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西遊記あらすじ 第71回〜第80回
ものすごく省略しています。興味があったら、ぜひ本を読んでみてください。 |
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第71回 〜観音、賽太歳を収服する。
賽太歳、門を閉め、悟空を探し回ったのですが、みつけることができません。
悟空はハエに化けたままブーンと後宮へ飛んでいき、皇后に状況を話すと、賽太歳を奥で休ませるよう頼みました。
そして今度は侍女のひとりに化けると、皇后のそばにはべり、酒を飲む賽太歳から本物の金鈴を手にいれて、
にこ毛でつくったにせものとすりかえることに成功します。
賽太歳はにせものとも知らず、金鈴を皇后に預け、やがて寝にいってしまいました。
本物の金鈴を手に入れた悟空、解鎖の法をつかって、門の外に出ると、大声をはりあげ、皇后を返せと叫びました。
明け方になってようやく出てきた賽太歳と戦いになりますが、勝負がつきません。
そこで賽太歳、朝ごはんを食べてくるといって、なかに戻り、皇后からにせの金鈴をひったくって外に出て行きます。
そして風上にて鈴を振ろうとしますが、悟空は本物の紫金鈴を取り出し、おまえのは雄で俺のが雌だと言います。
賽太歳は鈴を振りますが、当然にせものなので何もおこりません。
それを鈴が女房を怖がっているからだなどと勘違いしております。
次は自分の番だと悟空が三つの鈴をいっせいにゆらすと、真っ赤な火、真っ黒な煙、まっ黄色な砂が噴きだしました。
悟空は呪文を唱え、風を呼びます。逃げようにも逃げられず賽太歳は絶体絶命。
そのとき空中にて誰かが呼ぶ声に気づきました。振り仰ぐと、なんと観音菩薩ではありませんか。
慌てて悟空は鈴をしまいこみ、合掌しつつひれ伏すと、観音は楊柳の枝で甘露のしずくを払いおとし、煙火と砂をおさめてしまいました。
観音は妖邪を収服するために来たといい、賽太歳は観音が乗りものとして使っている金毛吼だと正体を明かします。
続けていうには、朱紫国王がまだ東宮だったとき、落鳳坡(らくほうは)のふもとで狩りをしていて、仏母孔雀大明王菩薩の二子、つまり雌雄のひなに矢を射た。
そこで仏母は国王に三年のあいだ皇后と別離の悲しみを与えるという罰を加えたが、もはや三年たち、罪の償いはすんだとのこと。
観音は、しらばっくれる悟空から緊箍呪を唱えるぞと脅して金の鈴を返させると、金毛吼のうなじにゆわえ、南海へとかえっていきました。
洞窟へとって返した悟空は妖怪どもをうち殺し、神通力にて皇后を王城へと連れて帰ります。
皇后の姿を見た国王、手をとろうとするのですが、そのとたん手が痛いとひっくり返ってしまいました。
そう、皇后は仙衣をきているので、男がさわると毒のトゲに刺されるのです。
一同どうしたものかとあたふたしているところへ、空中から声がして、紫陽真人(紫陽仙)があらわれます。
皇后にきせた仙衣はもとは真人の古い棕櫚の衣で、毒のトゲというのは、本当は棕櫚の毛なんだとか。
真人が手を差し伸べると、棕櫚の衣は脱げ、皇后はもとのからだになりました。
宴が開かれ、その席で、悟空は三蔵に預けた宣戦布告書を国王にわたし、はじめから終わりまでこと細かに語りました。
こうして三蔵一行は引き止める国王から通行手形のはんをもらい、西天への旅を再開したのでした。
第72回 〜三蔵、女怪に捕らえられる。
いくつもの山を越え、谷を越えしているうちに、秋が過ぎ、冬も去り、春となりました。
木立に囲まれた一軒家に、いつも弟子たちに行ってもらっているから今回はと、三蔵がお斎(とき)をもらいにいってきます。
家のなかには女ばかり、三蔵は一時間ほどためらっておりましたが、意を決して入っていきました。
しかしその女たちは妖怪だったのです。女たちは三蔵を縄でぐるぐる巻きにすると、梁に吊るしてしまいました。
そして奥にいって上半身はだかになると、へその穴からあひるの卵ほどの糸を繰り出すや、屋敷をすっかり隠してしまったのでした。
悟空がふと屋敷をみますと、銀色に光っています。
近くへ様子を見にいくと絹の縄がからまりあっており、さわるとぐにゃっと粘っこいのです。
そこで土地神を呼び出しましたところ、この山は盤糸嶺(ばんしれい)で、ふもとにある盤糸洞という洞窟には7匹の女の妖怪が住んでおり、
そこから南の濯垢泉(たくこうせん)という天然の温泉に日に三度湯あみにいくと教えます。
土地神を返してしばらくしたころ、屋敷を包んでいた縄はすっかりなくなり、七人の女たちが温泉に出かけていきました。
全員が温泉に入ったところで、悟空は鷹に化け、かけてあった着物を全部さらっていってしまいます。
そのまま仲間のところへ戻ると、八戒はきっと妖怪は追いかけてくるから殺したほうがいいと、妖怪のいる温泉へ向かいます。
しかし逆に妖怪の出す縄にしばられてしまいました。
八戒を足止めしたあと、仕方なく、はだかのまま屋敷にかえってきた妖怪たちは、養子である虫の妖怪たちに後を託し、伯父さんのところへ行ってしまいました。
悟空たちは、なんとか這いおきた八戒と一緒に洞窟へ行くと、虫の妖怪たちをことごとく倒し、三蔵を救い出します。
弟子三人、この次からお斎をもらいに行くのはやっぱり私たちにさせてくださいよといえば、三蔵もこれからは餓死しようとも勝手な真似はしないと答え、
一行は家をきれいさっぱり焼き払うと、また西へと急ぐのでした。
第73回 〜毘藍婆、多目怪を退治する。
三蔵がまた西へと向かい始めて、半刻もたたないころ、黄花観という道観につきました。
ところがここの道士は、7人の女の妖怪と同門で、妖怪たちはここに来ていたのです。
三蔵一行が来たのを知った女怪たちが道士に今までのいきさつを話すと、道士は棗に毒を仕込み、三蔵たちに出しました。
悟空だけが食べなかったものの、食べてしまったほかの三人はいっせいに倒れてしまいます。
悟空と戦いになった道士に女怪たちも加勢し、糸を繰り出すと、悟空は空に逃げ出しました。
そしてまた土地神を呼び出すと、女怪の正体について聞きます。
女怪の正体がくもで、繰り出す糸はくもの糸だと知ると、悟空は如意棒をさすまたに変えて、糸をからめとり、なかから七匹のくもをひきずりだしました。
くもたちは命乞いをしますが、道士は三蔵はわしが食うといったので、悟空はくもたちをたたきつぶしてしまいました。
悟空と戦いになったものの、道士はしだいに疲れてきました。
そこで黒の道服を脱ぎすてると、両手を高くさしのべました。
すると両脇の下に一千個ほどの目玉がついていて、金ピカの光をはなち、しかも熱いので、悟空はたまらず地面にもぐり逃げました。
遠くに逃げた悟空がせつない思いで涙にくれていると、夫を黄花観の道士に殺されて泣いている女に出会います。
女は黄花観の道士は百眼魔君または多目怪といい、南にある紫雲山の千花洞にすんでいる毘藍婆(びらんば)なら退治することができる、
そして三蔵たちがのんだ毒は倒れてから三日以内に骨も髄も腐ってしまうと教えます。
その婦人は実は黎山老姆で、龍華会からの帰り道に三蔵が難にあっているのをみて、助言しにきたのでした。
さっそく悟空が毘藍婆にお願いしに行くと、大聖がわざわざ来たならと同行することを了承し、
武器としてせがれの昴日星官(第55回参照)が太陽の目のなかで煉った刺繍針をもっていきます。
黄花観に到着し、毘藍婆が刺繍針を手でひねってから空たかく放り投げると、すさまじい音がして百眼魔君の金光は消えてしまいました。
悟空が毘藍婆からもらった解毒丹を黄花観でたおれている三蔵たちの口に押し込むと、しばらくして皆、毒を吐き出し助かります。
道士は目が見えないように外に突っ立っていました。 八戒はまぐわでどつきにいこうとしましたが、門番にしたいという毘藍婆に止められます。
悟空が道士の正体を見たいと頼むと、毘藍婆はおやすい御用と指をちょっと向けました。
すると道士はばったり倒れ、正体をあらわしました。大きなむかでだったのです。
毘藍婆はそれを小指でひっかけるや、千花洞へ帰っていきました。
すごいと感嘆する八戒に、悟空は息子の昴日星官が雄鶏だから、毘藍婆は雌鶏に決まっている、にわとりならむかでを退治するのは容易だと答えるのでした。
一行が腹ごしらえをし、外に出ると、悟空が火を放ち、ふたたび長い旅路へと踏み出したのでした。
第74回 〜獅駝嶺、到着。
夏がすぎ、初秋の頃となりました。行く手に高い山が見えてきます。
山を行く途中で会った老人が、妖魔が人を食い尽くすから、先に進んではならぬと大きな声で忠告します。
話を聞くと、この山は八百里獅駝嶺(しだれい)といい、まんなかにある獅駝洞には魔王が3匹住んでいるそうなのです。
魔王は3匹とも神通広大、手下も四万八千匹いて、そいつらがもっぱら人を食っているとのこと。
その老人は実は太白金星で、大聖が変化の術を駆使し、智謀をめぐらせれば通ることができようが、油断するとあぶないと忠告しにきたのでした。
偵察にいった悟空は、いぶかしむ巡回の妖怪から口の達者ぶりと頭の回転のはやさをいかんなく発揮して、魔王について聞き出します。
大魔王(一番目の魔王)と二大王(二番目の魔王)はここに住んでいるが、三大王は獅駝国の城にいる。
獅駝国は五百年前に三魔王が人々を食いつくし、妖怪たちの国になっていることや、三魔王が持つ陰陽二気瓶にとじこめられたら溶けてしまうなどの
情報をえると、悟空は巡回の妖怪に化け、獅駝洞にいきます。
門の前の一万もの兵を見て、思案をめぐらせたあげく、兵たちに悟空に皆殺しにされるし、三蔵の肉はどうせまわってこないぞなどと逃亡をそそのかし、
おびえた兵たちはくもの子を散らすように去ってしまいました。
してやったりとよろこんだ悟空、なかに入ってもこの手でいこうと、洞窟へ入っていったのでした。
第75回 〜悟空、救急にこ毛で危機を脱する。
獅駝洞のなかを進んでいくと、三匹の魔王が上座にかまえております。
見れば、大魔王は青毛の獅子、二魔王は黄牙の老象、そして三魔王は大鵬�譖(ほうちょう)だったのでした。
巡回の妖怪に化けた悟空が洞窟のそとの兵たちに言ったのと同じように、悟空が棒を磨いて妖怪をやっつけようとしていると報告すると、
魔王たちはあわてて門を閉じようとします。 逃げにくくなると不安になった悟空がさらに、はえに化けてもぐりこむかもしれないというと、
魔王は、もしはえを見たら孫悟空だと思えというので、びっくりさせようとにこ毛を一本ひきぬき、はえに変えました。
すると妖怪たちは大慌て。思わず悟空は笑ってしまい、正体をあらわしてしまいました。
それを見つけた三魔王、悟空をとらえ、陰陽二気瓶にとじこめてしまいます。
瓶のなかで炎や蛇が出てきたのはへっちゃらでしたが、火龍が三匹からだに巻きつくと、苦しくてたまりません。
神通力で大きくなっても小さくなっても瓶もそれにつれて大きさを変えるため抜け出すことができず、そうこうしているうちにくるぶしが火で焼けただれています。
さすがにあせり、思わず涙がでてきたそのとき、ふと観音菩薩が救急にこ毛を三本くれたことを思い出しました。(第15回参照)
それを抜きとり、金剛の錐、竹ひご、木綿のひもに変えると、竹ひごとひもを弓にして錐をあて、瓶の底に孔をあけることに成功したのです。
悟空は羽虫に化けて、外に出て行きました。
しかし逃げようとせず、酒を飲んでいた大魔王のあたまに貼りついています。
やがて大魔王は瓶をもってこいと命じますが、瓶が軽く、悟空が逃げ出したのを知ります。
悟空は門が閉ざされるまえに外に飛び出し、意気揚々と三蔵のもとに戻ったのでした。
自分の身を案じてくれる師匠の様子にがんばらなくちゃと思った悟空、三蔵に報告したあと、八戒をつれて獅駝洞の入り口にやってきます。
大魔王が出てきて、やがて空中にて壮絶な戦いになりますが、八戒も加勢すると、大魔王はあわてて逃げ出します。
追いついた悟空を大魔王は大口を開けて呑みこもうとしますが、悟空はみずから進んでいって呑みこまれてしまいました。
逃げ出した八戒が三蔵のもとにもどると、悟空は化け物に呑み込まれてしまったと報告します。
しかし三蔵が嘆き悲しんでいるというのに、八戒ときたら慰めるどころか、悟浄と荷物をわけ、故郷に戻り、白馬を売って師匠の棺桶でも買おうなどとほざくのでした。
一方、洞窟にかえった大魔王、悟空を吐き出そうとしますが、悟空は腹のなかでがんとして動きません。
そこで薬酒をのんで悟空を毒殺することにしましたが、毒がきくものかと、魔王が飲んだ酒をなかで悟空が全部飲んでしまったのです。
ほろりともしないことに疑問を覚えた大魔王。 一方悟空はもともと上戸のほうではありません。
べろんべろんに酔っ払ってしまい、腹のなかで大暴れ。 めちゃくちゃに暴れたので、大魔王はあまりの痛さにぶっ倒れてしまいました。
第76回 〜三魔王の計略により、三蔵とらえられる。
大魔王、悟空に命乞いし、助けてくれたら、自分たちが籐の轎(かご)をかつぎ、三蔵の山越えを送るといいます。
そこで出る気になった悟空ですが、三魔王がでてくるところを噛み砕いてしまえというのを聞いて、如意棒を先に伸ばしたところ、
それをガリッと噛んだ大魔王は前歯が粉々になってしまいました。
三魔王が自分と勝負しろと挑発するのを聞いて出ることにしましたが、にこ毛を一本の縄に変えて大魔王の心臓にゆわえつけ、
もう一端を持ち、縄を噛みちぎられないよう、鼻から出て行きました。
出て行くと、三匹の魔王はいっせいに攻めたて、たくさんの妖兵たちが悟空を囲んでいます。
そこで悟空、雲にのり、山のてっぺんにいくと、両手で思いっきり縄を引っ張りました。
すると大魔王、痛さのあまり空中に跳びあがったり、地べたに落っこちたり。
魔王たちは命だけはお助けをと哀願し、三蔵を必ず送るからと約束したので、悟空はからだをゆすって、縄に変化した毛をおさめたのでした。
轎を用意するため洞窟にかえった魔王たちと別れ、悟空が師匠のもとに戻ってみると、泣いている三蔵の横で八戒と悟浄が荷物を分けているではありませんか。
これは自分が死んだと思って解散しようとしているんだなと思った悟空、八戒にげんこつをくらわせて怒鳴りつけます。
悟浄も深く恥じ入っている様子。やがて一同は荷物を馬にのせたりして、魔王たちを待つのでした。
さて、洞窟に戻った魔王たちですが、唐僧など送ってなるものかと二魔王(二番目の魔王)が兵を連れて戦いをしかけます。
今度はおまえの番だと八戒が戦うことになりましたが、あぶなくなったらひっぱってくれといった命綱を悟空が放り投げたものですから、
逃げようとした途端、綱が足にからまり転んでしまい、二魔王の長い鼻に巻き上げられ、洞窟へと連れていかれました。
三蔵にいわれて助けにいった悟空、八戒のへそくりをまきあげつつも救出し、外へ逃げ出します。
そして戦いをいどんできた二魔王をとらえ、三蔵のもとへひっぱっていきました。
三蔵が山越えを送ってくれるのなら殺してはいけないよというのを聞き、二魔王はぺこぺこ頭を下げて約束し、洞窟に帰ることができました。
こうして大魔王と二魔王は送ることに同意したのですが、三魔王は同意しながらも策略をめぐらします。
策略を聞き、それはいいと大喜びしたほかの魔王たち、さっそく三蔵たちをむかえにいきました。
悟空でさえも計略がひそんでいるとは露ほども疑わず、一行は出立します。
妖怪どもはそれはそれはまめまめしく仕え、旅は快適そのもの。やがて西へ四百里あまりのところで大きな城に近づきました。
先に行った悟空は城をみるなり、腰を抜かしてしまいます。 そのまちは妖怪のまち。すさまじい凶気が満ちあふれていたのです。
ぞっとしたところに三魔王が襲いかかってきました。大魔王は八戒と、二魔王は悟浄と戦いを繰り広げます。
その間に妖兵たちは白馬と荷物をかっさらうや、三蔵の轎をかつぎ、城へと運びこんでしまったのでした。
第77回 〜魔王三兄弟、如来らに収服される。
大魔王と戦っていた八戒、不利になってくるや逃げ出そうとしますが、大魔王は首根っこをガブリ。
そのまま城に連れて行ってしまいました。
その後、大魔王は二魔王の加勢に行き、悟浄も捕らえられてしまいます。
そして魔王全員が悟空にむかってきます。さすがに逃げた悟空ですが、三魔王は正体をあらわし、悟空に追いついてしまいました。
悟空の�欖斗雲はひとっ飛びで十万八千里いきますが、三魔王はひとつはばたくだけで九万里も行ってしまうのです。
三魔王が悟空をつかまえ、城内に連れ込むと、さっそく三蔵ら4人まとめて蒸籠で蒸して食べることにしました。
湯が煮立つと、まず八戒を入れ、続いて悟浄、次が自分と見てとった悟空、にこ毛にて身代わりをつくると、本物は空に抜け出しました。
そうとは知らず妖兵たちはにせ悟空をいれると、最後に三蔵をてっぺんにいれ、火をつけました。
雲の上にいる悟空、ため息をつきながら、八戒と悟浄は平気だろうが師匠はとろとろになってしまうと、印をむすび、北海龍王を呼び出します。
北海龍王、敖順は一陣の冷風と化し、鍋の下に入りこみましたので、火気があがらず、三人は無事なのでした。
そうしてから催眠虫を放ち、火焚きの妖兵たちを眠らせると、3人を救出しました。
北海龍王をかえし、白馬を見つけ、荷物も取り戻すと、警備が手薄なところに行って、三蔵は城壁を乗り越えようとします。
しかし魔王三兄弟が三蔵らが逃げ出したことに気づき、追いかけてきたので、悟空以外みな捕まってしまいました。
三蔵は鉄の櫃にいれられましたが、悟空をあきらめさせるために、もう食ってしまったとデマを流します。
翌朝、悟空が小妖に化けていったところ、唐僧はゆうべのうちに生きたまま食われてしまったというウワサでもちきりです。
確認すべく城に出入りする妖怪に化けて、なかに入ったところ、八戒も悟浄も師匠は食われてしまったといいます。
悲しみのどん底につきおとされ、なにもかも如来のせいだと思った悟空、如来に会いにいき、お経を渡してくれれば東土へ送り届けるし、
渡してくれないようなら、『鬆箍呪』をとなえてもらい、故郷で遊び暮らそうと決めました。
如来に会うなり、悟空は大声で泣き出し、今までのことを涙ながらに語ります。
すべてを見通す如来、弟子の阿南と迦葉に五台山の文殊菩薩と蛾眉山の普賢菩薩を呼びに行かせました。
この二菩薩が大魔王と二魔王のあるじなのです。そして仏母孔雀大明王菩薩と同じ母を持つ三魔王の大鵬は自らつかまえに赴きます。
やがて獅駝国に到着すると、如来は悟空に魔王三兄弟をおびきださせ、同行した文殊と普賢が大魔王と二魔王をしかりつけました。
するとおのおの正体をあらわします。大魔王は文殊の乗りものとして使っている青獅子、二魔王は普賢菩薩乗用の白象だったのでした。
しかし三魔王だけは降伏しようとしません。正体をあらわしますが、如来の法力により逃げられなくなってしまいます。
三魔王の正体は大鵬金翅�譖(きんしちょう)だったのです。
なおも逃げようとじたばたしていましたが、ようやくあきらめ帰依することになりました。
歯軋りしてくやしがる三魔王に三蔵の無事を聞いた悟空、如来にお礼を申し上げるや、城内へ入っていきます。
城内の妖怪たちは魔王が退治されたのをみるや逃げ出し、誰もいません。
悟空は八戒と悟浄をたすけ、荷物を馬をみつけると、奥へいき、三蔵を救い出します。
そして宮殿内で米やら探し出し、腹ごしらえをすると、また西へと旅を続けたのでした。
第78回 〜比丘国、到着。
いつしか冬となりました。行く手にまちが見えます。
城門にいる老兵から、ここはもとは比丘(びく・僧侶のこと)国といっていたが、いまは小子(こどものこと)城とあらためられたと聞きます。
まちに入るとにぎやかな様子。なぜかどの家も門口に覆いがかかった鵝鳥の籠がおいてあります。
気になった悟空が蜜蜂に化けて、籠のなかにもぐりこむと、なんと子どもが入っていました。
やがて駅宿につき、そこの役人に籠のことをしつこくたずねたところ、駅丞(宿駅を司る官)は人払いをし、声をひそめて言うには、
三年前、道士ふうの身なりをした老人が美しい娘を連れてきて、国王に献上した。
娘は国王の寵愛をうけ、美后と名のり、王は一日中、美后と飲んでは歓をむさぼるようになったため、気力は萎え、病弱となり、明日をもしれぬ命となった。
娘を献じた老人は国王より国丈(国王の岳夫)と名乗るのを許され、不老長寿の秘法を知っているとのことで、薬草は採ってきたものの、
その薬の効果をひきだすための副薬が、1111人の子供の心臓を煎じるというとんでもないもの。
王はそれを飲めば千年も長生きできると信じてしまい、例の鵝鳥の籠のなかにいれられた子供はそのためなのだとか。
いたく嘆いた三蔵に、悟空は明日通行手形にはんをもらいに行くときに一緒にいき、国丈が化けものかさぐってみようといい、
籠の子供たちは城隍神、土地神らを呼び出して、ことが解決するまで全員安全な場所に隠すことにしました。
夜が明けると、三蔵は国王に会いに行きます。 悟空は羽虫に化け、三蔵の帽子にとまり、くっついていきました。
国王からはんをもらい、途中であらわれた国丈にあいさつすると三蔵は下がりましたが、外に出ようとしたとき悟空が耳元で、あの国丈は妖怪だと教えます。
三蔵はそのまま帰り、悟空はとどまって様子をみることにしました。
やがて子供が消えたと報告があると国王は驚き、怒りますが、国丈は子どもの心臓より三蔵ひとりの心臓のほうが万年の長寿まちがいなしと答えます。
それを聞いた悟空は駅宿に急行。三蔵に説明し、八戒に急いで泥をこねてくるよう言いますが、
水をとりに外に出るのがこわい八戒はおしっこで泥をこね、それを悟空に渡しました。
しかたなく受け取った悟空はそれで自分の顔の型をとり、三蔵に貼りつけ、仙気をふきかけ、変われっ!とさけぶと、三蔵は悟空の姿に変じます。
そして悟空は三蔵の姿に変化すると、やってきた兵士たちに連れられて宮殿へいったのでした。
第79回 〜悟空、1111人の子どもを救う。
国王のまえに連れて行かれた、悟空が化けたニセ三蔵。
国王が副薬として三蔵の心臓がほしいというと、心臓ならいくつも持っている、どんな色のをご所望かと問います。
国丈が黒い心肝(心臓)と答えると、悟空は腹をかっさばきます。
するとたくさんの心臓が流れ出てくるのですが、黒心というのだけないのです。
驚いた国王がもうよいというと、悟空はもとの姿に戻り、相手が大聖だと知った国丈、あわてて雲にのって逃げてしまいました。
悟空が追いかけると、国丈は蟠龍杖(ばんりゅうじょう)で迎え撃ちます。
しかしかなわないとみるや、美后をつれ、ともに冷たい光となって、いずこともなく消え去ってしまいました。
一方、本物の三蔵のもとへ国王の使いがやってきて宮殿へ招きます。
おしっこくさい仮面がどうにも気持ちわるかったのですが、悟空がそれをはがし、もとの姿に戻って気分もすっきり。
妖怪退治を申し出た悟空、南に70里ほどいったところにある柳枝坡(りゅうしは)清華荘が住まいだと聞き、八戒とともに出かけていきました。
土地神を呼び出し、清華荘ではなく清華洞の場所を聞いた悟空、のりこんでいき戦いが始まりました。
八戒も加勢し、こりゃ負けだと、国丈はひとすじの冷光と化して逃げだします。
悟空らが追っていくと、めでたい光がさしこんできました。
南極老人星です。老人星は冷光をおさえつけると、妖怪は自分の乗りものの白鹿で、蟠龍杖も盗まれたものだと明かします。
国丈のことはこれで解決ですが、まだ娘がいます。清華洞に戻ると、隠れていた娘を見つけ、八戒がまぐわで頭をひと突き。
その死体は白狐でした。洞府を焼き払い、寿星と一緒に白鹿を連れ、白狐の死骸を持って宮殿に戻ると、国王はひたすら感謝。
宴会がひらかれ、そののち寿星は白鹿にまたがり、去っていきました。
三蔵一行らが旅を続けようと城門を出ると、風の音がし、空から1111個の鵝鳥籠が降ってきました。
城隍神、土地神らが子供を返しにきたのです。子供と再会した人々は大喜び。
三蔵らをかつぎあげ引き返すと、各家で宴会をひらいて招待します。
それで1ケ月近く足止めされ、ようやく旅に出ることができたのでした。
第80回 〜三蔵、女怪をたすける。
冬は去り、春も終わりの頃となりました。行く手には高く、険しい山がそびえています。
山道を越えた一行は、黒松の深い林のなかで休憩することにしました。
お斎(とき)をもらいに中空にのぼった悟空がふと振りかえると、松林は祥雲がたなびき、瑞気がたちこめています。
三蔵は金蝉長老の生まれ変わりで十世にわたって修行しているので、瑞祥の気にすっぽり包まれているのです。
しかし松林の南のほうに突然ひとすじの黒い悪気がもくもくと立ち上るのが見えました。
一方、林のなかにいる三蔵の耳に、助けを呼ぶ声が聞こえました。
様子を見に行くと、大木にひとりの女がしばりつけられています。
いつものごとく妖怪なのですが、三蔵の肉眼凡胎では見分けることが出来ません。
妖怪のまことしやかな作り話にもらい泣きをしてしまった三蔵、八戒に妖怪の縄をほどかせたのでした。
さて悟空、中空にいたまま見ていますと、あの黒い悪気がますます濃くなって、祥光をすっぽりおおいかくしてしまいました。
托鉢をやめ、様子を見にもどると、八戒が妖怪の縄をほどこうとしています。
それを投げ倒した悟空、その女は妖怪だと告げ、今回は三蔵もそれなら女に構わずに出発しようということになりました。
三蔵たちが去ったあと、女は歯軋りして悔しがっています。
しかしあきらめず、「生きた人間も助けてくれない、そんなお心でみ仏を拝し、どんなお経をいただくつもりですか」 との言葉を風にのせ、三蔵だけに届けたのでした。
馬上の三蔵、その言葉を聞くなり、馬をとめ、悟空にあの女を助けに行くよう、大声で言います。
三蔵の慈悲心にはつける薬がないと悟空は苦笑い。
今までだって、妖怪が三蔵をつかまえ洞窟に連れこむ→悟空が助け出す、のパターンで、そのたびに子分の妖怪たちが数え切れぬほど打ち殺されている。
それでも今日の妖怪一匹を助けに行けというのですね、といいますが、三蔵の意思は変わりません。
悟空は助けたいならご勝手に、と忠告するのをやめ、三蔵は八戒を連れていき、女を助けてもどってきました。
そして皆で山をおり、日が暮れかかってきたころ、「鎮海禅林寺」と山門に書かれている寺院にたどりつきました。
三蔵が宿をお願いしになかに入っている間、ほかの者は外で待っていたのですが、悟空だけは金箍棒を持ったまま、女をしっかり見張っています。
やがてラマ僧が悟空たちをなかへ入れ、80人ほどのラマの小坊主があれこれ接待してくれるのでした。
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