ったのですが、勝負がつきません。
そこで辟寒大王が手下どもに一斉攻撃を命じると、八戒と悟浄はとらえられ、悟空はまたしても敗走とあいなりました。
天界に援軍を求めに行った悟空、太白金星から、妖邪王は犀牛(さい)の精で四木禽星なら退治できると聞き、
二十八宿の角木蛟(かくもくこう)、斗木�貌(ともくかい)、奎木狼(けいもくろう)、井木�俸(せいもくかん)の四星官を連れて、玄英洞にむかいます。
悟空が妖邪王たちに戦いをいどみ、外におびき出します。
四木禽星の声に気づいた妖邪王たち、とたんにびくついて、正体をあらわし、東北の方角へ逃げ出しました。
悟空は井木�俸、角木蛟を連れて追いかけ、ほかの二星官は手下どもを平らげつつ、洞窟に入り、三蔵らを助けます。
そして三蔵に八戒、悟浄ともども慈雲寺に帰るようにいうと、自分たちは悟空のあとを追いかけました。
海に逃げ込んだ妖邪王たちですが、西海龍王が悟空に加勢し、辟暑、辟塵大王は生け捕りにされ、辟寒大王は井木�俸にかみ殺されてしまいました。
一同雲に乗り、金平府へ帰ると、大王を地上に突き落とし、八戒が犀牛の頭を切り落とします。
こうして、にせ仏は退治され、来年から金灯を設けるのは禁止とされました。
蘇合香油を徴集することもとりやめになったので、灯油を献納していた240軒の人たちは重い負担がなくなり大喜び。
三蔵たちを招待攻めにしたのでした。こんな感じで一ヶ月たちました。
それでもなかなか出発できないので、しびれを切らした三蔵、こっそり夜が明けないうちに出発したのでした。
第93回 〜三蔵、大天竺国の公主の婿となる。
半月あまり旅すると、行く手に高い山があらわれました。
道ばたに給孤布金禅寺(ぎっこふこんぜんじ)があり、なかに入っていくと、回廊のそばで休んでいる旅商人がたくさんいます。
寺の僧にたずねると、ここの山は百脚山といい、近頃はむかでの化けものがでるので、朝になるまで待って出かけるのだとのこと。
夜、住職と三蔵、悟空は、三蔵は45歳、住職は105歳、悟空は・・・などと話しながら、裏門のほうへと歩いていきます。
するとどこからともなく父母を求めているような悲しげな鳴き声が聞こえてきました。
三蔵師弟が凡人ではないと見抜いた住職が人払いをして打ち明けるには、ちょうど一年前、一陣の風が吹き、うつくしい娘がここに来た。
その娘がいうには、自分は天竺国の公主で、風に吹き飛ばされてここまで来たとのこと。
しかし住職が城内にいき、さぐってみたみたものの、公主は城にいて何も変化はない。
だからここに来た娘は閉じこめてあるが、どうか法力をもってこのことを明らかにしてほしいと頼みます。
翌朝、別れる際に住職がゆうべの話をくれぐれもお忘れなくと言うと、悟空はにっこり笑い、城についたら本当のことをつきとめてみせますと約束したのでした。
唐を旅立ってから14年、やっと大天竺国のみやこまでたどりつきました。
今日は国王の公主が二十歳になったのを機に、十字路に彩楼を組み、その上から公主が綉球(まり)をほうり投げ、
あたった人を婿にするという撞天婚(とうてんこん)の行事があるため、見物人でまちはおおにぎわいです。
正午過ぎ、三蔵と悟空は通行手形のはんをもらいに行く途中、悟空の提案で撞天婚を見物することにしました。
城にいる公主は実はにせものでした。
十世にも渡り修行を積み、精をもらしたことのない三蔵と夫婦になって元陽の気(精液)を奪えば、太乙上仙になれると踏み、
今年の今月今夜、この刻限に三蔵が来ると知って、公主をさらい、自分がにせ公主になりすましていたのです。
ちょうど三蔵が近くにやってきたのを見つけると、にせ公主は綉球を三蔵の頭めがけて投げつけました。
綉球が当たった三蔵は王のもとへ連れていかれ、悟空は八戒と悟浄に知らせに戻ります。
婿になるハメになった三蔵、悟空にいわれたとおり、弟子たちに申し伝えたいことがあると国王に頼んで、悟空たちを呼んでもらうことにしたのでした。
第94回 〜婚礼の日くる。
国王のもとにやってきた悟空たち、それぞれ自己紹介します。
そこへ陰陽官がやってきて、婚礼の日どりが12日に決まったと報告します。
夜、皆で寝につき、まわりに人がいなくなると、三蔵はおまえのせいでこんなことになってしまったと悟空にお小言しきり。
悟空は婚礼の日になれば公主が出てくるから、そのときに妖怪かどうか判断すると答えます。
婚礼の日まで、三蔵は国王と詩などを楽しみ、弟子たちはごちそう攻めになったのでした。
そして婚礼の日、祝宴の前に公主が王に醜悪な弟子の顔を見たくないから、悟空たちをこのまちから出して欲しいとお願いします。
国王は承知し、三蔵らを呼びましたが、そのことは悟空の想定内。身を隠したまま、三蔵のそばにいるといいます。
さて、国王が通行手形に玉璽を押し、花押を書いて渡すと、悟空はくるりと身をひるがえし出かけようとします。
あわてて三蔵が悟空に追いすがると、悟空は目くばせしますが、三蔵は半信半疑でどうしても手を放そうとしません。
その様子はまことの別離そのもの。国王に促され、やっと三蔵は手を放しました。
悟空たちは城を出て、駅站(えきたん)に入ると、八戒と悟浄にここにいるよういい、蜜蜂に化けて三蔵のもとへ行きます。
そして三蔵の耳元まで這いよっていったので、ようやく三蔵も安心し、国王について後宮へむかったのでした。
第95回 〜にせ公主事件、解決。
後宮のあでやかな様子にも三蔵はまったく心を動かしません。
ややあって、皇后たちが公主を連れて国王をでむかえました。
公主からかすかな妖気がただよっているのを見破った悟空、三蔵に公主はにせものですと耳元でいいます。
せっかちな悟空は三蔵が止めるのも聞かず、正体を見せ、にせ公主をつかまえます。
するとにせ公主は悟空の手をもぎ離し、撞薬杵(とうやくしょ)を武器に戦い、半日はたったのですが、勝負がつきません。
そこで悟空が金箍棒をほうり投げ、変われっ!と叫ぶと、一本の棒が千本にもなったので、妖精は逃げていきました。
追いかけた悟空ですが、妖精が南の大きな山の洞窟にもぐりこんで見えなくなると、三蔵の身を案じ、天竺国へ戻っていきました。
悟空は国王と三蔵を正殿に行かせ、八戒と悟浄を呼んで三蔵を守るように言いつけると、ふたたび南の山へと行きます。
探しても妖精が見つからないのでイライラしてきた悟空、呼び出した土地神と山神から、この山は毛穎(もうえい)山で兎の巣穴が三つあるだけだと聞き出します。
二神と一緒にてっぺんにある兎の巣穴に行くと、石で入り口をふさいであり、妖精がなかに隠れていました。
また戦いになりましたが、だんだん勢いに押され、妖精は空へ逃げていきます。
日が暮れかかり、悟空が一撃のもとに殺そうとしたとき、天の高みから、「大聖、待たれよ、その棒、打ちおろしてはならぬ」 との声が。
ふりむくと、太陰星君(道教における月神)でした。
妖精の正体は、月で玄霜仙薬を撞いている玉兎で、本物の公主ももとは蟾宮(月)に住む素娥(嫦娥)が降生したもの。
素娥は18年前、玉兎にひとつ、ビンタをくらわせたことがあり、それを恨んで、玉兎は宮殿から逃げ出し、公主を荒野に捨てたというのです。
悟空はじかに説明してもらおうと、太陰星君や仙女、玉兎を国王のもとへ案内します。
国王をはじめ、皆が天を仰いで拝しているというのに、昔のこともあって八戒はむらむらと春情をもよおし、仙女に抱きつきます。
たちまち悟空が八戒をつかまえるなり、パパンとびんたを食らわせ、地上に引きずりおろしました。
太陰星君たちが月宮に帰ったあと、悟空は王に本物の公主の居場所を教え、翌日、寺にて感動の再会となりました。
悟空が百足は雄鶏が大敵だから、百脚山にとびきりでかい雄鶏を千羽放つように、また山の名前もとりかえたほうがいいと言うと、
国王は山の名前を 「宝華山」 と変え、住職に称号や俸禄を与えて、公主を救った恩に報いました。
城に戻ると、感謝の宴が6日ほど続いたのち、やっと三蔵一行は西方に進むことができたのでした。
第96回 〜霊山まであと八百里。
やがて春も終わり、初夏の頃、行く手にまた城(まち)が見えてきました。
ここは銅台府の地霊県というところで、このまちにいる寇員外という人はお坊さんを大歓迎すると聞いて、三蔵一行はそちらへ向かいます。
言われた屋敷へ行くと、門前に 《万僧を阻まず》 と書かれたお札がかかっており、主の寇員外は丁重にもてなします。
なんでも一万人のお坊さんに斎をさしあげようと24年前に願掛けしており、あと4人で満願というところに三蔵たち4人が来たというのです。
霊山まではあと八百里。寇員外は三蔵たちにひと月ほど滞在してもらい、満願祝いの法事をすませてから、籠で霊山までお送りすると申し出たのでした。
さて半月がたち、法事も終わると、三蔵は出発したがりますが、寇員外やその妻、ふたりの息子はあと半月おもてなししたいと引き止めます。
しかし三蔵が頑なに態度を変えず、出発するというのを聞いて、妻や息子は気を悪くし、ぷいと奥へ行ってしまいました。
ひと月ぐらいいればいいのにと八戒が文句を言ったり、三蔵がニヤニヤしている悟空に八つ当たりして緊箍呪を唱えたり、
その呪文だけはやめてくださいと悟空がひざまずいたりと、雲行きがあやしくなってきたのを見て、寇員外も引き止めるのをあきらめました。
翌日、盛大に送り出されて旅を再開した一行ですが、どしゃぶりの雨に見舞われ、おんぼろ家屋の軒下でつらい一夜を過ごすのでした。
第97回 〜寇員外、生き返る。
その雨の夜、寇員外の屋敷に盗賊が押し入りました。
そして哀願する寇員外を股間をひと蹴りすると、あわれ寇員外は死んでしまいました。
泥棒たちは雨のなか、西へと走り去って行きます。
なきがらにすがって泣くおかみはこれも三蔵が引き止めてもきかず、やむなく盛大に送り出したからこんな災禍をもたらしたのだとうらみ、
憎しみのあまり、三蔵たちをおとしいれてやろうという気を起こしました。
そこで息子たちに盗賊は三蔵たちだったと嘘をいい、それを信じた息子たちは訴状を書き、役所に名指しで告発します。
知事はただちに兵を150人集めると、西門から三蔵たち一行を追跡させました。
一方、盗品を配分しているところへ、三蔵一行が通りがかったので、こちらからも奪い取ってやれと盗賊たちは街道に立ちふさがりました。
しかし逆に悟空の定身(かなしばり)の法で動けなくなり、縄でしばりあげられてしまいます。
寇員外の屋敷から奪ってきものだと知ると、盗品を送り届けに行くことにし、盗賊たちは逃がしてしまいました。
すると賊を捕らえに来た官兵たちと出くわし、今度は三蔵たちがしばりあげられてしまいました。
知事の前にひったてられ、三蔵にあたま枷がはめられようとすると、悟空は受難が必要とはいえ、
これ以上、師匠をひどい目にはあわせられないと自分が罪をかぶります。
当然、悟空はそんなのへっちゃら。しめつける枷のほうが切れてしまいます。
やがて牢屋に入れられますが、獄卒たちがぶったたくものですから、三蔵はがまんしきれなくなって、金襴の袈裟を渡すことを承知します。
獄卒たちが騒いでいるのを聞きつけてやってきた役人は通行手形を検めて、三蔵たちは強盗じゃないと袈裟を返させました。
夜がふけ、悟空は牢屋から出るための準備をしに、ぶよに化け、外へ出て行きます。
そして寇家に行き、棺桶の上にとまり、寇員外の声色をまねて三蔵たちを牢から救い出すように言い、次は知事の屋敷で伯父に、
最後は役所で巨大な神の姿に化けて、知事と役人たちに三蔵を釈放するよう命じます。
翌日、寇兄弟は告訴を取り下げし、役人たちも釈放を求めてくるので、知事は白馬と荷物を返し、三蔵を釈放しました。
三蔵たちは寇家へ行くと、悟空が冥界へ行って地蔵王菩薩に寇員外の寿命を12年延ばしてもらい、生き返らせます。
知事はでたらめの告訴をした寇兄弟の罪を免じ、三蔵たちはにぎにぎしく見送られ、旅に出発したのでした。
第98回 〜西天に到着。
一週間ほど旅を続けたのち、ついに三蔵一行は霊山(りょうせん)のふもとにたどりつきました。
金頂大仙が出迎え、三蔵たちを沐浴させると、その日はふもとの玉真観にとまり、翌朝、金襴の袈裟をまとい出発します。
金頂大仙と別れ、霊山をのぼると、やがて激しい波が渦巻く川にぶつかりました。
凌雲渡(りょううんのわたし)という橋があるのですが、それは一本の丸太橋。
悟空はさっさと渡ってしまいますが、細いわつるつるすべるわで、他の者はとても渡れません。
そこへ宝幢光王仏が船頭をする舟が下流から近づいてきます。
舟は岸につきましたが、なんと底がありません。ぐずぐずして乗ろうとしない三蔵を悟空がぐいと舟に押し込みました。
水中に転がりおちた三蔵を船頭がひっぱりあげ、舟の上に立たせます。
水に濡れた三蔵、悟空に文句たらたらでしたが、悟空はそれにはかまわず全員のりこませ、舟は岸を離れます。
すると上流から死体が一つ流れてきました。びっくりする三蔵に悟空はにっこり笑って、あれはあなたです、といいます。
ほかの者もみなめでたいとはやしたてます。こうして三蔵は凡胎を脱したのです。
川を渡りきった一行は霊山のてっぺんを目指し、ついに雷音寺に到着。如来にまみえます。
釈迦は弟子の阿難と迦葉を呼び、斎を食させたのち、三蔵(天を談ずる『律』一蔵、地を説く『論』一蔵、鬼(もうじゃ)を済度する『経』一蔵)の
経三十五から数巻ずつ選んで与えるよう言いました。
三蔵らが食べたお斎は仙茶、仙果といった珍味ばかりで、正寿長生と脱胎換骨のごちそう。
食事がすむと、阿難と迦葉の二尊者は宝閣の門を開き、三蔵を案内するのですが、なんとそこで賄賂を要求します。
進物を用意していない三蔵に経を渡す気配がない二尊者の様子に業を煮やし悟空がわめくと、ようやく彼らは経を渡します。
受け取った経を馬に積むと、三蔵たちは山を降り、帰途を急いだのですが、なんと二尊者が渡したのは無字の経、白紙だったのです。
そのことに気づいた燃灯古仏は白雄尊者をつかわし、三蔵らに教えるべく、経を奪ってばらまきました。
白紙と知った一行が雷音寺に戻り、訴えたところ、如来は経は軽々しく手ぶらで受けるべきではないと答えつつも、二尊者に有字の真経を授けるよう言います。
そこで二尊者はふたたびあの宝閣へ三蔵たちを連れて行ったのですが、またもや進物を要求します。
三蔵がふと思いつき、皇帝からもらった紫金の鉢盂を渡すと、ようやく字が書いてある経を手渡します。
今度は一巻ずつ三蔵たちも中身を点検し、五千と四十八巻、数でいうと一蔵分のお経を受け取ると、如来にお礼を申し上げ、出立したのでした。
三蔵らが去ったあと、観世音菩薩が言うには、三蔵たちが旅した歳月は14年、すなわち五千と四十日であり、あたえた経巻の数に八日だけ足りない。
ならば、三蔵を八日のうちに東土へ帰らせ、ふたたび西天に戻らせれば、あたえた経巻の数もまっとうされる、とのこと。
如来はもっともだと、八大金剛を呼び、三蔵を東土へ送り届け、真経を伝えたなら西天に三蔵を連れて戻ってくるように、それを八日のうちに終えるべしと命じました。
金剛たちは三蔵たちに追いつくと、雲に乗せて唐へ向かったでした。
第99回 〜最後の一難を受け、九九の数を完うする。
三蔵を守護してきた護法の神々、お役ごめんを願い、観音に三蔵の受難を記した災難簿を渡します。
第1難、金蝉が俗界に落とされたこと。第2難、胎を出て殺されかかったこと。第3難、生まれて江(かわ)に棄てられたこと。
第4難、親を訪ねてうらみを晴らしたこと。第5難、城(まち)を出て虎にあうこと。第6難、坑(あな)に落ちて従(つれ)を失うこと。
第7難、双叉嶺でのこと。第8難、両界山でのこと。第九難、険谷(けんこく)にて馬を換えたこと。第10難、夜間に火に焼かれたこと。
第11難、袈裟を失却したこと。第12難、八戒を収伏したこと。第13難、黄風怪に阻まれたこと。第14難、霊吉に請い求めたこと。
第15難、流沙の渡り難きこと。第16難、悟浄を収得したこと。第17難、四聖の顕化せしこと。第18難、五荘観の中でのこと。
第19難、人参を活かし難かりしこと。第20難、心猿(ごくう)を貶とし退けたこと。第21難、黒松林ではぐれたこと。
第22難、宝象国に書を届けたこと。第23難、金鑾殿で虎に変わったこと。第24難、平頂山で魔に逢ったこと。
第25難、蓮花洞で吊るされたこと。第26難、烏鶏国で主を救ったこと。第27難、魔により化かされたこと。
第28難、号山にて怪に遭ったこと。第29難、風に聖僧を摂(さら)われたこと。第30難、心猿(ごくう)すら害に遭ったこと。
第31難、聖に請いて妖を降せしこと。第32難、黒河で沈没させたれたこと。第33難、車遅にて搬運したこと。
第34難、大勝負で賭けたこと。第35難、道(どう)を払い僧を興したこと。第36難、路で大水に逢ったこと。
第37難、天河に身を落とされたこと。第38難、魚籃が身を現じたこと。第39難、金[山+兜](きんとう)山で魔怪に遇うこと。
第40難、普天の神も伏し難かりしこと。第41難、仏に根源をお訊ねしたこと。第42難、水を吃して毒に遭ったこと。
第43難、西梁国が留め婚せんとしたこと。第44難、琵琶洞にて女難を受けたこと。第45難、心猿を再び放逐したこと。
第46難、�北猴(さる)を弁じ難かりしこと。第47難、火焔山が路を阻んだこと。第48難、芭蕉扇を求め取ったこと。
第49難、魔王を収め縛したこと。第50難、賽城で塔を掃いたこと。第51難、宝を取り僧を救ったこと。
第52難、棘林(きょくりん)で詩を吟じたこと。第53難、小雷音で遭難したこと。第54難、諸天神すら困惑したこと。
第55難、稀柿どう(行の間に同)で穢に阻まれたこと。第56難、朱紫国で医を行ったこと。第57難、国王の重病を治癒したこと。
第58難、妖を降し后を取り戻したこと。第59難、七情に迷わされたこと。第60難、多目に傷められたこと。第61難、獅駝で路を阻まれたこと。
第62難、魔王が三種に分かれた。第63難、城内で災厄に遇ったこと。第64難、仏に請い魔を収めたこと。第65難、比丘国で子を救ったこと。
第66難、真と邪とを弁じ認めること。第67難、松林で怪を救ったこと。第68難、僧房で病に臥せたこと。第69難、無底洞で苦厄に遭ったこと。
第70難、滅法国で行き難かりしこと。第71難、隠霧山で魔に遇ったこと。第72難、鳳仙郡で雨を求めたこと。第73難、武器を失ったこと。
第74難、釘(金へんに巴)(まぐわ)を慶ばんとしたこと。第75難、竹節山で難に遭ったこと。第76難、玄英洞で苦を受けたこと。
第77難、犀牛を追いかけ捉えたこと。第78難、天竺にて婚に招かれたこと。第79難、銅台府で監禁されたこと。第80難、凌雲渡で脱胎したこと。
観音は災難簿に目を通すなり、仏門では九九の数こそが真(まこと)に帰す。聖僧はまだ一難不足していると言って、
掲諦に命じて、金剛を追いかけさせ、もう一難追加させることにします。
掲諦は一昼夜かかって八大金剛に追いつき、耳もとで事情を話すと、八大金剛は三蔵たちを馬やお経もろとも地上に落っことしました。
落ちたところは通天河の西岸です。
悟浄は師匠はもう凡胎を脱したから神通力で渡したらと提案しますが、悟空は笑って、だめだといいます。
もちろん神通力を使えば簡単に越えられるのですが、悟空には師匠の九九の災難がまだ一難のこっていること、これはそのためだと知っていたのでした。
川べりを歩いていると、突然声が聞こえました。 行きのときに通天河を渡してくれた白い海亀(第49回参照)です。
老いた海亀の背にのり半日あまり、東岸のすぐそばまで近づいてくると、海亀は以前、
三蔵にお願いしたことを尋ねてくれたかと聞きましたが、三蔵はすっかり忘れていました。
そこで返事に窮してしまうと、海亀はその意味を悟り、尋ねてくれなかったのを知ると、いきなり水中にもぐってしまいました。
三蔵たちは河に投げ出され、びしょぬれになって東岸にたどりつきました。
岸で濡れたものを片付けていると、いきなり一陣の狂風が吹いてきました。 天地はまっくらになり、雷鳴がとどろき、石や砂が舞い上がります。
三蔵と悟浄はお経の包みをしっかり抱えこみ、八戒は馬の手綱を握り締め、悟空は両手で金箍棒をぶんまわしながら、左右の警戒にあたっています。
実はこれはお経を奪おうとする陰魔のしわざなのでした。
ひと晩じゅう荒れたあげく、夜明けになって、とうとう奪うことができないまま行ってしまい、雨風は止みました。
お経や衣服を乾かしている三蔵のもとへ、以前子供を救われた家の者がやってきます。(第47回参照)
しきりに招待するので、三蔵は日干していたお経を片付けようとしたのですが、何巻かが石にくっついてはがれず、経巻の末尾のほうが破れてしまいました。
ひどく後悔する三蔵に、悟空はもともと天地は欠けたところがある不全なもの。この経巻もその不全の妙に応じただけだと笑って答えます。
招かれた三蔵たちですが、いまや俗世間の食べ物には欲を失っており、八戒でさえ、すぐにお椀を置いてしまいました。
その後、子供たちを助けてくれた恩に報いるために建立した寺を見学したり、三蔵の塑像が美形なことに三蔵が上機嫌になったりしているうちに夜になりました。
夜更けになると、三蔵一行はこっそりと出ていきます。
そして東を目指して歩き始めたとき、空から八大金剛の声が聞こえ、風に乗って唐へと向かうのでした。
第100回 〜五聖、証果を得、悟りに達する。
八大金剛に従い、師弟4人は一日もたたないうちに唐の都、長安にやってきました。
長安の城外に立てた高楼にたまたまやってきていた皇帝は、三蔵たちが雲からおりたったのを見つけ、すぐさま出迎えました。
三蔵がむかし住んでいた洪福寺では出発するまえに三蔵が言ったとおり(第12回参照)、何本かの松の木がいっせいに梢を東に向けていました。
宮殿で経巻を皇帝に捧げると、三蔵は問われるままに、経巻を手にいれたいきさつを話し、弟子たちと白馬を紹介します。
通行手形を返し、宴が開かれ、日が暮れるころ三蔵一行は洪福寺に帰りました。
松の梢が東を向いた話を聞き、三蔵もよろこびでいっぱい。弟子たちも落ち着きはらい、その夜は皆ぐっすりと眠りました。
あくる朝、太宗(皇帝)は御弟(三蔵)へのねぎらいの意をあらわした文、『聖教序』 を三蔵に見せ、三蔵も皇恩に感謝するのでした。
真経を誦してほしいとの皇帝の言葉に、三蔵は真経を天下に伝えたいのであれば、副本をつくり、原本は秘蔵されるようにといい、皇帝はすぐに写本作りを命じます。
そして長安のなかで一番清浄な寺院である鴈塔寺に行き、三蔵が真経を誦そうとしたそのとき、空中に八大金剛が姿をあらわし、西天に帰るよう高らかに呼ばわります。
すると三蔵たち師弟四人は白馬もろとも跳びあがり、天空を飛びつつ去っていってしまいました。
ふたたび霊山に戻ってくると、往きと復りでぴったり八日以内でした。
如来は証果をみとめて、三蔵を栴檀功徳仏とし、悟空を闘戦勝仏、八戒を浄壇使者、悟浄を金身羅漢、白馬を八部天龍馬としました。
そして霊山のうしろの崖下にある化龍池に白馬を突き落とすと、馬は金鱗の龍となり、池を跳びだすや、祥雲を踏まえて�薦天華表柱(天を捧げもつ巨大な装飾的石柱)に
巻きついたので、諸神はひとしく如来のみごとな法力に賞賛の声をあげたのでした。
ところで、仏になったんだから 『鬆箍呪』 を唱えてくださいと悟空にいわれた三蔵、あのころはこうでもしないとお手上げだった。
しかし今はそんなものはなくて当たり前。さわってごらんと答えます。
悟空が手であたまをさわってみると、なるほど、金箍はなくなっているのでした。
こうして三蔵たちは証果を得て、悟りに達し、白馬もまた本来の姿に戻りました。
如来の説法を聞きに集まっていた諸神はみなみな合掌し、帰依を願い、声をそろえてとなえるのでありました。
「諸尊菩薩摩訶薩 摩訶般若波羅密」
(理知による完成の状態・智慧により、この世に存在するものはすべて『空』であるという認識に到達した悟りの境地をいう)
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