CHAPTERへ     カイルとレイル 〜精霊物語・外伝〜

CHAPTER 2 星を告げる少女


夜、カイルの部屋がノックされ、レイルがやってきた。

部屋の明かりが、少女のやや緊張ぎみな固い表情を照らし出す。

「どうしたの、そんな顔して。頼みって何?」

「すごく気になるの。カイル、あなたのことを占わせて」

レイルの目は真剣そのものだった。

「占う? 君って占い師だったの?」

初めて知った。
てっきり彼女は吟遊詩人だとばっかり思っていた。
実際、レイルは行く先々の街で歌ったり曲を奏でたりして お金を稼いでいたが、
占いをしてるところなんて一度も見たことなかったから。

「占い師ではないんだけど。滅多にやらないし」

「なんで?」

疑問が素直に顔に出る。

「楽しい未来だけじゃないもの。
運命は分からないからこそ希望が持てると思わない?」

「うーん・・そうかもしれないね。
で、レイルは何で占うの? カード? 水晶球?」

「私の場合は水晶柱を使うの。
それを通して星たちが告げてくれるわ。 その人の運命を。
星々は人々の運命を語り、月は世界の行く末を予見するのよ」

「へえ・・・」

それしか答えようがなかった。

普通の子じゃないとうすうすは感じていたけど。
そう言われてみれば確かに思い当たるフシもある。
うまく口では言えないけど、どこか謎めいた、
預言者や、魔術師特有の雰囲気を彼女は持っていた。

「何か起こりそうな予感がするの。お願い。
ごく近い未来の助言を聞くだけだから」

「・・・別にかまわないけど」

「ほんと? ありがとう。 じゃ、ちょっと待ってて」

いそいそとレイルはベルトに取り付けた小さな袋に手を入れた。
やがて取り出したのはやや大きめの水晶柱。

先の方は尖り、根元は水平になっている。
到底袋に入りきれる大きさではないのだが、
次元袋なのだろう。

生き物以外ならなんで も収めてしまうこの袋は、
今や旅人の必需品となっていた。

カイルはこれから彼女が見せてくれるであろうことに
期待とわずかな緊張を覚 えつつ、
一挙一動を見守っていた。

レイルは水晶柱をもち、窓際へ歩いていく。

窓を開け放つと身を乗り出して、夜空を眺めた。

カイルもつられて外に目をやる。
空は無数の星たちで埋め尽くされていた。
まるで宝石箱をひっくり返したみたいだ。
ずっと見てると吸いこまれそうな錯覚さえ覚える。

レイルは満足げな表情を浮かべると、水晶柱を天へ高く掲げた。

するとどこからか光が一筋、
水晶柱のてっぺんに流れ落ち、
中へと吸い込まれた。

柱の中にぽつんと小さな光が生まれる。
幻でも見てるかのようだった。

光は次々と水晶柱の頂上に降り注いでは、
柱の中に落ちて いく。
やがて水晶柱の中が星の光で満たされると、
レイルは手をおろし、部屋の中へ戻った。

「さあ、はじめるわよ。カイル、こっちに来て」

「あ、ああ・・・」

人知を超えた出来事に戸惑いながらも、
言われるままテーブルの前の椅子に座る。


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