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西遊記あらすじ 第41回〜第50回
ものすごく省略しています。興味があったら、ぜひ本を読んでみてください。 |
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第41回 〜紅孩児の放つ三昧の真火に悟空、死にかける。
悟空と八戒は、三蔵をさらった紅孩児がすむ洞窟、火雲洞(かうんどう)へとやってきました。
さっそく三蔵を蒸かして食おうと子分らにきれいな水でごしごし身体を洗わせていたところに、唐僧をとりかえしに来たという知らせを聞いて、
紅孩児は子分らに命じ、入り口に小さな車5台を押してきて、金、木、水、火、土の五行にしたがってならべました。
そして自分は火尖槍(かせんそう)を手に門前へと出て行きました。
悟空が親類づきあいがあるというのを聞いて、紅孩児はカンカン。 父親の牛魔王と義兄弟の契りをしたといっても信じません。
戦いになりましたが、悟空ひとりに手柄を立てさせないとばかりに八戒も打ちかかってきたので、いったん退散します。
洞窟の入り口まで戻ってくると、紅孩児は小さな車の一台の上に立って、片手で火尖槍をかざし、もう片方をげんこつにして、自分の鼻を二度たたき、呪文を唱えます。
すると口から炎が噴きだし、鼻から煙が立ちこめ、あっというまに焔の海になりました。
五台の車からも焔が出ています。洞窟の入り口さえも見えなくなり、悟空らは火から脱出しました。
それを見届けると、紅孩児は火をおさめ、洞内にもどり、ぴたりと門を閉じました。
あの火をどうするか相談していると、悟浄が五行の相生相克の理を用いれば、水は火に剋つ道理だといったので、悟空は東海龍王のもとへ行き、
弟たちも集め、雨をふらせてもらうことにしました。
そうしてふたたび戦いを挑みましたが、雨では紅孩児の三昧の真火を消すことはできません。
それどころか身体中に煙火をあびてしまった悟空、すぐさま谷川に飛びこみ、火気を消そうとしましたが、逆にあおられて心臓を侵し、魂がからだから飛び出てしまったのです。
あわてて四海龍王は八戒と悟浄を呼び、川上から流れてきた悟空の死体を悟浄が岸に抱き上げます。
悟浄は目に涙をいっぱいためますが、八戒は笑って、悟空は72の変化の術を心得ているから、72の生命を持っているはずと按摩禅法をほどこします。
すると悟空、「お師匠さま!」 と叫び、パッと目を開けました。
龍王らにかえってもらったあと、観音様に頼むしかないと悟空が言い、八戒が南へと飛び去っていきました。
一方、紅孩児は悟空がまた援軍を頼むかもしれないと見てみたところ、八戒が南の観音菩薩のもとへ行くのが見えました。
あたりを熟知している紅孩児は、近道を通って八戒を追い越すと、観音の姿に化けて待ち伏せしたのです。
にせものと見破れず、八戒が観音について火雲洞に入ると、まちぶせていた子分たちにとらえられてしまいました。
不吉な風を感じ、痛みをこらえて様子を見にいった悟空、金ぴかのふろしきに化けて洞窟の中に入りこみ、今度はハエに化けました。
紅孩児が老大王に、唐僧をふかして召し上がっていただこうとお招きするのを聞いて、悟空は門を出て行った子分のあとをつけて洞窟を離れていきました。
第42回 〜紅孩児、観音に金箍を嵌められる。
紅孩児が招いた老大王とは牛魔王だと察した悟空、先回りして狩りをしている牛魔王に化け、火雲洞へ招かれます。
今日は精進料理の日だからなまぐさものを食べないという牛魔王に、紅孩児はうそくさいと勘付き、質問をして悟空が化けたものだと見抜きます。
一筋の金光と化して逃げ出した悟空、いつのまにか痛みもひいており、観音のもとへ向かいます。
潮音仙洞にいた観音は浄瓶のなかの甘露水なら三昧の真火を消すことができるといい、木叉を呼ぶと、
父親である托塔李天王から36口(ふり)すべての天�奘刀(てんごうとう)を借りてくるように命じます。
さっそく木叉は天�奘刀1セットを借りてくると、観音はそれを空中に放り投げ、千枚の花びらからなる蓮台に変え、そこに座します。
山に着くと、観音は山神らを呼び出し、生類を避難させたのち、浄瓶の水をあけました。すると水が勢い良く流れ出ます。
また浄瓶から楊柳の枝を抜きとり、甘露水をふくませてから悟空の左手に「迷(ミー)」の字を書くと、ここまで紅孩児をおびきよせてくるようにいいました。
悟空は左手をにぎったまま紅孩児に戦いを挑み、退散しておびきよせると、げんこつをほどきます。
すると紅孩児はボーッとなってやみくもに追いかけてきたのでした。
蓮花の台座に座す観音のもとまで悟空を追いかけてきた紅孩児ですが、観音が無視するので、槍でついたところ、観音は空の高みへ逃げてしまいました。
悟空も一緒に上から様子を見ていると、紅孩児は空になった蓮の台座に腰掛けました。
それを見て、観音が楊柳の枝を下に向け、消えよ!と一言言うと、なんと紅孩児は刀のきっさきに座っていたのです。
木叉が降妖杵(こうようしょ)で刀の柄を叩くと、きっさきが紅孩児の腿に突き刺さります。
手で刀を抜こうとすると、観音はまたも楊柳の枝を下に向け、「�却(オーン)」の呪文を唱えると、刀の先が釣り針のように曲がり、抜けなくなりました。
ここにいたって紅孩児は命乞いをし、これ以上悪さをしないから仏門に入れてくださいとあわれな声で訴えます。
観音は紅孩児を善財童子と呼ぶことにすると、刀を抜き、木叉に返してくるよういいました。
紅孩児の足にはかすり傷ひとつありません。痛みが消えるなり、紅孩児は槍をつかみ、観音の顔めがけて突き刺そうとしました。
すると観音は、取経僧を探しに東土へいくとき、如来から賜った金の箍を袖から取り出して、
金、緊、禁の三つの箍のうち、緊は悟空に、禁は守山大神(第17回)に嵌めてあるが、この金箍をこいつにやろうと、「変われっ」と叫びます。
すると金の箍が5つになり、それを投げつけ、「嵌まれっ」と叫びますと、紅孩児の頭と両手両足にぴったり嵌まりました。
第43回 〜黒水河を渡る。
観音が呪文をやめると、紅孩児に嵌められた金箍の痛みもおさまります。
からかう悟空に紅孩児が槍で突きかかると、観音は今度は 「合わせよっ」 とひと声。
すると両方の手のひらが胸の前でぴったり合わさり、なんとしても離れません。
もはやこれまでと、紅孩児はようやく降参し、善財童子として観音の弟子となったのでした。
観音とわかれ、悟浄とともに火雲洞に向かった悟空は三蔵と八戒を助け出しました。
そして西天目指して洞窟を出発して、1ケ月あまり。一行は黒水河のほとりにやってきました。
そこへやってきた小舟に三蔵と八戒がのせてもらいますが、なかほどまで来たとき、狂風がおこり、舟は水中に没してしまいます。
実はこの船頭は黒水河にすむ化けものだったのです。
異変に気づいた悟浄が水にもぐって探しにいくと、あずまやがあり、門の外には「衡陽峪(こうようこく)黒水河神府」と大きな字で書かれています。
悟浄が戦うものの、決着がつかず、負けたふりをして外におびきだし、悟空にやっつけてもらおうとしましたが化けものは追ってきません。
戻ってきた悟浄と悟空が化けものの正体について、あれこれ話していると、黒水河の河神が現れて、
あの化け物は西海龍王の甥で、神府をのっとられてしまったので助けてほしいといいます。
さっそく悟空が西海龍王のところに出かけると、途中、西海龍王宛ての文をもった使いとばったり。
使者を殺し、文を奪うと、それを持って西海龍王のもとへのりこみます。 事の次第を説明すると、龍王はひらあやまり。
龍王が説明するに、甥は妹の9番目の息子で、父親は雨を降らす量と時刻を違えたために魏徴によって処刑されたと�杷河龍王(第9回)とのこと。
妹は住む場所がなくなったために、この水晶宮に身をよせ、甥が路頭に迷わぬよう、龍王は黒水河で修行させることにしたのでした。
西海龍王は太子の摩昂(まこう)につかまえてくるよう命じ、摩昂は軍隊を引き連れて出陣。
黒水河のいとこを捕らえ、悟空の前に引っ立てていったあと、龍王の裁きを受けさせるために連れて帰ることになりました。
三蔵と八戒も、悟浄と河神に無事に助け出され一件落着。 水府を取り戻した河神が上流の水をせきとめ、黒水河を渡ることができたのでした。
第44回 〜僧たちの受難 ― 車遅国 ―。
早春の景色を眺めつつ進む三蔵の耳に突然、人々がわめいているような大音声が耳に入りました。
悟空が様子を見に行くと、大勢のお坊さんが建築資材を積んだ車をかけ声をあげて、いっせいに引っ張っているのでした。
どうやら、坊さんたちは道士たちにこき使われている様子。
そこで悟空は旅の道士に化け、見張り役の道士に話を聞くことにしました。
ここは車遅国(しゃちこく)。20年前、国がひどい旱魃にあったとき、天から3人の仙人(道士)がくだってきて国を救ったので、王は仙人たちと縁を結び、
そのときに雨を降らせられなかった坊さんを仙人の下働きにしたとのこと。
今度は坊さんたちのほうへいくと、夢のなかで神さまが、もうすぐ斉天大聖が来て我々を救ってくれるという話を聞いて、悟空は心中にっこり。
見張りの道士を殺して、五百人の僧を解放したのでした。
悟空においついた三蔵たちは逃げないで残った僧たちと勅建智淵寺へ行き、宿をとることにしました。
夜、悟空は八戒、悟浄とともに道士たちの星祭りに行くと、狂風をまきおこし、強制的に散会させたうえ、
悟空は元始天尊、悟浄は霊宝道君、八戒は太上老君の像に化け、並んでいたごちそうを食べつくしてしまいました。
しかし忘れ物を取りに来た道士が転んだ拍子に鈴を粉々に壊してしまったのを見て、八戒がこらえきれずに大笑い。
おどろいた道士は3人の老道士に報告し、みなで曲者を探しにやってきました。
第45回 〜大仙と雨乞い勝負。
3人の仙人、虎力(こりき)大仙、鹿力(ろくりき)大仙、羊力(ようりき)大仙ら道士たちが来るのを察し、悟空らは像に化け、じっとしております。
曲者の姿こそないものの、供え物が食べ尽くされているのを不思議に思った道士たち、これは天尊たちが降臨されたに違いないと拝みます。
お祈りがやまないため、像に化けた悟空は聖水と称して、おしっこを渡しますが、それを飲んだ大仙の言葉に見破られたと思い、自らばらして飛び去っていきました。
翌日、通行手形をもらいに国王に謁見した三蔵たちのもとに大仙らがあらわれ、昨日のことをまくしたてたので、国王は三蔵らを死刑にしようとしますが、
雨乞いのお願いに村の長老らがやってきたので、大仙と雨乞い勝負をすることになりました。
最初に虎力大仙が雨乞いします。すると雲が広がってきましたので、悟空は空にのぼり、雨をふらせようとやってきた龍王らを止め、自分の合図のときにふらせるよう言います。
そういうわけで大仙は雨を降らせず、続いて三蔵の番となります。
三蔵がお経をとなえ、その後、悟空が棒で合図すると雨が降り出しました。
しかも悟空の呼びかけに応じ、四海の龍王が空に姿を現したので国王は大喜び。
後日、感謝の祭礼を行うことを約束して、それぞれの海へ帰っていただいたのでした。
第46回 〜三人の大仙 VS 三蔵&悟空
悟空の手腕に国王は通行手形に御璽を押し、三蔵一行を旅立たせようとしますが、3人の大仙はひきとめて、別の勝負を申し出ます。
まず虎力大仙が、五十脚のテーブルを積み上げ、手や梯子を使わず上にのぼり、座禅するという雲梯顕聖(うんていけんせい)で勝負します。
こらえ性がない悟空に座禅は無理なので、三蔵が座禅することになり、悟空が三蔵をつかんでテーブルのてっぺんに乗せました。
なかなか勝負がつかないのに業を煮やして、鹿力大仙が後ろの短い毛を抜き取って南京虫に変え、三蔵にかみつかせます。
それに気づいた悟空、南京虫をとってやり、お返しとばかりにムカデに化けると、虎力大仙の鼻をちくりを刺しました。
たまらず大仙はころがりおち、座禅勝負は三蔵の勝ちとなりました。
今度は鹿力大仙が隔板猜板(かくばんさいばい)で勝負を申し出ました。
板で隔てて、そのむこうに隠しているものを当てるというもので、さっそく国王は皇后に朱塗りの唐櫃に何か宝ものをいれさせました。
悟空が羽虫になって唐櫃のなかをのぞいたところ、中身はひとかさねの皇后用装束。
悟空はそれをもちあげ、くしゃくしゃにすると、舌の先を噛んで出てきた血をひと口、プッと吹きかけて、おんぼろの釣り鐘マントに変えてしまいました。
さて、当てる段になって、鹿力大仙は皇后用装束といいますが、三蔵はおんぼろの釣り鐘マントだと答えます。
中身が本当に釣り鐘マントだったのですが、それが宝のはずがないということで、今度は王自ら桃を入れました。
また悟空がのぞきに行ったのですが、大好物の桃だったので、種を残してきれいに食べてしまいました。
羊力大仙が桃ひとつといえば、三蔵は桃の核だけだと答え、開けてみたところ、国王自ら桃を入れたのに確かに種だけになっています。
虎力大仙が出てきて、三蔵がべつのものに取り替える術を使っているといい、ものではなく人をというので、今度は子供の道士を入れました。
悟空は師匠の虎力大仙に化け、子供をいいくるめて、道士ではなく和尚の格好にさせてしまいます。
虎力大仙が子供の道士だといいますが、唐櫃から何も反応はなく、三蔵が和尚だというと、和尚の格好をした子供が念仏を唱えながら出てきました。
勝負がつき、今度こそ旅出させようとする王様に、虎力仙人はさらに命をかけた勝負を申し出ます。
大国師(虎力大仙)との勝負は首を斬っても平気かどうか。ここからは悟空が勝負を受けて、まず首を斬られたあと、その首を蹴飛ばされます。
首を斬られても悟空のからだからは血は一滴もでません。
それどころか、首よ来い、と胴体から声が聞こえるものですから、鹿力大仙は呪文をとなえ、土地神に悟空の首を押さえつけさせました。
さすがにあせった悟空、伸びろと叫ぶと、胴体から頭が生えてきました。
次は大国師の番。首を切って転がしたのも、血が出ないのも、首よ来い、と叫んだのも同じです。
ですが悟空、にこ毛を赤犬に変化させ、転がっている首をくわえ、お濠に投げこんでしまいました。呼べども首はきません。
悟空と違い、頭を生やすことができない大国師、ついに赤い光を発して倒れてしまうと、首なしの虎になっていました。
次は二国師(鹿力大仙)の番。腹を割いても平気だというので、悟空が先に腹を割き、自分の内臓をていねいに手入れして元に戻します。
続いて二国師が内臓をとりだしたときに、悟空はにこ毛を餓えた鷹に変化させ、鹿力大仙の五臓六腑をつかみ、飛び去っていきました。
内臓をなくしてしまった死骸を見れば、白い雄鹿。
最後は羊力大仙で、煮えたぎった油の釜に入浴するといいます。
悟空は先に入ると、まるで泳ぎをしているかのように楽しんでいます。
続いて三国師(羊力大仙)が釜に入りましたが、悟空が手をつっこんでみると、煮えたぎっているはずの油が冷え切っています。
どこかの龍王が大仙を護っていると考えた悟空、空中に跳びあがり、北海龍王を呼びつけ、さんざんののしりました。
驚いた龍王は、あの冷龍は羊力大仙がつくったものだと説明し、冷龍をつかまえて、海へ去っていきました。
護ってくれていた冷龍を失った羊力大仙は煮えたぎった油釜のなかでもがき、死んでしまいました。
第47回 〜天竺までちょうど半分、通天河へ到着。
3人の大仙を失った国王が泣いていると、悟空が、あれは虎、鹿、羚羊の化け物でいずれ国王を殺し、国を奪うところだったと説明します。
たしかに死骸は黄虎と白鹿で、油釜のなかに残っていたのは羊の骨だったと聞いて、国王はやっと目が覚め、三蔵たちに感謝したのでした。
ふたたび旅を始めた三蔵一行、いつしか春がすぎ、夏は終わり、秋の気配となりました。
通天河(長江の上流)という巨大な川が行く手をふさぎます。
その川べりに立つ三蔵たちの耳に法事の音が聞こえ、音を頼りに三蔵たちは一夜の宿を借りるべく、民家をめざしました。
その家の者がいうには、ここは唐から五万八千里。ちょうど天竺までの半分の距離です。
法事はこれから死ぬ者のための追善供養だと妙なことを言うので、話を聞いたところ、
通天河にいる霊感大王なるものに男の子と女の子をいけにえにささげなければならないとのこと。
そこでごちそうになったお礼に、悟空と八戒が子供に変化して、代わりにいけにえになることにしました。
やがて外から銅鑼や太鼓の音がうるさく聞こえ、村人たちが悟空らが化けたいけにえの子供をかつぎだしていきました。
第48回 〜三蔵、霊感大王にとらえられる。
子供に化けた悟空と八戒を、村人たちは霊感大王廟にかついで行きました。
そして祈りを捧げ、帰っていきます。
やがて風とともにやってきた妖怪、にこにこして答える悟空を不思議に思います。
先に女の子のほうから食べようと手を伸ばすと、八戒が正体をあらわし、いきなりまぐわで打ちかかりました。
武器を持っていない妖怪は通天河のなかへ逃げ込んでしまったので、悟空と八戒は家に戻っていきました。
一方、逃げ帰った妖怪は三蔵のことを知り、つかまえようと、雪をふらせ、通天河を凍らせることにしました。
三蔵が凍った河を渡ろうとまんなかほどまで来たときに、氷を割って師弟もろとも手にいれようという作戦です。
やがて河はすっかり凍り、妖怪の目論見どおり、先を急ぐ三蔵は氷の上を渡ることにしました。
氷の下で待ち受けていた妖怪、馬の蹄の音が聞こえてきたので、神通力を使って氷を割ります。
びっくりしてとっさに空中に跳びあがった悟空以外、みな水中に落っこちてしまいました。
三蔵はとらえられ、石の箱に閉じ込められましたが、かつて天の川の八万の水兵を統括していた天蓬元帥である八戒や、
流沙河にいた悟浄、西海龍王の息子である玉龍(白馬)は水についてはお手のもの。
荷物を回収し、東岸にあがると、民家にもどっていったのでした。
そして家の者に白馬の世話を頼むと、悟空、八戒、悟浄は武器を手に、師匠を探し妖怪をとらえようと川辺へと出かけていきました。
第49回 〜観音、妖怪をつかまえ、三蔵一行、通天河を渡る。
水のなかが苦手な悟空ですが、八戒、悟浄とともに通天河にもぐります。
やがて海�蹉之第(うみがめのやしき)と書いてある楼閣が出現しました。
門のなかには水がないので、悟空が蝦に化け、なかに入っていきます。
なかでは三蔵を食べる相談をしており、奥御殿の石の箱のなかに閉じ込められた三蔵がおんおん泣いていました。
無事を確認した悟空は門の外にいる八戒と悟浄に、ふたりで戦って勝てそうになければ水の外におびきだすようにいい、先に水から出ていきます。
八戒が門前で師匠を返せと叫び、悟浄も加え、3人で死闘を繰り広げますが、なかなか勝負がつきません。
八戒は悟浄に目配せをして負けたフリをして逃げ出しました。
それを追って妖怪が水面から頭を出したところに、悟空が棒を振り下ろします。
妖怪は悟空の攻撃を持ちこたえることができず、水にもぐり、水府に逃げ帰ってしまいました。
水府で、悟空が五百年前に天界で大暴れした混元一気上方太乙金仙(たいおつきんせん)の美猴(びこう)王斉天大聖で神通広大、変化多端と聞くと、
八戒がまたケンカを売りにきても、門をぴたりと閉じ、石や泥で塗り固めてしまい、応じようとしません。
八戒と悟浄はあきらめて、悟空に相談しようと戻っていきました。
悟空は観音に化けものの正体を聞こうと、普陀山(ふだせん)へ行くと、観音は竹林で何かをしているので待っているようにとのこと。
待っている間、善財童子(紅孩児)がやってきて、いつぞやかはお世話になりましたとおじぎします。
待ちきれずに竹林に入った悟空ですが、竹ひごを小刀で削っている観音に待っているよういわれ、しかたなく外で待つことにします。
やがて観音が竹籃(たけかご)を手に出てきて、悟空が何もいわないうちから、すぐに唐僧を救いに行こうといいました。
通天河に到着すると、観音は襖(うわぎ)をむすぶ打紐をほどいて、竹籃にゆわえ、川のなかに籃を投げこみます。
そして、「死せる者は去れ、生ける者は留まれ」 と唱えながら籃を引き上げると、なかには光り輝く金魚が入っていました。
この金魚が霊感大王の正体だったのです。もとは観音の蓮花池で飼っていた金魚が満潮にまぎれて逃げ出したとのこと。
今朝、金魚が池にいないのに気づいた観音が占ってみたところ、妖怪になって三蔵を殺めようとしているのを知り、霊力をめぐらして竹籃を編んでいたのでした。
話を聞いた悟空は、観音さまの尊顔を拝ませてやりたいとお引き止めし、八戒が村の前で大声を張り上げます。
皆がひざまずき礼拝するなか、絵のうまい者が観音のお姿を写したのですが、それが魚籃観音の現し身なのです。
観音が南海へとかえったあと、八戒と悟浄が三蔵を助けにいき、無事に皆とご対面です。
霊感大王の脅威がなくなり、子供をいけにえにする必要がなくなった村の者たちがこぞって舟を作るなか、川のなかから、私が渡してさしあげますと大きな声がしました。
驚く村人たちのまえに、川のなかから巨大な白い甲羅をもつ老いた海亀が現れました。
海亀が言うには、海�蹉之第(うみがめのやしき)はもとは自分のすみかだったが、九年前、津波の潮流にのって霊感大王なる化け物がやってきたとのこと。
悟空のおかげで水府をとりもどすことができたと感謝します。
三蔵一行を甲羅の上にのせて通天川を渡りきった海亀は、礼をしたいという三蔵に、西天に到着したおりには仏祖に、
いったいいつになったらこの甲羅から抜けだして人の姿になれるか、一言たずねていただきたいとお願いします。
三蔵がこころよく承知すると、海亀は水中深く去っていきました。こうして通天河を渡ることができたのです。
第50回 〜悟空、独角�臥に如意棒を奪われる。
時はすぎ、厳しい冬のころ、行く手にまたも大きな山が現れました。
寒さにこらえ進んでいくと、山あいに楼閣を見つけました。しかし悟空がみたところ、凶雲や妖気がうずまいています。
腹ぺこだという三蔵のため、悟空は托鉢に行きますが、地面にまるを描き、ここから出ないように言ってから出かけました。
悟空がなかなか戻ってこないのでじりじりしだした三蔵、先に行こうと言う八戒の言葉にのってしまい、まるから外に出て、楼閣に行ってしまいました。
楼閣には誰もおらず、八戒がずかずかと二階へあげっていくと、象牙のベッドに真っ白な骸骨が横たわっていました。
その近くにチョッキが3枚あったので、八戒はそれを持って三蔵のところへ行きます。
寒いからこれを着ようという八戒を三蔵は返すようしかりつけますが、八戒と悟浄は悟空がくるまでの間だけと羽織ってしまいます。
するとふたりは倒れ、両手を後ろに縛りあげられてしまいました。 実はこれは魔王が人を捕まえるためにつくったワナだったのです。
3人に気づいた魔王は楼閣の幻を片付けると、白馬もろともつかまえて、洞窟に連れていきました。
一方、悟空は戻ってきたものの、三蔵たちの姿がありません。
見ると、あの楼閣は消え失せているではありませんか。 急いで西へと追いかけますが、だんだん気持ちが落ち込んできました。
そこへ老翁に化けた山神と童僕に化けた土地神が現れ、この山は金[山+兜](きんとう)山といい、山のなかには金[山+兜]洞があり、
そこには独角�臥大王が住んでいる。 それが三蔵らをさらった犯人だと教えてくれます。
飯が入った紫金(しこん)の鉢盂を預け、悟空は金箍棒を手に三蔵を救いに行きました。
洞門の外で声を張り上げると、独角�臥大王が点鋼槍(てんこうそう)という槍をかつぎ出てきて、戦いになります。
しかし決着がつかず、「さすが天界をさわがせただけのことはある」 と魔王が悟空の棒術をほめれば、悟空も相手の槍さばきの見事さをほめたたえます。
魔王が槍の穂先で地面をついて合図し、子分たちにいっせいにかからせると、悟空は棒を空に向けて放り投げ、「変われっ!」 と一声。
すると一本の棒が何千本もの棒に変じ、それが乱れ落ちてきたものですから、子分たちはたまらず、命からがら洞窟に逃げこんでいきました。
しかし魔王はせせら笑い、袖から光る輪を取り出し、空にほうり投げ、「当たれっ!」 と叫びました。
するとたちまち、何千もの金箍棒をもとの一本にするや、それを奪い取ってしまったのです。
武器をなくした悟空は命からがら逃げ出しました。
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