城下でも激しい戦いが繰り広げられていた。
そこに明智光秀と決着をつけた小十郎さんが馬で駆け込んできた。

「突入なりましたな」

猿飛佐助も巨大な手裏剣を手に、塀の上から天主を見上げる。

「頼むぜ、真田の旦那! 独眼竜!」


「朱雀翔! どわっ!」

「たわけがっ!!」  幸村さんがはじき飛ばされたところへ、ショットガンが火をふく。

「War Dance!」  それを政宗さんの刃がはじき、そのまま信長に突っ込んでいく。

すさまじいスピードで生まれたいくつもの風の刃が巨大なかまいたちとなって襲い掛かるが、それも信長には通じない。

「失せろっ!!」  深紅のマントが生き物のようにひるがえる。

「うわっ、ぐっ!」

はじき飛ばされ、壁を突き破った政宗さんの体は、屋根瓦の上をすべり落ち、ようやく止まった。

「う、うう・・・」  すぐに身を起こすが、押さえたわき腹は血で濡れている。

今の衝撃で傷口が完全に開いてしまったのだろう。

「ぐぉっ!」  指先まで完全に覆う鋼の小手が迫り、政宗さんの体が宙に浮いた。

すぐ目の前に降り立った信長は右手一本で政宗さんのあごに手をかけ、高く持ち上げている。
 
「戯れは終わりぞ。
分をわきまえぬ愚行狼藉、死して報いよ!」

信長は政宗さんを宙吊りにしたまま、尖った親指の先端を左目に突きつけた。
隻眼が見開かれる。

「ふっ! 残りの眼(まなこ)も抉り出してくれよう」

「やってみやがれ・・・、オレの目は牙を剥いて噛みつくぜ」

相当苦しいに違いない。声がかすれていた。

「政宗どのーっ!」

幸村さんが天主から飛び降りてくる。
政宗さんを右手で持ち上げたまま、信長は左手でショットガンを撃った。
着地したところに発砲され、幸村さんは後ろに飛びのく。

「弱きものはすべて滅される。それが現(うつつ)よ。悔いて散れい」

下でも戦いは続いていた。
城内から外に向けて、銃弾が容赦なく降り注ぐ。

「あいも変わらず味方もろともか」

馬を駆る小十郎さんと行き違うように、一軍が突進する。

「浅井か、死に急ぐんじゃねえ!」

小十郎さんの声もむなしく、突撃していった浅井軍が鉄砲隊の餌食になる。
そのとき、上空に何かが現れた。
雲を切り裂き降りてきたそれは、鉄砲隊がひそむ城の一部を破壊し、煙を上げながら空を飛び回る。

「あれはっ!?」  小十郎さんが空を仰ぐ。

「忠勝どのーっ!」

連合軍のなかから声が上がった。


「っ・・・う、ううっ」

兜が滑り落ち、屋根瓦の上には、わき腹から滴った血が溜まっていた。
手から六爪が滑り落ちる。

「政宗・・・殿っ! っ!?  本多、忠勝・・・殿?」

ガンダム・・・じゃなかった、徳川軍の武将、戦国最強と言われる本多忠勝が幸村さんの背後にゆっくりと降り立った。
信長も振り向く。

「竹千代の鎧めがっ! 死に損なったか」

先の合戦で破損した満身創痍の状態のまま、本多忠勝はまっすぐ織田信長に向かっていった。

「忠勝殿ーっ!」   幸村さんが叫ぶ。

「歯向かうもの、すべて滅すっ!!」

政宗さんを投げ捨て、信長は本多忠勝に向けてショットガンを放った。
あまりの銃撃のすさまじさに、幸村さんはひとつ下の屋根へ飛びうつる。

「卑怯なり、織田信長! 砕けた鎧の裂け目ばかりを狙うとは!」

駆け出そうとする幸村さんの腕を誰かが掴んで引きとめた。

「無駄に、するんじゃねえ・・・
アイツの姿をその目に・・・、焼き付けろ」

「あっ!」  

腕をつかんでいる政宗さんのわき腹からは、手で押さえても止めようのない大量の血が流れていた。
幸村さんはうつむいた。が、冷静さを取り戻したようだった。
それを察して、政宗さんは手を離す。

「本多、殿・・・!」  幸村さんは顔を上げて、戦いを見守る。

「戦国最強とは片腹痛し! 塵芥と帰せーいっ!」

本多忠勝の攻撃をかわし、至近距離で大きく破損した鎧の穴に向け、銃口が火をふいた。
皆が戦いの手を止めるほどの大爆発が起こり、爆風が吹き荒れる。
それがおさまったあと、幸村さんはまばたきもせず屋根の上を凝視した。

「忠勝、殿・・・! 存分にねぎらってやってくだされ、家康殿」

爆煙が薄れゆくなか、破壊された天主の頂点に悠然と立ちあがったのは織田信長だった。
銃口がめくれあがり、使い物にならなくなったショットガンを投げ捨てる。

「っ!」

幸村さんの肩に手をかけ、政宗さんは立ちあがった。
支えた幸村さんは、自分のはちまきをほどくと、政宗さんの手と刀をきつくゆわえつけた。

「オレはあと一撃が限界だ」  信長を見据えながら、政宗さんは刀を構える。

「おまえが決めろ」

「この命に代えても!」

「この期に及んでまだ足掻くとは。我が覇道に逆らう賢しき虫どもよ」

城の外では、前田慶次の話に応じた四国の長宗我部と、安芸の毛利軍が魔王討伐に動き出していた。
東西の勢力がここ、安土に集結している。

「奥州筆頭、伊達政宗! 推して参る!」
「武田軍、真田源次郎幸村! 我が胸の炎、消えることなし!」

「うおーっ!!」

「はぁっ!」

強烈で無慈悲な魔王の一撃に、ふたりは宙高くはじき飛ばされた。
信長は天頂を見上げた。

「我は落ちぬ。我行くは覇の道。
 天下に武をしくなり」

夜始まった戦いは、明け方が近くなる頃、勝敗を決しようとしていた。
西の協力を取り付けた前田慶次が馬を駆って乗り込んでくる。

「前田!」

「よう、竜の右目! 話は後だ! 加勢するぜっ!
 最後の祭りだ! ちょいと通るよ!」

織田軍に突っ込み、超刀を一閃すると、兵たちを吹き散らす。

「邪魔だ!」  西海の鬼と呼ばれる、長宗我部元親も空から勢い良く乗り込んできた。

「沈むがいい!」  日輪を思わせる円刀を華麗に操るのは、智将で名高い、毛利元就。

それだけではない。
今まで織田の配下に甘んじていた加賀の最強夫婦、前田利家、まつ、も参戦していた。
小十郎さん、猿飛佐助、上杉のくノ一、かすが・・・
全員の思いが空高く打ち上げられた、政宗さん、幸村さんに力を与える。
ふたりは空中で目を見開いた。決してあきらめない、強い意思を宿した目。

「Last shot だ、真田幸村!」

「心得申した、政宗殿!」

上空から渾身の一撃を振り下ろす。

「燃えよ! 燃えたぎれ!」
「Rest in peace!」

三者の雄叫びと気がぶつかりあう。
拮抗する力が逆巻くなか、ついに魔王の剣が折れ、安土城は大きな爆発に包まれた。

「散ずるは、黒禍つ。
 下天の内に満ち満ちて、永劫現を貶めん。
 是非も無し」

仰向けに横たわった信長は天を見つめ、不敵な笑みを浮かべたまま、光のなかに消えていった。
政宗さんを支えながら、幸村さんが瓦礫となった城から姿を現す。
ほら貝が吹き鳴らされ、歓声があたりを包んだ。
山から朝日が昇り、みんなを照らす。
それは闇の脅威が去ったことをすべての者に告げているかのようだった。


TOP      MENU      NEXT



(おまけ1 : アニメ版のつづき)

第六天魔王、織田信長は安土城に没した。
織田家の滅亡により、ふたたび戦乱の世は開かれ、諸国の群雄は新たなる天下取りの戦いへと名乗りを上げていった。

それから後、傷が癒えた武田信玄、上杉謙信が川中島で刃を交えている。
そこへ奥州へ退いた伊達政宗がふたたび軍を率いてきた。

「幸村よ、行くが良い!」

「はっ!」

信玄公の声に真田幸村は駆け出す。

「久しぶりだな、真田幸村」

「このときを待ちわびていた。独眼竜、伊達政宗! いざ、尋常に勝負!」

「上等だ。最高の気合いを入れて、オレを楽しませてくれよ」

ふたりの歩みが速くなり、互いに向かって駆け出していく。

「Get up! Ya-Ha!」

「燃えよ、我が魂!」

(戦国BASARA弐に続く)


<おまけ2・・・伊達政宗の英語セリフの訳や意味など>

Last shot    (最後の一撃)

Rest in peace! ・・・ 普通は、安らかに眠れ、ですが、この場合は、くたばれ! みたいな感じかと(^^;

Get up!    (始めようぜ!)