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西遊記あらすじ 第61回〜第70回
ものすごく省略しています。興味があったら、ぜひ本を読んでみてください。 |
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第61回 〜芭蕉扇で火焔山の猛火を消す。
牛魔王が追いついたところ、悟空は広げた芭蕉扇をかつぎ、上機嫌で歩いています。
すんなり返してくれるわけがないと考えた牛魔王、八戒に化け、芭蕉扇を取り戻すことに成功。
呪文をとなえ、杏の葉っぱほどに小さくすると、正体を現し、ふたりで死闘を繰り広げます。
そこへ本物の八戒がやってきました。
自分に化けたと聞いて八戒は怒り、まぐわでめちゃくちゃに打ちまくります。
3人は戦っているうちに積雷山摩雲洞の入り口近くまでやってきました。
玉面公主の命で、子分たちが助太刀にやってきて、八戒や悟空は退散。
勝利をおさめた牛魔王は摩雲洞に戻り、門をぴたりと閉ざしてしまいました。
ふたりが成功して帰ってくるのを三蔵が待っているという土地神の言葉に、悟空と八戒は気をとりなおして、一斉攻撃にでます。
門をぶっこわすと、牛魔王が怒って迎え撃ちますが、ついに力尽き、鳥に化けて空へ逃げ出しました。
悟空も追っていき、変化合戦のすえ、牛魔王は正体を現しました。ばかでかい白牛だったのです。
芭蕉洞までやってくると、牛魔王は洞内にかけこむなり、門をぴたりと閉めてしまいました。
そこへ玉面狸の化け物だった玉面公主を殺し、摩雲洞を焼き払ってきた八戒らが駆けつけてきました。
八戒がまぐわで門を崩すと、牛魔王は芭蕉扇を羅刹女に渡し、またもや戦いにおもむきます。
しかしとうとう防ぎきれず、逃げ出したものの、東西南北は金剛らが行く手をさえぎり、天空は托塔李天王とナタ太子がふさいでおります。
変化の術も照妖鏡で正体を見破られ、もはやこれまで。
とりおさえられた牛魔王を連れて芭蕉洞に戻ると、羅刹女はひざまずき、叩頭しつつ芭蕉扇を差し出しました。
羅刹女のいうとおり、悟空が49回、芭蕉扇で力のかぎり煽ぐと、火焔山の火の根元は絶え、二度と燃えだすことはなくなりました。
そこで彼女の願いを聞き、芭蕉扇を返すと、三蔵一行は山を越えていったのでした。
第62回 〜僧の受難・祭賽国。
時は晩秋から初冬のころ、三蔵一行は濠をめぐらした大きなまちに着きました。
門をくぐると、十人あまりの僧侶が枷を嵌められ、鎖につながれて、乞食をしています。
話を聞いたところ、ここは祭賽(さいさい)国、自分たちは金光寺の僧だが、3年前に血の雨が降ってきた。
寺には祥雲瑞霞たなびく黄金の宝塔があり、四方の国々から朝貢が絶えなかったが、塔の宝を盗まれ光を放たなくなったために、ここ二年ほど貢ぎ物がまったくない。
その塔の宝を盗んだのが金光寺の僧だと、ぬれぎぬを着せられているというのです。
それを聞いた三蔵、様子を調べるのを兼ねて、塔を掃除することにし、悟空がお供したのでした。
しかし第十層まできたところで疲れ果て、のこり三層の掃除を悟空に頼みます。
悟空がほうきで掃きつつ第十二層までのぼってくると、てっぺんからなにやら話し声がします。
見ると、妖怪が二匹、中央に腰をおろし、酒を飲んでいます。
妖怪たちをつかまえ、三蔵のもとに戻ると、妖怪たちは血の雨を降らせて宝塔を汚し、舎利子仏宝を盗んだのは、
乱石山碧波潭の万聖龍王(第60回参照)とその娘婿の九頭�薊馬(きゅうとうふば)であり、娘である万聖公主も西王母の九葉の霊芝(れいし)草を盗んでいるとのこと。
もうすぐ悟空が来るとのうわさを聞いて見張りをさせ、様子をさぐらせていたのでした。
妖怪をとらえ、塔をおりると、翌日、三蔵は悟空と一緒に王宮へ通行手形にはんをもらいにいきました。
国王に謁見し、黄金の塔の宝を盗んだ犯人をとらえたことを言うと、国王は近衛兵に命じ、妖怪を牢に入れ、僧たちの鎖を外し、赦免させました。
そして宴会を開き、三蔵らをもてなすと、犯人をつかまえ、塔に宝を取り戻してくれるよう頼みます。
さっそく悟空と八戒が妖怪の子分を連れて、東南めざし飛んでいったのでした。
第63回 〜悟空、二郎真君とともに九頭虫を退治する。
乱石山碧波潭についた悟空たち、妖怪を水中に放りこみ、宝を返しに来いと伝えさせます。
子分たちが老龍王に報告すると、婿の�薊馬は水面に出て、悟空に戦いを挑みます。
八戒が加勢すると、�薊馬は正体を現しました。
醜い九頭虫(鬼車鳥・別名、九頭鳥、伝説によれば、この鳥はもともと頭が十個あったが、犬にひとつ噛み切られて九頭になり、いつも血をしたたらせている)
だったのです。
怪物は山の前をかすめるように飛びながら、腰からもうひとつ頭を出し、八戒のたてがみに咬みついて、水中に引きずりこんでしまいました。
水中戦が苦手な悟空は、蟹に化けて八戒を救いにいきます。
はさみで縄をちょん切り、武器のまぐわも取り戻すと、悟空は水面に出て岸辺で待ち、八戒はひとりで宮殿に突撃していきました。
龍王たちも戦いに加わり、こりゃまずいと逃げ出した八戒のあとを皆で追いかけていきますが、地上で待ち構えていた悟空の一撃をくらい、龍王は死んでしまいます。
ほかの者たちはびっくりし、龍宮に逃げ帰っていきました。
悟空と八戒が相談していると、二郎顕聖(第6回参照)が通りがかるのが見えました。
八戒に真君(二郎顕聖)を呼び止めさせ、悟空は協力をお願いします。
こころよく引き受けた真君たちとその夜は飲み明かし、翌朝、八戒が龍宮へのりこんでいきました。
そして龍王のせがれを一撃で倒すと、�薊馬たちを水上におびきだします。
待ち構えていた悟空が龍王の孫を倒し、正体を現した�薊馬も腰から出した頭を二郎神の犬に噛み切られ、血を流しながら逃げ去っていきました。
八戒が追いかけようとするのをいずれ死ぬだろうと止めた悟空は、�薊馬に化けて龍宮へ行き、公主から塔の宝と九葉の霊芝を手に入れることに成功します。
その後、八戒が公主を倒し、唯一生き残った龍婆(龍王の妻)を生け捕りにすると、悟空と八戒は二郎神とわかれ、宮殿に戻っていきました。
国王は三蔵らとともに金光寺の塔にのぼると、宝の舎利子を塔のてっぺんの宝瓶のなかに安置します。
そして悟空が霊芝で十三層を掃き清めてから、それも宝瓶に挿しました。
こうして塔はふたたび霞光瑞気を放つようになったのです。
捕らえた龍婆は塔の番人とすることにしました。
塔からおり、感謝の言葉をのべる国王に、悟空は金光の二字はとどまるものではないからよくないといい、伏龍寺とあらためるよう言いました。
そうして寺の名前も変わり、三蔵一行は旅立っていったのです。
第64回 〜三蔵、樹木の妖怪と詩を論ずる。
西を目指す一行の行く手に、いばらにおおわれた長い嶺が見えてきました。
八戒がまぐわでいばらをかきわけつつ進みます。やがて石碑があり、荊棘嶺(けいきょくれい)と大きな字で刻まれています。
また進むと空き地があり、古い廟が建っています。廟門の外には松柏や桃梅。
そこへ土地神と名乗る老人があらわれましたが、あやしいと見破った悟空が打ちかかると、三蔵をさらって飛び去ってしまいました。
三蔵をさらったのは十八公といい、勁節公と号する者でした。
そこには先に3人の老人がおり、それぞれ狐直公、凌空子、払雲叟と号しております。
三蔵は願いに応じて、禅法について説き、その後、払雲叟の木仙庵にて、四老人と詩を論じます。
やがて杏仙という仙女がやってきて、詩吟に加わります。すると話は杏仙と三蔵の縁談に。
三蔵が断固拒んでいるうちに夜が明け、いきなり三蔵を探す悟空の声が聞こえました。
その声をたよりに、もがくように三蔵が門から飛びだすと、仙女や老人たちはみな消えうせてしまいました。
ここは八百里の荊棘嶺を越え、さらに西へくだったところ。崖に木仙庵の三字が見えます。
悟空はそこに生えている老いた木々を見て、彼らは樹木が化けたものだといいました。
すなわち、十八公は松、狐直公は柏、凌空子は檜、払雲叟が竹、杏仙は杏の木です。
それを聞くなり八戒は杏などを地面に倒してしまいました。その根からは真っ赤な血がどくどくと流れ出ます。
三蔵は八戒の袖を引いて、妖怪たちは私を傷つけなかったと止めますが、悟空はもっと大物の化けものになったら悪さをするかもしれないと答えます。
そこで八戒はまぐわで松、柏、檜、竹をいっぺんに突き倒してしまいました。
そして三蔵を馬に乗せるや、街道沿いに西へと向かっていったのでした。
第65回 〜三蔵、雷音寺とまちがえ、妖怪にとらわれる。
冬がすぎ、春たけなわ。行く手に高い山が見えてきました。
頂上を越え、平らなところまで下ったとき、壮麗な楼閣殿閣が目に映りました。
一見、雷音寺に似た素晴らしいところですが、悟空がよくよく観察すると、凶気が漂っている感じがします。
山門の前まで行ってみると、如来のいる大雷音寺ならぬ、小雷音寺という文字が。
なかに入ってはいけないという悟空の忠告を聞かず、三蔵は身支度をととのえ、歩をすすめます。
なかには如来や菩薩、数え切れぬほどの僧侶などがいますが、悟空だけはニセモノだと見抜き、打ちかかろうとしたところ、
上からひと組の金の鐃�穩(にょうばち)が降ってきて、悟空をそのなかに閉じ込めてしまいました。
やはりここは妖怪の巣窟だったのです。三蔵らも皆、とらえられてしまいました。
一方、悟空は様々な神通力を使いますが、どうやっても脱出することができません。
あせった悟空は三蔵を守護している諸神たちを呼び出し、そのなかのひとり、金頭掲諦が天界へいき、二十八宿の星たちと一緒に戻ってきました。
亢宿の亢金龍(こうきんりゅう)が角の先端を割れ目からなかに差し入れますが、まったく隙間ができません。
しかたなく角の先端に小さな穴を開けて悟空がなかにもぐりこみ、それを引っこ抜いて、やっと外に出ることができました。
外に出るなり、悟空は如意棒で鐃�穩(にょうばち)をガーンと一発。粉々に打ち砕いてしまいました。
その派手な音に眠っていた妖怪たちも目を覚ましました。
妖怪の王、黄眉老仏はここは小西天といい、悟空が勝てば三蔵らは返すが、負ければ悟空を殺し、代わりに自分が取経に行くと戦いを挑みます。
二十八宿の天兵たちが囲むと、黄眉老仏は腰にゆわえてあった古ぼけた白い木綿の袋をほどき、上に放り投げました。
するとそれは悟空をはじめ、皆を包みこんでしまったのです。魔王は洞窟のなかで、ひとりずつ取り出しては縄できつくしばりあげました。
夜中になり、縄を抜け出した悟空は三蔵や八戒、悟浄はもちろん、二十八宿らの縄もひとりひとりほどいてやりました。
白馬を引き出し、さっさと逃げようとしたのですが、門を出たところで荷物がないのに気づき、悟空が探しに戻ります。
しかし荷物を運ぶ途中、落として大きな音を立ててしまったため、魔王が気づき、おいかけてきました。
そして例の袋を取り出したので、悟空だけは遙か九霄の天の高みに逃げましたが、ほかのものはみな捕らわれてしまいます。
しばらくして気が落ち着いた悟空、北方真武(号は蕩魔天尊)に助けを求めに、南贍部洲の武当山に向かったのでした。
第66回 〜黄眉老仏、弥勒菩薩とともに帰る。
蕩魔(とうま)天尊にお願いにいった悟空、加勢につけてもらった亀蛇、龍神ともども小西天に戻ってきました。
戦いが始まりますが、しばらくすると黄眉老仏は例の袋を放り投げます。
するとまたもや天の高みに逃げた悟空以外包み込まれてしまいました。
がっくりと肩を落とす悟空のもとに三蔵を護る諸神のひとりである日値功僧がやってきて、国師王菩薩に頼んでみてはと助言します。
そこでお願いに行き、弟子の小張太子および四将とともに戻ってきたのですが・・・
結果は同じ。悟空以外、袋に包みこまれてしまいます。
悟空が涙にくれているそのとき、西南の方角に美しい雲がおりてきて、妙なる香りの雨が降り始めました。弥勒菩薩です。
弥勒菩薩が言うには、そば近くにつかえていた黄眉童子が菩薩の留守のあいだに宝を盗み出し、仏になりすましたとのこと。
例のなんでも包んでしまう袋は弥勒菩薩の後天袋(人種袋・未来の人類のための種子をいれた袋?)だったのでした。
悟空が責めると、三蔵たちの受難はまだすんでいないからたくさんの神が下界に降生し、難儀を与えなければならないと答えます。
弥勒は悟空の手のひらに「禁」という字を書き、魔王を瓜畑におびきよせ、そこでよく熟れた瓜に化けるよう、悟空に言います。
戦いを挑みにいった悟空、げんこつを開いて「禁」の字を見せると、魔王は袋をつかうことなく、悟空をおいかけてきます。
そこで瓜畑までおびきよせ、よく熟れた瓜に化けました。
のどがかわいた魔王に、瓜畑のじいさんに化けた弥勒が悟空が変化した瓜を渡します。
かぶりつこうとしたそのすきに、悟空は腹のなかに転がりこみ、さんざん暴れます。
弥勒がもとの姿に戻ると、魔王はしきりに叩頭し命乞いをしました。
弥勒は魔王から例の袋を取り上げると、外に出てきた悟空がぶったたくまえに魔王を袋に収めてしまいました。
そして寺にもどり、悟空が粉々にした金の鐃�穩(にょうばち)をもとどおりにすると、極楽へと引き返していきました。
悟空は縄をほどいた八戒と一緒に地下牢へ行き、とらえられていた諸神将の縄をといて送り届け、あくる朝、寺に火を放ち、出発しました。
第67回 〜一行、八戒の働きで七絶山を越える。
時は春たけなわ。林の中に民家をみつけ、一夜の宿をかりることにしました。
その家の老人は三蔵たちが西へ行こうとするのを聞くと、それは無理だといいます。
なんでも西には柿の木ばかりの七絶山があるのですが、毎年熟れた柿が落ちて、ぐちゃぐちゃになり、夏になるとカビがはえ、ものすごくくさいとか。
悟空が妖怪をつかまえるのが得意と聞いた老人は態度を変え、ていねいにもてなし、化けもの退治をお願いします。
化けものについて話していると、いきなり強い風が吹いてきました。その化けものがやってきたのです。
悟空の戦いぶりを見て、手柄をひとりじめさせてなるものかと八戒も化けものと戦いますが、明け方になると化けものは逃げ出しました。
追いかけていくと、柿のくさったにおいが鼻をつき、あまりのくささに悟空は鼻をおさえながらも、追っかけろと叫びます。
化けものは山の陰までくると正体をあらわしました。真っ赤なウロコを持つ、大きなうわばみだったのです。
化けものが八戒を飲み込もうと大口を開けると、逆に悟空は自分から進み出て、飲み込まれてしまいました。
そして腹のなかでさんざん暴れて、うわばみを退治したのです。
うわばみを引きずって戻ってきた悟空と八戒に村の人々は大喜び。
みな招待してもてなすものですから、7日近く引き止められてしまいました。
それでもまだ引き止めるのを固辞して、三蔵たちは七絶山につきました。 腐った柿が道を埋め尽くしていて、ものすごい臭さです。
悟空は見送りにきてくれた村人たちに飯のしたくをするよう頼み、それを八戒に食べさせ、道を開かせようとします。
たらふく食べた八戒は印をむすび、ばかでかいブタに化けると、つもった柿をはねのけ道をつくり、三蔵一行は山を越えることができたのでした。
第68回 〜朱紫国へ到着。
炎暑の頃になりました。行く手にりっぱな城が見えてきます。朱紫(しゅし)国です。
三蔵は通行手形にはんをもらいに王城へ行きました。
王は3年前から病にふせっており、久々の登殿でしたが、三蔵と食事をともにすることにしました。
一方、会同館(異民族の使いなどを接待する役所)にて弟子3人は食事の支度をしていたのですが、調味料がないので、八戒と悟空が買い出しに出かけます。
途中、道路いっぱいに人が群がり、貼りだしてある国王のおふれを見ています。
おふれの内容は、国王の病をなおすことができたら国の半分をくれるというもの。
悟空は医者になってちょっと遊ぶかと隠身の法を使い、おふれをはがすと、それを堀の下で眠りこけている八戒のふところにいれ、自分は先に帰ってしまいました。
はがされたおふれを八戒が持っているのを知り、近衛兵が王城へ連れて行こうとします。
八戒が近衛兵や宦官を連れて、会同館にもどると、悟空がおふれをはがした一件を悟浄に話し、おもしろがっているところでした。
怒ってわめく八戒をよそに、悟空は自信たっぷりな様子で、自分にはそれだけの腕があるから、病をなおしたければ国王みずから頼むよう伝えさせました。
驚いた宦官らはさっそく王に報告しにいきました。
王は三蔵と会食をすませ、話をしていた最中でしたが、報告を聞き、自分は病弱でそちらに行けないから、ていねいにお迎えするよう命じます。
迎えがくると悟空は、八戒と悟浄にあとで薬が届くようになっているからそれを受け取るように伝えて、ひとり宮殿へ向かいました。
しかし悟空の粗野な様子に、国王はおびえて倒れてしまいます。
奥にさがり、診察してもらうのはいやだというので、悟空は懸糸診脈(けんししんみゃく)をしようといいます。
それならと殿中にはいることを許されると、先にいた三蔵がおまえが病気を治したところなど見たことないと叱りつけますが、悟空はだいじょうぶと笑って答えます。
そして自分のにこ毛を3本ひっこぬくと、二丈四尺の金糸に変え、奥へと消えていきました。
第69回 〜悟空、国手(医者)となり、王の病をなおす。
寝殿の門の外まで入っていった悟空、三本の金糸の端を王の左手首の寸脈、関脈、尺脈につなぎ、自分は逆の端を持って診察します。
終わったら、今度は右手です。それも終わると金糸を自分のからだに収め、診察の結果を、驚きと恐怖、憂いとなやみに起因する《双鳥失群》の症と名づけます。
《双鳥失群》の症とは、つがいの二羽の鳥が仲良く飛んでいたのに、突然の風雨に別れ別れになり、互いに互いを思うというもの。
みごとな診断に感じいった国王は、悟空に薬を調合してくれるよう頼み、医官は悟空に言われたとおり、あらゆる薬を会同館に運ばせたのでした。
ところがそれは目くらまし。実際に悟空が薬に使ったのは、大黄と巴豆になべ底の煤、それに白馬のおしっこでした。
さすがに馬の尿と聞き、悟浄も吹きだしましたが、白馬はもともと西海の龍。
川を渡るときに尿をもらせば、それを飲んだ魚は龍になり、山を越えるときに尿をもらせば、それがかかった草は霊芝となる。
その霊芝を仙童が摘んで、長生の薬とするぐらいすごいものなのです。
白馬はそれほどの尿を簡単には出せないといいますが、国王の病気をなおさなければ旅に出られないとの悟空の言葉に、ふんばって、なんとか数滴しぼり出したのでした。
それらすべてをこねて、大きな丸薬を3つ作りました。それを烏金丹と名づけ、無根水(地をぬらしていない雨水)で飲むよう伝えます。
雨を降らすべく悟空は東海龍王を呼び、雨のかわりにつばをとばしてもらうと、それは甘雨に変わったのでした。
そして三粒の丸薬を甘雨で飲むなり、国王のおなかがくだります。
くだしたなかにはもち米のかたまりがまじっていました。
病気のもとが出て、すっかり元気になった国王、宴会を開き、三蔵一行をもてなします。
その席で国王は鬱の病いにかかった理由を話しました。
3年前の端午の節句のとき、金聖宮(正宮)を麒麟山 �貌豸(かいち)洞の賽太歳(さいたいさい)にさらわれてしまい、
そのときのおどろきと恐怖でちまきが腹中で凝固してしまったとのこと。
すると悟空、妖怪退治を引き受けます。
数ヶ月ごとに宮女をふたりずつ連れて行くなどと賽太歳について話しているところに、真南から風の音が聞こえ、中空に妖怪の姿が出現しました。
国王らは逃げ出してしまいましたが、悟空は名をたずねに妖怪のもとへと跳び上がっていったのでした。
第70回 〜悟空、賽太歳の洞窟にのりこむ。
悟空、空中に立つなり、どこから来たと妖怪にどなりつけたところ、妖怪は賽太歳の手下の先鋒で宮女を取りに来たと答えます。
悟空と戦いになりましたが、槍を折られ、逃げ去っていきました。
いったん戻ってきた悟空は、国王に賽太歳のいる麒麟山の場所を聞き、后を取り返しに行きました。
麒麟山につき、妖怪の洞窟の門を見つけようと見渡していたところ、山のくぼみから紅蓮の焔と黒い煙がたちのぼります。
さすがの悟空もおじけづきましたが、さらに山のなかから砂塵が噴きだし、舞い上がる灰にくしゃみをふたつ。
そこで石で鼻のあなをふさぐと、火をくぐり抜けることのできるハイタカに化けて、火と煙のただなかにつっこんでいきました。
しかしそのうち砂塵はなくなり、火焔もおさまってしまいました。
もとの姿にもどった悟空、賽太歳が国王にあてた宣戦布告する文書を持った妖怪を見つけます。
あぶに化けて、妖怪のひとりごとを聞くに、賽太歳は皇后をさらってきたけど、手も握っていない。
定期的に連れて行かれた宮女はみな殺されたとのこと。
皇后の手もにぎっていないというのはどういうことかと疑問を覚えた悟空は、子どもの道士に化けて、妖怪に直接きいてみることにしました。
なんでも皇后がさらわれた直後、神仙があらわれて、五彩の仙衣を皇后に着せたところ、その仙衣にびっしりトゲが生えて、男はさわるだけでピリッとくるようです。
話を聞き終わると、悟空は使者の妖怪、有来有去を殺し、その死体を持って、いったん朱紫国に戻りました。
宣戦布告の文書は国王に見せないよう三蔵に渡し、国王から后の愛用していた黄金の腕輪を預かると、また麒麟山にとってかえします。
そして有来有去に化け、大王に報告したのち、金聖皇后のところへも報告にむかいました。
人払いさせたのち、悟空はもとの姿にもどり、いままでのいきさつを話すと、疑う様子の皇后に証拠として黄金の腕輪を差し出します。
それを見て悟空を信用した皇后に、悟空は焔や煙、砂塵の正体をたずねたところ、あれは賽太歳が持っている金の鈴3つで、
3つめの黄砂が鼻のあなに入ろうものなら、命を落としてしまうほどの危険なもの。
悟空はその3つの金の鈴を皇后に預けるよう、賽太歳と枕を交わすふりでもしてくださいとお願いし、皇后も同意します。
さっそく皇后は賽太歳を呼び、笑顔で出迎えると、綿で口をふさいだ金の鈴を預かることに成功しました。
すきをみて悟空は3つの鈴をこっそり盗み出しましたが、鈴のすごさを知らず、あけてみようとつい綿を抜いてしまいました。
とたんにチャリーンと鈴が鳴ると、焔と煙、黄砂が噴きだし、おさめることができません。
ぶったまげた悟空、金の鈴を放り出すなり、正体を現すと如意棒で取り囲んだ妖怪の手下たちをめちゃくちゃに打ちまくります。
賽太歳は鈴をしまうと門を閉じさせました。逃げられないと知った悟空は蠅に化けて壁にはりつきます。
悟空を見失ってしまった妖怪たちですが、門をとじたまま、念には念をいれて洞内を探すことにしたのでした。
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