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西遊記あらすじ 第51回〜第60回
ものすごく省略しています。興味があったら、ぜひ本を読んでみてください。 |
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第51回 〜悟空、金箍棒を取り戻す。
敵に武器を取られて敗退した悟空、山かげにへたりこみ、ぽろぽろ涙をこぼします。
しばし悲嘆にくれておりましたが、冷静さを取り戻すと、戦っていたとき、「さすが天界をさわがせたことはある」 と言っていたことを思い出し、
それを知っているということは、天界から下界にくだったものにちがいないとあたりをつけて、天界にさぐりに行きました。
玉帝に謁見し、満天の星すべてを調べましたが、下界を慕って地上に降った星の神将はいません。
そこで玉帝は、悟空が援軍として選んだ托塔李天王と�犠[口+�芦](ナタ)太子たちに妖魔を退治するよう命じました。
まず先陣をきって、ナタ太子が魔王に挑みます。
6種の武器をぜんぶ放り投げて、「変われっ!」 と叫ぶと、それぞれの武器が千にも万にも増え、空中を埋め尽くします。
ところが魔王が例のピカピカに光る白い輪を空めがけてほうり投げ、「当たれっ!」 と叫ぶと、ナタ太子の武器をまとめて奪ってしまいました。
武器を失ったナタ太子は逃げ帰ります。
武器はあの輪っかに取られてしまうということで、今度は火攻めでいこうと火徳星君を連れてきました。 しかし火攻めの武器を奪われ、失敗。
次は水攻めしようと水徳星君に頼み、黄河の水伯を呼び、洞窟に水を注ぎこみましたが、魔王はあの輪を取り出すと、第二の門で水を防ぎとめてしまいました。
もうがまんできなくなった悟空、徒手空拳でのりこめば、魔王も槍を放し、拳術でやりあいます。
ふたりは洞窟の前でぽかぽかやっていましたが、悟空が身外身の法を使い、自分のにこ毛から小ザルを作り出すと、魔王は例の輪を取り出しました。
そして小ザルをもとのにこ毛に戻すと、それも奪ってしまったのです。
悟空はあわてて逃げ出し、勝利をおさめた魔王は洞窟に戻っていきました。
もうあの輪っかを盗むしかないということで、悟空が蠅に化けて、中に入り込みますが、例の輪はみつかりません。
しかし壁にたてかけられていた金箍棒を見つけると、それを手に正体を現し、洞窟から跳びだしていきました。
第52回 〜�臥大王、老君にとらえられる。
悟空は追ってきた魔王とふたたび戦いますが、日が暮れかかってくると、魔王はまた明日と、洞窟に戻って門を閉ざしてしまいました。
戻ってきた悟空を托塔李天王らは、まことに天に斉(ひと)しいと、その武術をほめそやします。
魔王が疲れている今がチャンスと、悟空はこおろぎに化けて、ふたたび洞窟にもぐりこみました。
ふと見ると、着物を脱いだ魔王の左腕にあの白い輪っかが嵌めてあるではないですか。
しかしぴっちり腕に嵌めてあり、盗むことはできません。そこで悟空はほかの部屋を見てみました。
取り上げられた武器や自分のにこ毛があるのを見つけ取り戻すと、火攻めの武器で洞窟内を焼いて、外に出ていきました。
魔王は例の輪っかで火を消してまわりましたが、子分のあらかたは焼け死んでしまいました。
悟空の仕業だとわかった魔王、夜が明け、ふたたび戦いになると、またもやあの輪で全員の武器をまとめて奪ってしまいました。
こうして勝利をおさめた魔王は、洞窟に引き上げていったのでした。
またもや武器をとられた悟空は、あの化け物の正体をさぐるため、今度は如来に聞きにいくことにしました。
悟空の言葉に耳を傾けた如来はすぐに化け物の正体を知りましたが、それを教えることなく、とらえるために十八羅漢をつかわすことにしました。
悟空が魔王をおびきよせ、羅漢が十八粒の金丹砂を降らせると、魔王の足もとが砂に埋まっていきます。
しかし魔王はなんとか足を抜くと、あの輪を取り出し、砂までも奪い取ってしまいます。そしてそのまま洞窟へ帰ってしまいました。
羅漢から、太上老君に妖怪の本性を尋ねれば難なく捕らえてくれると聞き、悟空は離恨天なる兜率宮へ向かいます。
なかに入りこみ、見回すと、牛小屋のそばで牧童が眠り込んでおり、青牛がいなくなっています。
牧童は落ちていた丹を拾い、のんだところ、7日間眠っていたとのこと。
�臥大王の正体は、李老君の金剛琢を盗んで逃げた青牛でした。
なんでも奪う白い輪っかは、かつて真君と戦っていたときに老君が悟空の脳天に放り投げた輪だったのです。
芭蕉扇を手にした老君とともに戻ってきた悟空は、いわれたとおり魔王をおびきだします。
そこへ山のてっぺんから太上老君の声がし、自分の主人がバレた魔王はびっくり。
老君が呪文をとなえ、芭蕉扇でひとあおぎすると、魔王は例の輪を投げてよこし、もういっぺん扇ぐと、魔王は正体をあらわし、一頭の青牛になりました。
老君は金剛琢に仙気をふきかけ、牛の鼻輪にして手綱を通すと、青牛にうちまたがって去っていきました。
そのあと悟空たちは洞窟へ攻めこみ、それぞれの武器を取り戻し、三蔵らを救出したのでした。
洞窟をあとにし、街道へ出ると、道端から呼び止める声が。いったい誰の声なのでしょうか。
第53回 〜三蔵、妊娠する。
声の主は悟空から紫金の鉢盂を預かった山神、土地神でした。
悟空の描いたまるから出たばっかりに、�臥大王のまる(輪)にさんざん苦労したと知った三蔵、これからは悟空の言うことを聞こうと感にたえぬ様子で感謝します。
鉢盂には何日か前のごはんが入っていましたが、山神たちがあたためてくれたおかげで、おいしく食べることが出来ました。
そして時は過ぎ、早春の頃。
目の前に小川が流れ、澄み切った水を見てのどが渇いた三蔵と八戒はその水を飲みました。
しばらくするとふたりは腹が痛いと言い出し、腹がどんどんふくらんでいきます。
家を見つけたずねたところ、ここは西梁女人国といって、女ばかりの国。
三蔵と八戒が飲んだ小川は子母河(しぼが)といい、その河の水を飲むと妊娠してしまうのでした。
それを聞いた三蔵は色を失いますが、ここから南の解陽山の破児洞という洞窟にある落胎泉の水を飲めばおろすことができると教えられます。
ただ何年か前に如意真仙と名のる道士がやってきて、水をひとり占めしているので、お金やたっぷりの手土産が必要なのだとか。
さっそく悟空が水をもらいにいきますが、その真仙、悟空の名を聞くや烈火のごとく怒り、如意鉤をつかんで門から飛び出しました。
実は真仙は牛魔王の弟で、聖嬰大王(紅孩児)の叔父だというのです。
戦いが始まったものの、真仙は悟空の敵ではありません。
しかし水をくみあげようとすると鉤で足をひっかけるので、悟空はいったん助っ人を呼びに戻っていきました。
悟浄と一緒にもう一度やってくると、悟空が戦っているすきに、悟浄が水をたっぷりくみあげます。
悟浄が水を手に入れたことを知った悟空は、真仙の鉤を4つ折りにして地面にたたきつけ、引き上げていきました。
三蔵と八戒が悟浄が持ち帰った水を飲むと、腹が鳴り、なんべんかくだしたあと、ふくらんでいた腹がすこしずつもとに戻っていきます。
こうして元通りになった三蔵と八戒。残った水をその家の老婆にあげ、出発したのでした。
第54回 〜三蔵、女王に求婚される。
西梁女人国の都にたどりついた三蔵一行。男が来たということで、通りは大騒ぎです。
駅停に宿をとり、女官に通行を許可してもらいたい旨伝えると、女官が女王に報告します。
報告を聞いて女王は大喜び。唐朝の御弟である三蔵を婿に迎え、国王になってもらおうと内大臣を使いに出します。
三蔵は辞退したい様子でしたが、悟空が受けるフリをして、通行手形に印をもらい、
見送りにきたときに女王たちを定身の法を使って金縛りにしたほうがよいとすすめます。
悟空のいうことがもっともだったので、三蔵はしかたなく言われたとおりにし、迎えに来た女王の車にのります。
祝宴がすみ、女王が通行手形に玉璽を捺し、花押にて署名すると、三蔵は城外まで弟子たちを見送りたいと申し出ました。
そして西のまちはずれまでくると、車を降り、自分も西へ旅立つ旨伝えます。
そのとき道端からひとりの女が飛び出してきて、一陣の風を巻き起こし、三蔵をさらっていってしまいました。
第55回 〜三蔵、純潔をまもる。
三蔵をさらっていったつむじ風を追って、悟空たちが探しまわっていると、高い山のなかで不気味に光る青い石が目につきました。
うしろには石の門があり、毒敵山 琵琶洞と書いてあります。
悟空が蜜蜂に変じて、中に偵察に行くと、花園のまんなかの東屋で、女怪が泣きはらした三蔵に言い寄っています。
その様子を見た悟空、じっとしていられず、もとの姿を現すや女怪と戦いになり、ふたりは洞窟の外へ出て行きました。
八戒が加勢に来たのを知り、女怪は術を使って火や煙を出し、三叉のさすまたをぶんまわします。
なかなか勝負がつかないとみるや、女怪はひらりと跳びあがると、馬さえ倒してしまうほどの毒の杭を悟空の脳天に突き刺しました。
あまりの痛さに悟空は逃げ出します。すると八戒も撤退。女怪は戻っていきました。
夜になり、誘いにのらなければ女怪に殺されてしまうかもしれないと考えた三蔵は臥所にいきますが、女怪に迫られても心を動かしません。
ついに女怪は怒りだし、子分たちに三蔵を縄でぐるぐる巻きにさせると、廊下に引きずり出してしまいました。
夜が明け、頭の痛みがおさまった悟空は八戒と一緒に女怪を倒しにいきます。
しかし今度は八戒の唇をぐさりと突き刺したので、八戒は逃亡。悟空も敗走し、勝利をおさめた女怪は洞窟に戻っていきました。
悟浄のところへ戻ってきた八戒と悟空。
3人して弱りきっていると、南の山のほうから野菜をかついでくる老婆の姿が見えました。
老婆の正体が魚籃観音だとみやぶった悟空、あの女怪はさそりの精で、武器の三叉のさすまたは二本のハサミ、突き刺したのは、しっぽにある倒馬毒という鉤、
そしてあれをつかまえるのなら昴日(ぼうじつ)星官にお願いするといいと教えてもらいます。
そこで悟空は東天門の光明宮へひとっとび。星官を連れて戻ってきました。
星官が八戒と悟空の刺されたところにプッと息をふきかけると、毒はすっかり抜け、痛みにうなっていた八戒は大喜び。
悟空と八戒が女怪をおびきよせ、昴宿を呼ぶと、星官は正体を現しました。
なんと鶏冠(とさか)ふたつを頭にいただいた巨大な雄鶏だったのです。
雄鶏が女怪にむかってひと声叫ぶと、琵琶ほどもある巨大なサソリの正体を現し、もうひと声叫ぶと、全身にしびれがまわり、死んでしまいました。
星官が帰ったあと、皆そろって洞窟に入り、三蔵を助けると、一行はまた西天への道をたどることになったのでした。
第56回 〜悟空、ふたたび追放される。
夏がめぐってきました。旅を続ける三蔵の前に、いきなり30人ほどの追いはぎの一味がとびだしてきました。
悟空にあとをたくした三蔵、馬に跳びのるや、悟空のことなど見向きもせず、馬に鞭をあて、一目散に逃げていきます。
やがて追いはぎに取り囲まれた悟空がふたり殺してしまったのを知ると、途端に三蔵は不機嫌になってしまいました。
死者を弔い、経を読むものの、その内容は恨むべきは悟空であって、自分と間違うなというもの。
皆、それぞれにすっきりしない気持ちを抱えながら先へ進みました。 しばらくすると、ひなびた屋敷がみえます。
そこの主人と話をしているうちに、この家の息子が追いはぎの一味であることを知ります。
夜、息子が帰ってきて、かたきが自分の家にいることを知ると、仲間を呼びましたが、それに気づいた家の主人が三蔵たちをこっそり逃がしました。
賊どもは家を飛び出し、空が白んできた頃、三蔵たちに追いつきましたが、逆に悟空にやられ、その家の息子の首は切り落とされてしまいます。
悟空、血の滴る生首をぶらさげて三蔵に見せたものですから、三蔵はびっくり仰天。
真っ青な顔でしかりつけ、緊箍呪をとなえはじました。
悟空は痛みに転げまわり、やっとやめたと思ったら、三蔵についてこなくていいからかえれ! と怒鳴りつけられます。
行かないとまた緊箍呪をとなえると言われた悟空、�欖斗雲に飛び乗り、たちまち影も形も見えなくなってしまいました。
第57回 〜にせ悟空、登場。
いったん去っていったものの、考えたすえ、師匠のもとに戻っていった悟空ですが、三蔵は返事もせず、いきなり緊箍呪をとなえます。
師匠の気が変わる様子がないので、悟空はあきらめ、観音菩薩に言いつけてやろうと普陀山へいきました。
観音に会うなり、涙があふれ、悟空は声をあげて泣き始めます。
そして鬆箍呪で頭にはまった金の箍を外してくださいとお願いしますが、鬆箍呪は如来から教わっておらず、知らないと答えます。
三蔵にはよく言い聞かせるからという観音の言葉に、悟空はしばらくここにいることになりました。
一方、三蔵のために水を汲みにいった八戒はなかなか戻ってこず、悟浄が催促に出かけます。
ふたりがいなくなったあと、なにやら音がしてみてみれば、悟空が水の入った茶碗を捧げ、ひざまづいているではありませんか。
しかし三蔵は冷たくあしらいます。その態度に怒った悟空は三蔵を倒し、黒い羅紗のふろしき包みふたつを奪って飛び去っていきました。
帰ってきた八戒と悟浄は三蔵が倒れているのを見てびっくり。
意識を取り戻した三蔵から話を聞き、悟浄が荷物を取り返しに花果山の水簾洞へ向かいました。
悟空は奪った通行手形を広げ、読み上げております。怒って大声で怒鳴りつけた悟浄ですが、悟空は悟浄を知らない様子。
悟浄はおじぎをし、戻ってくるか、戻りたくないなら荷物を返してくれと頼みます。
しかし悟空はひややかに、自分が西天へ行き、経を東土へ伝えると答え、奥から白馬や三蔵、八戒、悟浄を出してきます。
それを見た悟浄、怒って、「無礼者!」 とにせ悟浄の頭に宝杖を打ちおろしたところ、サルが化けていたものだったのです。
今度は悟空が怒り、サルたちが悟浄を取り囲みます。その包囲をなんとか抜け出し、悟浄は観音さまにすがろうと逃げていきました。
南海の落伽山にやってきた悟浄、観音に花果山のことを言上しようとしたら、かたわらに悟空がいるではありませんか。
思わず打ちかかりますが、観音に叱られ、怒りがおさまらぬまま、今までのことを話します。
すると観音は、悟空は4日前からずっとここにいて、一歩も外に出なかったといいます。
観音の言葉に従い、悟空は悟浄といっしょに花果山へ行くことになりました。
第58回 〜にせもの騒動、解決。
ふたりがともに花果山へ行き、見下ろしてみると、確かに悟空がでんとすわっています。
それを見るなり、カッとなった悟空、緊箍棒をかざして突進しますが、もうひとりの悟空もへっちゃらな顔をして迎え撃ちます。
そのすきに悟浄は盗まれた荷物を探すものの、水簾洞の入り口が滝でかくれているため、見つけることができません。
かといってどちらが本物か分からず加勢することもできないため、悟空のいうとおり、いったん三蔵のもとへ報告しに戻ったのでした。
一方、ふたりの悟空は戦いつつ、観音のもとへ行き、どちらがにせものか見分けてほしいといいます。
しかし観音にも見分けがつかず、こっそり緊箍呪を唱えますが、ふたりともいっせいに痛がります。
次に天界に行きましたが、照妖鏡で照らしてもまったく見分けがつかず、追い出されてしまいました。
三蔵のところにいって緊箍呪をとなえても、両方痛がるのでダメ。八戒は今のうちにと荷物を取り返しに花果山へいきました。
その後、冥界の森羅殿にいる十王のもとにも行きましたが、以前悟空が生死簿のサルの項目を墨で塗りつぶしてしまったため分かりません。
そこへ地蔵王菩薩の声が聞こえ、経づくえの下に寝そべっている獣の諦聴(たいちょう)にふたりの真偽を確かめさせることになりました。
諦聴はひとたび地べたの上に寝そべると、ら虫(人)、鱗虫(魚)、毛虫(獣)、羽虫(鳥)、昆虫(虫)の五虫と、
天仙、地仙、神仙、人仙、鬼仙の五仙すべての善悪を見抜き、賢愚を察してしまうことができるのです。
ややあって諦聴は、化けものの名は分かったが、それを言ったらニセモノはここで暴れるだろうし、悟空と甲乙つけがたいほどの神通力を持っているので、
捕らえることもできないと答えます。
地蔵菩薩は雷音寺の釈迦如来なら決着がつくだろうと言い、ふたりの悟空は冥界をあとにしたのでした。
組みつほどきつ、わめきあいながら如来のもとにやってきた悟空たち。
事情を聴いた如来は早くもすべてを見通していましたが、それを言おうとしたとき、観音がやってきました。
如来は五仙、五虫の十類に属さぬものとして、四猴(しこう)混世というものがあると説明します。
すなわち四猴とは、霊明石猴、赤尻馬猴(せきこうばこう)、通臂猿猴(つうひえんこう)、六耳�北猴(ろくじびこう)といい、
にせものは六耳�北猴だと如来が正体を明かします。
正体を看破された六耳�北猴は逃げようとしますが、如来にとらえられ、正体を現すなり、悟空に打ち殺されてしまいました。
こうしてにせもの騒動はおさまったわけですが、悟空は、戻っても三蔵は弟子に加えてくれないだろうから鬆箍呪を唱えてほしいと如来にお願いします。
しかし観音に送らせるから心配いらないといわれ、悟空は観音とともに三蔵のもとへ向かうことになりました。
観音は三蔵をさとし、三蔵もお教えに従いますと観音を拝します。そのとき花果山へ行っていた八戒が戻ってきました。
観音が事の顛末を話すと、八戒も喜びます。こうして師弟4人とも怒りを解いて、今までどおり西への旅を続けることになったのでした。
第59回 〜火焔山に到着。
夏もすぎ、秋、霜のおりる季節となりました。
しかし進むにつれて、どんどん蒸し暑くなってきます。
やがて一軒の農家が見え、悟空がこの家の老人に暑さの理由をたずねると、ここから西に火焔山という燃えている山があり、一年中暑いのだとか。
そのとき餅を売りにきた男から、鉄扇仙が持っている芭蕉扇なら火が消せると聞き、悟空はその鉄扇仙がいるという翠雲山の芭蕉洞に出かけていきます。
翠雲山に到着した悟空、樵夫から芭蕉洞にいるのは鉄扇仙ではなく、羅刹女という名でまたの名を鉄扇公主、そして牛魔王のかみさんだと聞き、がっくり。
息子の紅孩児のことで悟空をうらんでいるはずなので、芭蕉扇を貸してくれるわけがありません。
それでも樵夫にはげまされ芭蕉洞に行ったのですが、悟空が来たと聞くなり、羅刹女はふた口(ふり)の青鋒(せいほう)剣をつかみ、洞窟から出てきます。
そして夕刻まで悟空と戦い続けましたが、勝ち目がないとみるや、芭蕉扇を取り出し、バフッとひと煽ぎ。
悟空はひと晩じゅうくるくる飛ばされた挙句、夜明けになってやっと、小須弥山のてっぺんに落ちました。
この山をおりたところに黄風怪を退治した霊吉菩薩(第21回参照)の禅院があることを思い出した悟空は、霊吉菩薩を訪ね、事情を話すと定風丹を授けられました。
定風丹があれば、芭蕉扇で煽いでも吹き飛ばされることはありません。
悟空はお礼を言って、すぐさま翠雲山にかえっていきました。
また戦いになり、武術では悟空にかないわないとみた羅刹女、芭蕉扇で煽ぎますが、定風丹のおかげで悟空はへっちゃら。
あわてて洞内へ逃げ込み、門をぴたりと閉ざしてしまいました。
羽虫に化けて洞窟へ入り込んだ悟空、羅刹女が飲むお茶の葉くずの下にもぐりこみ、そのまま腹のなかに入ると、もとの姿に戻りました。
悟空が腹のなかで暴れるので、羅刹女は痛くてたまりません。 ついに芭蕉扇を貸すことを承諾しました。
こうして芭蕉扇を手に入れた悟空は、さっそく火焔山の近くへ行き、芭蕉扇で思いっきり、ひと煽ぎしたのですが・・・
なんと山の火はおさまるどころかいっそう燃え上がり、煽ぐごとに火の勢いは増すばかり。
悟空の両股のにこ毛はすっかり焦げてしまい、三蔵一行は大急ぎで引き返します。
こんなに火が強くては西へは行けない。でも三蔵が行きたいのはお経のある方角(西)だけ、などと師弟でしゃべっておりますと、
火焔山の土地神が現れ、その扇はにせもので、本当の扇を借りたければ大力王(牛魔王)にお願いされよ、と助言したのでした。
第60回 〜悟空、牛魔王に化け、芭蕉扇を手に入れる。
火焔山の土地神が申すには、この火は、もとはと言えば大聖(悟空)がつけたもので、
五百年前、太上老君の八卦炉から悟空が炉を蹴飛ばして飛び出したときに、余燼でくすぶった煉瓦のかけらが落っこちて、火焔山になったとのこと。
大力王(牛魔王)は積雷山摩雲洞の玉面公主のところにいると聞いて、悟空はひとっとび。半刻もたたないうちに到着しました。
松の木陰にいる美しい女が玉面公主だと気づいた悟空、金箍棒を取りだして、わざと大声でどなりつけました。
摩雲洞に逃げ込んだ玉面公主は牛魔王に怒りをぶつけ、牛魔王は金鉄棍を手に外へ出てきます。
悟空は、芭蕉扇を借りるために一緒に羅刹女のところへ来てほしいとお願いしますが、牛魔王が承諾するわけもなく、戦うことに。
なかなか決着がつかないそのとき、峰のほうから、牛魔王を宴会に招く声が聞こえてきました。
すると牛魔王、悟空の攻撃をさえぎり、洞窟におりると、水除け用の金睛獣にまたがって出かけていってしまいます。
悟空が一陣の清風と化してついていくと、乱石山 碧波潭(へきはたん)という石碑が立った、澄んだ深い淵につきました。
牛魔王が淵の底で開かれている老龍王の宴会に出席している間に、悟空はつながれていた金睛獣にまたがり、牛魔王に化けて、芭蕉洞に向かいます。
羅刹女は悟空は化けたものとは気づかず、本物の丸まっている芭蕉扇を渡すと、広げる方法までぺらぺらとしゃべってしまいました。
それを頭に叩き込んだ悟空、もとの姿に戻り、悔しい!とわめいている羅刹女をあとに洞門を出て行きます。
さっそく外で呪文をためし、芭蕉扇を広げたものの、それを縮める呪文は聞いてこなかったので、そのまま肩にかついで帰っていきました。
一方、牛魔王、宴会がおひらきになり、金睛獣がいないのを知ると、悟空のしわざと気づき、翠雲山の芭蕉洞へ向かいます。
そこで羅刹女から事の次第を聞くと、悟空を追うべく、火焔山めざしてすっとんでいったのでした。
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