降臨の日――
翼ある隣人たちは召命によって聖なる御使いとなり
神々の威光を地の果ての果てまでも届けた
神々は万物の源たる光たちを求め
より強くより偉大な存在たらんと欲した
そして幾千幾万の夜が過ぎ
世界は神々の加護のもと――
永遠へと向かう静穏のうちにあった・・・
― 第1話 目覚め ―
「この村にも とうとう御使いが・・・!」
空を見つめ、フィールはつぶやいた。
村と裏山のあいだに広がる小さな森。
声に宿る深刻な響きに、ドロシーは兄を見上げたあと、その視線を追って空を見つめた。
低い雲がたれこめる空。
村の上空に鳥の群れらしき影がいくつも舞っている。
木を伐りに森に入ったフィールと、お弁当をバスケットにいれて持ってきた妹のドロシー、
そしてドロシーによく懐いて、始終一緒にいる赤猫のトト。
この3人(二人と一匹)のところから直接村は見えない。
だがフィールの灰色の瞳は雲を切り裂き、一直線に村へ降りていく御使いの姿をはっきりととらえていた。
先頭をいくひときわ大きい影のあとをやや遅れて小さい影たちが続く。
穏やかに人が営みを続ける辺境の村。
豊かな緑に隠されたこの村は幸運にも、いままで御使いの探索の手を逃れていた。
しもべを従えて人里に降り立っては神の名のもとに10歳から15、6歳ぐらいの子供を残らず連れ去っていく御使いたち。
抗っても神の鎧に守られた彼らに人の力は通用しない。
いくたびもの抵抗のあとに、そのことを身をもって思い知らされた人間は
いつしか憎む気力さえなくし、あきらめと絶望に沈むしかなかった。
「どうして・・・?
どうして神さまのお使いがこんなひどいことするの?」
ドロシーのあどけない声が下から問いかける。
何かあったら裏山に逃げるんだよ・・・
ドロシーもまた、物心つくころから何度何度も繰り返しおばさんに言い聞かされてきた。
いつもは優しいおばさんがそのときだけは表情がこわばっていて、とてもたいへんなことなんだと分かったから
そのたびに神妙にうなずいていた。
おばさんだけじゃない、村の人たちみんなが、いつ来るか分からない彼らの影にいつもおびえていた。
雲の影が落ちる、木々が風に鳴る、そんなささいなことにも不安げに視線を向ける大人たち。
その様子は敏感な子供たちの心にも不安を植えつけ、村全体を重苦しく包んでいた。
「ドロシー! 裏山に逃げるんだ!」
「え・・・? お兄ちゃんは・・・?」
フィールは村のほうへ視線をめぐらした。
うすい煙が数本上がっている。
逃げ惑う村の人たちの様子が目に浮かび、恐怖におびえる声、混乱に逃げ惑う足音さえ、風にのって聞こえるような気がする。
ぼくたちが今こうして穏やかに暮らしていられるのは村の人たちのおかげだ。
物心つくまえに両親を失ったぼくたち兄妹をあたたかく受け入れてくれた優しい人たち。
そして唯一の肉親である妹のドロシー。
守るんだ! フィールは斧をぎゅっと握り締めた。
「ぼくは 村のみんなを助けに行く!」
「そんなのダメだよ!
あぶないよ!
お兄ちゃんも一緒に逃げようよ!」
いっぱいに見開いた瞳を不安にうるませてドロシーは叫んだ。
もしも何かあったら・・・
そう思うだけで胸がつぶれそうになる。
それにお兄ちゃんだってまだ15歳。行ったらきっとさらわれてしまう。
「ドロシー・・・」 フィールはかがみこんだ。
「大丈夫だよ。
ぼくは特別だって知ってるだろ?」
安心させるように笑って見せた。
エテリアがふわりふわりとふたりのまわりに漂ってくる。
「ほら。エテリアが守ってくれてる。
だから心配しないで」
「でも・・・ でもっ!」
今にも泣きだしそうな顔でドロシーはかぶりを振った。
金色のおさげ髪がふるふると揺れる。
フィールはドロシーの肩に手を置くと、優しくさとすように言った。
「あいつらを追い払ったら すぐ迎えに行くよ」
つぶらな瞳がじっとフィールの瞳をのぞきこむ。
「・・・約束だよ?」
「ああ。 約束だ!
トト おまえもドロシーを守ってやってくれよ」
「ニャ〜〜〜!」
「ふふ・・・」
まるで話を理解しているかのような鳴き声に、思わず頬がゆるんだ。
「ドロシーちゃーーーん!!!」
「なにしてんだよ!
早く逃げようぜ!」
顔を向けると、村のほうからドロシーと同じ年ぐらいの女の子と男の子が息を切らして走ってきた。
ここは裏山までの逃げ道の途中にあたる。
「お兄ちゃん・・・」
心配そうに見上げたドロシーにフィールは力強くうなずいてみせた。
「さ・・・行くんだ!」
「・・・うん・・・」
数歩走ったあとで、ドロシーは振り返った。
「お兄ちゃん!
約束破っちゃダメだからねっ!」
「ああ!」
力強い返事を残し、フィールは村に駆け戻っていく。
その後ろ姿にドロシーは両手の指を固く組み合わせて祈らずにはいられなかった。
「お願い・・・エテリアさんたち!
お兄ちゃんを守って!」
「ニャ!!」 ラジャ!というふうにトトが短く鳴いて、突然フィールのあとを追って走り出した。
「あっ!! トト!?」
ドロシーがあわててつかまえようと手を伸ばしたが、間に合わない。
「待ってトト! どこ行くの!?
トトーーーっ!!」
いつもなら呼べばすぐそばに寄ってくる赤い姿はみるみる遠ざかっていった。
フィールは村に続く小道を疾走した。
両側に緑が茂る小道を包むさわやかな空気は村に近づくにつれ、ものの焼ける匂いが漂ってくる。
煙は充満し、炎の爆ぜる音がだんだん大きくなる、
それがさらにフィールの足を急がせた。
大きな石のアーチが見えてくる。 村の入り口だ。
ひどい・・・ 視界に飛びこんだ惨状に、フィールはなすすべもなく立ち尽くした。
「・・・・・・どう・・・・・・して・・・・・・」
無意識に声がもれる。
家々は炎に包まれ、黒い煙がもうもうと立ちのぼっている。
うすい煙が村全体を漂い、もやがかかっているように視界をおおっていた。
あちらこちらで村の人たちが倒れている。
起き上がろうともがく身体。うめく声。
「どうしてこんな事を!!」
村の中央、井戸の近くに立つ銀色の後ろ姿に向かって叫んだ。
「ぼくたちが何をしたって言うんだっ!?」
不思議と怖さは感じなかった。
それは初めて見る御使いが全身を銀色の鎧で覆われているものの、人の形をしていたからかもしれない。
化け物ではなく、言葉の通じる人の姿。
右足のひざから下が青い光に包まれていて目をひく。
井戸のそばにたたずむ御使いは振り向くことなくフィールの問いにこたえた。
声がくぐもってはいるが、凛とした女性の声だった。
「これは神々の御意志だ。
おまえたち人間が詮索することではない。
それよりも・・・・・・
おまえは・・・・・・いったい何者だ?」
ゆっくりと振り向く。鋭い眼差しがフィールを射た。
「ただの人間がなぜエテリアを支配している?」
「えっ・・・・・・?
・・・・・・ぼくは・・・・・・支配なんかしていない・・・・・・」
あたりを漂うエテリアがふわふわとフィールのそばによってくる。
胸に手をやり、フィールは言った。
「エテリアたちがぼくに力を貸してくれてるんだ」
「なに・・・・・・?
そうか・・・・・・
神々がお探しなのはおまえかもしれんな・・・・・・
少し・・・・・・試させてもらうぞ」
「・・・・・・え・・・・・・?」
手にした杖をすっと持ち直すといったん後ろに重心をかけ、反動をつけるように前へ足を踏み出した。
!! 瞬時に加速した銀色の姿が目の前にせまる。
瞬きする間もなかった。それでも身体がとっさに反応した。
ガキン! 重い衝撃が斧を伝わって全身を走り、大きく後ろに弾かれたが、なんとかこらえた。
目の前に構えた斧が御使いの一撃を防いだのをフィールは信じられない面持ちで見つめていた。
ふたたび距離をとった御使いの悠然たる声音が耳に響く。
「ほう・・・・・・
なかなか良い動きをする。
このアルミラの技から逃れるとはな」
腰に手を当て、今度はゆっくりと歩いて近づいてくる。
銀の鎧に覆われて表情はまったく知れないが、声には楽しむふうな雰囲気があり、余裕を感じさせた。
「ア・・・・・・アルミラって・・・・・・
まさか・・・・・・ OZ(オズ)のアルミラ!?」
「OZを知っているのか?」
近づいてくる足どりに気圧されるかのようにフィールは一歩、また一歩とあとずさっていった。
それでも視線はそらさない。
「う・・・・・・噂で・・・・・・聞いた事がある・・・・・・
神々の御使いの中で最も優れた三人・・・
それがOZだと・・・」
声がかすれている。
ふっ 見透かしたようにアルミラはわらった。
「おまえは・・・・・・それを知っていてなお私の前に立つのか?」
落ち着き払った低い声。
アルミラの足取りは変わらない。
くっ! 心に押し寄せる恐怖を振り払い、フィールは両手で握り締めた斧を正面に構えた。
それを見てアルミラはぴたりと足を止める。
無言のまま対峙する二人のあいだに緊迫した空気が張りつめていた。
御使いの背後ではいまだ衰えない炎が建物を包み、黒い煙を吹き上げ、
ひときわ大きく爆ぜる音とともに柱を失った家が崩れ落ちた。
「ここで私を引きつけておけば その間に村の者が逃れられる
・・・・・・というわけか?」
静かな口調がかえって恐れを助長させる。
レクスの鎧が炎の光を受け、赤みを帯びて鈍く輝いた。
「・・・・・・愚かな・・・・・・
だがそういう愚かさは好ましくもある」
鎧の奥の眼が少年を見据えた。
「殺しはしない。
おまえを神々のもとへ連れて行く事に決めたからな。
ただし・・・・・・ 五体満足ですむかどうかは・・・・・・」
杖の先端がゆっくりと弧を描いた。
「おまえ次第だ!」
言葉が終わるや否や銀色の姿が揺れた、と思った刹那、すでに眼前にいた。
速いっ! さっきよりも格段にスピードが増している。
そのとき風を切り、横から赤い光がフィールの前に飛び込んだ。
「なにっ!?」
叫んだのはアルミラだった。
まさか自分の攻撃をさえぎるものがいるとは思ってもいなかったのだろう。
大きく背後に飛びのいた身体は空を舞い、流れるような青い光の軌跡を描いて井戸の横に降り立った。
フィールは目を見開いて、パタパタと音がするところを見上げていた。
彼に背を向けて飛んでいる、見慣れた姿。
赤いもったりとした身体にこうもりに似た羽根が生えている。
「トト!?」
「エテリアの声を聞け!
為すべき事を教えてくれる!」
羽根を羽ばたかせ、ゆっくりと振り返りながらそう言ったのは間違いなく飼い猫のトトだった。
「な・・・・・・しゃべった!?
そ それに・・・・・・おまえ
そのハネは・・・・・・!?」
手を伸ばしかけたフィールを苛立った声が一喝した。
「ええい! おれサマの事などどうでもよいわ!
さっさと言われた通りにせい!
妹御との約束を破る気かっ!?」
っ! はっとしたフィールは目を閉じ、心をすませた。
ぽうっ 心にあたたかい光がともる。
感じる。小さいころからずっとそばにいてくれたエテリアたち・・・
「・・・・・・なんだ・・・・・・?」
異変に気づいてアルミラが構えをわずかに下げた。
渦をまくようにフィールを中心にエテリアが集まっていく。
固唾を呑んで見守るアルミラとは対照的にトトは満足げだった。
「そうだ・・・・・・
それでよい!」
エテリアの流れに身を委ねるように広げたフィールの右手から斧がすべり落ちるのとほぼ同時に
くるりと体を回転させてトトがフィールの胸に飛び込んでいく。
ぶつかる直前赤い光と化した姿はそのままフィールのなかに吸い込まれ、
光を受け入れた上半身がはじかれたようにがくんとのけぞった。
光輪が全身に広がるのにあわせて右ひじから先をレクスが覆い、服のすみずみにまで赤い光が満ちていく。
レクスに覆われた右腕を振ると斧状の大剣が手に握られていた。
その手を頭上に掲げ、ごく自然な動作で2、3回、試すようにまわしてみる。
赤い光の尾を引きながら刃がなめらかに風を切った。
軽い・・・。こんな大剣など持ったことはないのに、まるで違和感がない。
フィールは剣を肩に構えると、すっとアルミラに対し半身になって身構えた。
「あれは・・・・・・レクスか!?
バカな!!
人間がなぜ・・・・・・!?」
アルミラは思わぬ成り行きに動揺を隠せなかった。
心の内を言葉にしてさらしてしまったのは、人間がレクスを使う、その驚きだけではない。
似ている・・・
ふいに頭のなかで警鐘が鳴り響いた。
これ以上は危険だ。速やかに任務を執行せよ。
くっ! アルミラは迷いを断ち切るように杖を一振りし、臨戦態勢に入った。
鋭い金属音をあげ、レクス同士が激しくぶつかりあう。
赤いレクスの刃は今度は確実にアルミラの一撃を受け止めた。
フィールも攻撃に転じるが、むやみに剣を振っても巧みにかわされるか、杖で防がれてしまう。
剣を大振りした隙をつき、アルミラが大きく跳躍した。
「行くぞ!」 声とともにすさまじい連撃が青い光弾となって降り注ぐ。
間一髪かわしたフィールの横で、木組みの簡素な井戸の屋根がこっぱみじんに飛び散った。
アルミラの攻撃を受け止め、幾度となく追い込まれることで彼のなかに眠っていた天賦の才が目覚めた。
見切った! 身体が勝手に反応したと思えるほど無意識に攻撃の瞬間をとらえ、勢いをそのままに跳ね返す。
反動で体勢を崩したわずかな隙を逃さず、剣を振りきった。確かな手ごたえがあった。
「うわぁぁぁぁー!!!」
直撃を受けて吹き飛ぶアルミラの脳裏をよぎったのは、自分の影。
純白の羽根が舞い、甲高い音を立てて粉々に砕ける。
そして意識が光に飲まれた。
「う・・・
くう・・・っ」
「・・・目がさめた?」
さきほどまで戦っていた少年がのぞきこんでいた。
「・・・っ!?
・・・おまえは・・・知っているのか?」
はっとして起き上がったアルミラはレクスの鎧をまとっていないことに気がついた。
おそらく意識を失ったときに装甲が解除されてしまったのだろう。
瞬時にあたりに目を配ったが、周囲の状況はたいして変わっていない。
どうやら気を失っていたのはほんのわずかな間だったようだ。
「エテリアたちが教えてくれたんだ。
神々に操られていたんだろう?」
間近で見た少年は幼さが残っているものの、灰色の瞳は穏やかだった。
アルミラは立ち上がると黒いコートのすそを軽く払った。
「・・・操られていた・・・というのとは・・・少し違うな・・・
私の行動を決めていたのは あくまでも私の意志だった・・・
ただ・・・神々に忠誠を尽くす事が至高の善だと思い込まされていただけだ・・・
そして・・・神々の命じるまま人々を支配し・・・弾圧し・・・この手に・・・かけ・・・
くっ!!」
美しい顔が自責の念にゆがみ、顔を背けた。
黒い眼帯で左目はうかがえないが、右の目が耐え切れないように強く瞑られる。
「・・・・・・・・・・・・」
フィールは押し黙ったまま見つめていた。
本当に憎むべきなのは神々であって、彼女たち《御使い》ではないというのはわかってはいたが、
この村の惨状を見ると、何も言えなかった。
「・・・・・・・・・ふ・・・
すまない・・・
被害者ヅラができる立場ではなかったな・・・」
自嘲気味に嗤ったアルミラは、あらためてフィールに顔を向けた。
「・・・おまえは・・・私たち以上にエテリアと深いつながりを持っているようだ・・・
本当に・・・何者なのだ?」
普通の人間にはエテリアを見ることすらできないはず・・・
そればかりか神の呪縛を解放しうる力を持つ少年。
疑問がつのるばかりだが、目の前の少年は静かに首を振った。
「ぼくにもわからない。
物心ついたころにはもうエテリアの声が聞こえていたから・・・」
「カテナでは・・・ないんだな?」
「カテナ?」
「そうか・・・」
確認するような問いに逆に問い返されて、アルミラは小さく息をはいた。
「人間たちはもうカテナの事など忘れてしまったかもしれんな・・・
カテナとは・・・人に似た姿でありながら人ではない別の種族・・・
人よりも遙かに長い寿命を持ち エテリアと交感する事ができる者たちだ・・・」
「それは・・・あなたたち・・・御使いの事じゃないのか?」
「その通りだ・・・
御使いとは即ちカテナ・・・
いや・・・カテナのなれの果てと言った方が正確だろうな・・・」
「え・・・!?」
驚くフィールにアルミラは淡々と語った。
「かつて 我々カテナは・・・人間たちと共にあり
助け合って暮らしていた・・・
だが・・・何百年か前のあの日・・・
神々の呪いによって御使いに変えられてしまったのだ!」
「っ!?」
「それ以来・・・我々は神々の手足となって人間たちを苦しめて来た・・・
自分がカテナであった事も忘れて・・・な・・・」
「そう・・・だったのか・・・」
自虐的な笑みがふたたび浮かび、消えたあと、アルミラは落ち着いた眼差しを向けた。
「たった今・・・
おまえはその呪いを解いてくれた。
おかげで私は・・・カテナに戻れたわけだ。
礼を言わなければな・・・」
「いや そうじゃない・・・」
フィールは真顔で言った。
「ぼくは・・・あなたの攻撃を受け止めるだけで精一杯だった・・・
あなたを助けたのはエテリアたちだよ」
「いや・・・
今ならば私にもわかる。
エテリアが私を解き放ってくれたのはおまえがそれを望んだからだ」
「そう・・・かな?」
照れたような笑顔に、張り詰めていたアルミラの表情が少しだけゆるんだ。
「おまえは・・・それだけエテリアに慕われているのだな・・・
神々の目的は本当におまえかもしれん・・・」
ふと少年の顔が疑問のそれに変わった。
「さっきもそんな事を言ってたけど・・・
神々がぼくを探してるってどういう事なんだ?」
「おまえと同じくらいか・・・
もう少し下の年齢までの子供をかき集めろという神命が出ている。
あれは恐らくおまえを探し出すための・・・
・・・いかん!」
急にアルミラは大声を出すと、厳しく遠くを見やった。
「村の者たちはどこに避難している!?
裏山か!?」
「そ・・・そうだけど・・・?」
戸惑った声にアルミラは低く告げた。
「この村に来た御使いは私一人ではない。
他の隊は・・・おそらく・・・」
「!?」 彼女が言わんとすることを察した瞬間、フィールは裏山に向かって駆け出していた。
「待て! 少年!!
どうするつもりだ!?
少年っ!!」
アルミラの鋭い声が背後に響く。